1991年(平成3年)春OA、情報バラエティ「素敵にドキュメント」(MC逸見政孝)パチンコ特集
(レビュー)
(オープニング)
逸見さん、タイトルコール
「さあ、素敵にドキュメントの時間ですよ~!」
ナレーション(槇大輔)
「4月2日。福岡県・博多。新装開店のパチンコ店の前では、今か今かとオープンを待ちわびる人、人、人。(開店の軍艦マーチが鳴る)ドアが開くや否や、皆さん夢と希望を胸に、パチンコ台に突進です。そして、頭の中の思いは皆同じ、一獲千金、打ち止め大当り!今や、パチンコ業界は15兆円のマンモス産業。ここ数年の人気は、うなぎ昇りです。その主役は、何といっても年々急増する女性ファン。女性あってのパチンコブーム、女性なくしてパチンコ人気はあらず!」
(東京・上野のパチンコ店「東京会館」。地下フロア、京楽「ダービー2」のシマ)
逸見さん、「ダービー2」を打っているOL風の女性客にインタビュー。
逸見「よく来るんですか?」
女性A「えっ?はい。」
逸見「週に何回位?」
女性A「週に一回くらい…」
逸「あ、そう。どこが面白いの?」
女性A「えっ、分かんない。なんとなく…」
逸「(右隣りの若い女性に)よく来るんですか?」
女性B「はい。よく来ます。」
逸「パチンコの面白さって、どこかな?」
女性B「いや、いつ出るか分からないから。うん。」
逸見「ま、それにしてもね、両方ともよく出てますけども。私もこんなに沢山、出せるようになれるんですかね?」
ナレ「最近は、パチンコの楽しみ方も、人によって色々なようですね。」
(別の店のカット。50過ぎと思しき主婦が、ニコニコ顔で打っている。)
「今日のおかずとか、いろいろ考えながらやってます。だから、もう五時半頃になれば、もう帰るんです、ええ。」
ナレ「主婦は家事の合間に、OLはアフター5に、女子大生は彼氏と一緒に。パチンコ人気は過熱する一方です。そして、このパチンコブームに拍車をかけるように、去年10月から風営法が改正されました。さて、どんな内容になったのでしょう?」
警察庁・保安部保安課、殿川一郎さん
「いわゆるフィーバーというのがありますね。まぁ、これが今、主流だと思いますけども。で、このフィーバー、短時間にワッと出るですね、玉の数というのを、従来はですね、1300発っていう風に決めているわけですね。で、これをですね、今回改正して、2400発まで出ても良いと、そこまで上限を上げた、という事なんですね。」
ナレ「獲得できる玉数の上限が、1300個から2400個に引き上げられた。これは、パチンコファンにとっては嬉しい限りです。そして、風営法改正に伴い、パチンコ台もパチンコファンのニーズに応えるよう、新しい機種がどんどん開発されています。パチンコ台も、アイディアとデザインが勝負。どうお客さんに興味を持たせるかが、ポイントです。どれもこれも、趣向を凝らした工夫がなされています。これでバンバン入れば、いう事なし!」
ナレ「今、パチンコ業界は、第5次パチンコブームを迎えたといわれています。全国にあるパチンコ店、およそ1万6千軒。パチンコファン、その数何と3000万。国民の4人に1人、様々な人たちが、パチンコの魅力に引き込まれていっています。」
密教行者・阿部弘心さん「悟りです。パチンコも、全て悟りです。」
ナレ「神の教えから、パチンコの極意を学んだ男がいた。」
(スーツ姿でヘリコプターに乗り込む、やり手風のパチンコ店社長)
ナレ「自分の持つ、遥かなる夢を実現するため、パチンコに人生を賭ける男がいた。」
ゴト師「勝つ気になれば、300(万)でも400(万)でも勝てるんじゃない?」
ナレ「300万でも400万でも…パチンコ裏稼業。闇に生きる人間もいる。」
(三共ショールーム。デジパチ新台「フィーバースパークGP」が映る)
逸見「さあ、今日は、全国のパチンコファンの皆さんにはもちろん、そうでない人にも、パチンコの魅力というものを、存分にご覧頂こうと思います。もちろん、必勝法もあります。今日はお得ですよ~!」
ナレ「パチンコ列島、日本。魅力満載、91年出ます!出します!パチンコ最新情報!」
ナレ「お花見シーズン到来、とくれば、東京は上野。ここ上野には、パチンコ台を生産するパチンコメーカーのショールームが、軒を連ねています。店のショーウィンドウ越しに見えるのが、今、最先端のパチンコ台。店の中に一歩足を踏み入れると、そこはパチンコ台のオンパレード、様々な機種が揃っています。パチンコ屋さんは、そこで台を選ぶとともに、 今売れ筋のパチンコ台、人気商品の情報を得る。いわば、ここはパチンコ屋さんのメッカなのです。」
(三共・新要件ハネモノ「大明神GP」が映る)
逸見「いや、ほんとに、一見、えー、パチンコ店に入ったと見まがうような雰囲気なんですが。これ、新しい機種っていうのは、これ、絵がまず違いますわね。顔っていうんですかね。それと、後はどんなところですか?」
三共・常務取締役(当時)鵜川詔八さん
「そうですね。今度の規格改正では、また新たにですね、別の、この電動役物を付けてもいいという事で、まず、最初、この電動役物で、まぁ、小当たり的な・中当たり的なゲームが出来て、最終的な当りになりますと、この大当りで大入賞口が開くと。まあ、そういうダブルのゲームが楽しめるという機械に、変わっている訳です。」
ナレ「必見!知って得するパチンコテクニック!」
ナレ「東京・目黒に、パチンコファンにとって隠れた人気の場所がある。蛸(たこ)薬師(目黒・成就院のテロップ)。幸福、お金、そしてパチンコ玉を吸い寄せるというご利益を授かろうと、連日パチンコファンが願を掛けにやってきます。そして、そこに祈る男が一人。」
(「銀玉親方」こと山崎一夫氏。黒縁メガネ、黒の作務衣姿で願掛け中。)
親方「今のパチンコは、パチプロに勝ちにくい時代になっています。テクニックより、情報です。そういう意味では、今パチンコはアマチュアの時代です。パチンコはチョロい!」
(銀玉親方、三共の連チャン機「フィーバーレクサスⅥ」(VIDではない)を打っている。)
ナレ「と、豪語するこの男。パチンコ作家として、パチンコ攻略法を惜しげもなく公開する、山崎一夫さん。全国の読者から、尊敬と親しみを込めて、彼は『銀玉親方』と呼ばれている。」
ナレ「銀玉親方の必勝講座…ハネモノの釘を読む」
ナレ「パチンコ店にズラーッと並んでいるパチンコ台。その中から、あなたが一台を選ぶのは至難の業です。しかも、一台当たりの釘の本数はおよそ250本。素人のあなたが、全部の釘を読むことは難しいそうだ。そこで…」
(ピーアーク南行徳店。三共「道路工事I」のシマ)
親方「こうしたハネモノの場合、釘を見る個所は3か所でいいでしょう。ここと(谷釘)、ここと(オトシ=1チャッカー)、ここです(ヘソ=2チャッカー)。」
ナレ「まず、この釘(風車上の三角釘)に注目して下さい。玉を中央に寄せやすいように、左側の釘が下がっている方が良いのです。」
ナレ「次に見るのがここ(オトシ)です。この二本の命釘が、なるべく開いている台を選んで下さい。」
ナレ「そして3か所目はここ(ヘソ)。ここのちょっとした変化は、素人には分かりません。このくらい下がっていたり、打ってみて玉が引っ掛からなければ合格です。」
(「ダイナム高田馬場」。平和の新要件ハネモノ「ボイジャーI」を打つ親方。)
ナレ「こんな台を見つけたら、もうとにかく座って打つべし!おいしいパチンコ情報、まだまだ続きます。」
(番組提供テロップ。背景映像には、都内パチンコ店の派手なネオンが、次々と映る。店名は出ていないが、外観から渋谷・井の頭ガード脇「ウチダ」、新宿・歌舞伎町「日拓3号店」、上野「スプラッシュニューセブン」、上野「ニューセブン」のネオンと判る。)
(提供…TOYOTA、DUSKIN、東リ、セコム、日本国際通信、アサヒビール、P&G、島津製作所、アートネイチャー)
(CM)
(CM明け)
ナレ「中央の役物の動きが楽しいハネモノ。しかし、玉が入らない事には話になりません。一体、どこを目がけて打てばいいんでしょうか?」
ナレ「銀玉親方の必勝講座…ハネモノのストローク」
(ピーアーク南行徳。西陣ハネモノ「ニューモンロー」のシマ)
親方「ここの隙間を、ブッコミといいます。ハネモノの場合、ブッコミやや弱めに玉を打って、ブッコミ周辺に玉を集めるようにして下さい。下のチャッカーに玉が入るのは、しょせん運です。ブッコミ弱めに玉を打って、なるべく役物の近くに玉を流すようにして下さい。そうすれば、ハネが開いた時に玉を拾いやすくなります。」
ナレ「こういうハネモノの場合、1000円分打って15、6回ハネが開くようであれば大丈夫。後は粘りと根性です。そのうち、こんな良いことも待っています(大当りでヤクモノのモンローが服を脱ぐ)。ね?」
逸見「ご覧頂きましたように、パチンコ台の機種が新しくなるとともに、パチンコ店も様変わりしてきたようです。特に今は、人々に『パチンコは健全な娯楽である、パチンコをしたくなる』という気持ちを与えることが、重要視される時代になって来ました。」
ナレ「こちら、信州は長野県上田市。この建物の駐車場を覗いてみると、長野県全域から人々が集まってきている事が判ります。」
ナレ「そして、田園風景にマッチした武家屋敷風の造り、実はパチンコ屋さん(「百万ドル・よろこびの里・神科店」のテロップ)。広く、ゆったりとしたスペースに、明るい照明。健全なイメージで女性客も多いようです。」
ナレ「そして、何よりこのパチンコ店には、店内に茶室があるという事。もちろん、茶室があるパチンコ店は日本ではここだけ。」
ナレ「建物は全て木造り。木の温かみが感じられます。お客にゆとりを感じさせる雰囲気作り。これだけの気配りを受ければ、パチンコをやる方だって気持ちが良い。」
副店長・岩田敬義さん
「こういうような雰囲気作りをすることによって、お年寄りの方も、女性の方も、あのー、気軽に入って来られる。まぁ、レストランに入るような感じで、入って来られる。」
オープニングにも登場したニコニコ顔の主婦
「そう、だからあの、来てもね、気持ちも休まるし。ええ、いい店ですよ。もっと出してくれると、もっといいんですけどね(笑)」(背後では、西陣の一発台「ジャスティ」の大当り中の効果音。)
ナレ「本音ですよね。パチンコ店は、地方を中心に大きく変わりつつあります。」
ナレ「一方こちら。江戸時代、我が国唯一の貿易港として栄えた町、長崎。現在は造船業、そして、数々の名所・旧跡を持つ観光地としても有名です。市内に22店舗のチェーン店を持つ、このパチンコ店(「まるみつIN」のテロップ)。中でもこの店、日本唯一、全館禁煙を実施しています。このビルでは、喫煙家はシャットアウト。従来のパチンコ店にあった、汚い、煙たいといったイメージは、ここには全くありません。お客に対しての快適性と健康を重視した、クリーンなパチンコ店。女性客も安心してパチンコを楽しめます。」
ひぐちグループ・事業推進本部次長、野田博康さん
「女性層がですね、大体この10年ぐらいで、わが社においても、15%から、だいたい40%近くに上昇している訳ですよね。で、それを考えると、まぁ女性は、どうしても喫煙する人は少ないですよね。だから、これは非常に、当たるんじゃないかということで、思い切って店づくりに踏み切った訳ですね。」
ナレ「実はこの方、地元・長崎女子短期大学で経済を教えている、現役の講師。自分の持っているノウハウを、パチンコ経営に持ち込んだ途端の大成功。これからも、全館禁煙のパチンコ店、日本全国に増えそうな気がします。」
ナレ「続いて、同じ九州は福岡県・博多。今、博多では、7月に迫った祭りの準備で街中が盛り上がっています。」
ナレ「そして今、パチンコ店でキャンペーンを打つほどの盛り上がりを見せているのが、これ。J-NETカード。このカード一枚あれば、獲得した玉はもちろん、今まで扱いに困っていた余り玉まで、どんどん貯めていくことができます。つまり、貯玉システム。カードは、玉の預金通帳という訳です。しかも、カード一枚に最高99999個貯玉できる。一個4円とすると、その額およそ40万円。」
(J-NETカタログには、但馬牛サーロイン、松葉蟹など高級商品が並ぶ)
ナレ「そして、このカードシステムは、カタログによって商品を選択でき、希望する場所に宅配してくれます。それに比べると、これまでのパチンコ店の景品は、場所の制約から限られた種類の商品しか選ぶことができませんでした。」
ナレ「パチンコをやって、全国各地の名産品が、産地から直接家庭に届く。しかも、高級な品物も、このカードがあれば手に入れる事も出来ます。まさに、お中元、お歳暮にはうってつけのシステムです。」
ナレ「風営法の改正で、景品の上限が3000円から一万円になり、パチンコ店のイメージも大きく変わろうとしています。」
ジャパンネットワークシステム株式会社、大嶋宣幸さん
「まぁ、一万円っていう景品の値段というのもですね、これから3万円なり5万円なり、或いは10万円なりと、或いは車に交換できると、こういうような時代が来たらいいな、とは思っているんですけども。」
(上野・東京会館。大一の新要件デジパチ「カクテル」のシマが映る。ドル箱を積む客。)
ナレ「今や、パチンコは楽しんで貯める時代。これから日本に流行しそうな気配が感じられます。
ナレ「東京ディズニーランドにほど近い、千葉県・南行徳。ここにまた、全く新しいタイプのパチンコ店が、今まさに産声を上げようとしています(「ピーアーク南行徳」のテロップ)。」
逸見「お邪魔いたします。」
ピーアーク株式会社・代表取締役社長、庄司正英さん
「いらっしゃいませ。」
逸見「いろいろ、ちょっと聞かせて下さい。」
庄司「はい、いらっしゃいませ。」
逸見「(入店後、目の前のショーケースの中を見て)なんですか、これは?」
庄司「これは、当社のマスコットでもあり、景品なんですね。」
逸見「イグアナじゃないですか、これ?」
庄司「はい。」
逸見「これ、本物ですか?」
庄司「ええ、本物で生きております。」
逸見「ほんとだ、動いていますね。はぁ~、いきなりこういうものを…。やっぱり、テーマに沿って?」
庄司「はい、あの、私どものこの店のテーマは、冒険という事を取り上げました。えー、少年時代のときめきをですね、ちょっとだけ再現してみようと。」
ナレ「スタッフ自ら足で集めた景品。そして、店のいたるところに設置された、冒険心溢れるディスプレイ。それら全てに、このパチンコ店作りに携わった人々の持つ、こだわりの気持ちが込められています。」
ピーアーク企画部長・木村久雄さん
「よそのお店を競合店として見るんじゃなくてね。みんなの気持ちですよ、持ち方として、じゃあ、この、ディズニーランド。それに向かっていくような心構えでいよう、という事なんですよ。」
ナレ「店自体のイメージは、航海に旅立つ船。」
庄司「(逸見さんと階段を昇りながら)えー、ときめきを感じながらご遊戯して頂くと…」
研修中の店員達、一列に並ぶ「ピーアークへ、ようこそ!」
逸見「あ、どうも。今、あの、研修中な訳ですね。」
庄司「はい、今、トレーニング中でございます。」
逸見「そうですか。このコスチュームというか、あのユニフォームも、やっぱり冒険には関係ある…」
庄司「はい、あのー、冒険の探検隊という雰囲気でございましてね。」
逸見「あー、そうですか。」
ナレ「また、このパチンコ店では、レジャー産業の基本に戻り、お客様に対しては礼儀正しく、明るく元気の良い応対ができるよう、スタッフの教育には力を注いでいます。」
(西陣・最後の旧要件デジパチ「ルーキーNXP-2」のシマが映る)
接客訓練中の若い店員A「(引っかかった玉を取り除き、ガラスを閉め)ごゆっくりどうぞ!(深々とお辞儀)」(他の店員達から拍手で迎えられて、笑顔で戻る店員。しかし、別の店員は…)
訓練中の若い店員B「おまたせしました!(教育係が「ラッキーナンバー…」とささやく)、あ、ラッキーナンバー、おめでとうございます。(札を刺そうとするが、手に札を持っていないことに気付き、苦笑い。他の店員達も、Bのぎこちなさに、思わず笑ってしまう。)」
(たまらず、教育係がアドバイス)
「ラッキーナンバーと、ラッキーナンバー二回目と、あとアンラッキーナンバー。これがまだ、ちょっと頭の中でこんがらがってる。だから、動作がちょっとぎこちない。」
(店員B、照れ笑い。背後では、「ルーキーNXP-2」の派手なデジタル回転音(後に「花鳥風月」でも採用された音)が聞こえる)
ナレ「オープンの日には、完璧になるはずです。」
店員一同「ピーアークへ、ようこそ!」
(店内に「ボーッ」という船の汽笛が鳴り響く)」
逸見「この音がですね、えー、時報代わりの汽笛です。そして、えー、この館内では非常に良い香り、柑橘類の香りが流れておりますが、朝・昼・夜と3種類の香りが流れるようになっているということなんですね。ま、このように、新しいお客さんを開拓するための工夫がですね、本当に細かい所まで行き届いています。今まで通りやっていては、いけないんですね。これからはですね、ただパチンコが出来る、というだけではいけない時代になるのだと思います。」
(3種類の芳香剤(アロミスト)…朝→ウッディ、昼→シトラス、夜→フローラル)
ナレ「いつの時代にも、悪い奴は必ずいるもの。パチンコの闇の世界に生きる男たち。通称・ゴト師。次のコーナーでは、このゴト師の実態に鋭く迫ります。」
(CM)
(CM明け。高田馬場「ダイナム」の店内映像。シマは満席、大盛況のようだ。)
ナレ「現在、日本全国のパチンコファン、およそ3000万人。そのほとんどは、正当なルールの中でパチンコを打っている。が、しかし、その中に不正を働き、金を儲けている奴がいるのだ。通称、ゴト師。彼等こそ、パチンコ店にとっての最大の敵である。」
ナレ「このビデオは、関西のパチンコ店で、偶然録画されたものである。これは、合鍵を使ったゴト師の手口である(一発台のシマに陣取る、怪しい3人組の男を撮影)。この時、既に防犯カメラの目は、彼等3人を捉えている。」
ナレ「3人組の真ん中の男を注意して見てみよう。奥の男が鍵を取り出した。真ん中の男が頭を下げ、防犯カメラをブロックしているうちに、奥の男がガラスを開けているのが判る。手前の男は全く動いていない。」
ナレ「鍵が開いたのを確認している。左右の男が同時に立ち上がり、盾を作っている内に、真ん中の男がガラスを開け、玉を入れることに成功している。」
ナレ「防犯設備が進んだ現在でも、ゴト師の手口は大胆かつ巧妙である。そして、取材班はついに一人のゴト師に接触。インタビューを申し込んだ。」
取材班「月、どのくらい稼ぐわけですか?」
スーツ姿の大柄なゴト師(暗闇、顔は映らない。声も変えてある。関西弁)
「まぁ、うちの方で(月)150(万)くらいじゃないかな。勝つ気になれば、300でも400でも勝てるんじゃない?」
取材班「色々な道具を使われる、という事なんですが?」
ゴト師「今は電波、それと磁石、そしてセルやね。今、自分らが使うセルは、まあ今、あの、セルを使うているって判ってても、まず分からないくらい精巧でしょ。同じものを作ってても、やっぱり人によって違うんでね。ただ、その中には、やっぱり品物の違いがね、出るっちゅうかね。違いでやっぱり、見つかる率も高いしね。磁石は、あのー、まぁ僕らの使うのは、せやな、だいたい直径で35ミリまでのものやね。10円玉か、50円、あぁ、500円玉と思ってもろたらええかな。大きさはね。厚みはいろいろあるけどね。まず見つからない。店員さんが、この人らは磁石やってると、そう思って見てても、横に立ってても分からない。」
取材班「体のどこかに、やっぱり隠し持っているというのが、常識なんでしょうか?」
ゴト師「もちろん、服の中しかないから、服の中でしょうね。」
ナレ「彼の言ったゴト師の手口とは、いったいどのようなものなのだろうか。そこで、取材班は、新宿にある、パチンコのありとあらゆるものを研究している会社に出向き、ゴト師とのインタビュー・VTRを元に、その手口を再現してもらう事にした。」
(新大久保・百人町のとあるビル。攻略会社「(株)キャッツタイムス社」の看板)
ナレ「ゴト師が主にが使う、三つの道具である。無線機、磁石、パチンコ台の形状に合わせた手作りの透明なセルロイド板。」
キャッツタイム社攻略スタッフ・土田賢さん
「ゴト師と言われている、彼らのセルの手口なんですけども、えー、まず体のいろんな部分に隠し持つと。それから、徐々に入れていくって形ですね。では一回やってみます。(長細いセルを袖の下に隠し持ち、下皿から徐々に差し込む)」
ナレ「手の裏に隠し持ったセルロイド板を、パチンコ台の中に徐々に入れていく。すると、何枚かチューリップが開く。(台はスーパーコンビ。緑色の大当りチューリップが開き、「静かな湖畔」のメロディが鳴り響く)では、もう一度見てみよう。パチンコ台の裏から見てみると、その仕組みがよく分かる。)」
土田「えー、ここから(台の裏)セルが出て来ます。で、こうずーっと持ってきて、これが大当りのチューリップで、ここを…(セルの先端で、チューリップ裏にある開閉スイッチを突っつく)」
ナレ「パチンコ台の中に入ったセルロイド板は、板に沿って上に上がる。そして、チューリップを台の中から作動させるのである。」
土田「これが、ゴト師が使っている磁石です。(800個入りの玉箱に磁石を突っ込むと、大量の玉がブドウ状にくっ付く。)」
ナレ「見ての通り、非常に強い磁力である。この磁石を、狙いたい場所に持って行けば、玉は集まる。入るのも当然である。(土田さん、マルホンの一発台「キャラバン」で、磁石を命釘付近に近づけて玉を集め、簡単に大当りさせる。)」
土田「秋葉原とか電気街とか、まぁ、どこでも市販されている、普通の無線機ですね。」
ナレ「ゴト師は、このような無線機を使い、まずゴト師が知る、ある決められた周波数にセットする。狙いは、デジタルパチンコ台、左右のチャッカー。普通、ここに玉が入ると、デジタルは回転する。ゴト師は、隠し持った無線機から、電波を発信する。すると、玉も入らないのにチャッカーの内部センサーが作動するのである。デジタルは勝手に回り続ける。したがって、全くお金を使わずに大当りを出せるのである。全て、驚きの手口である(使用台は大一の「ニュービッグセブンP4」)。」
ナレ「ゴト師が一度入ったパチンコ店は、必ず客足が遠のく。パチンコ店は、そうなる前に手を打たなくてはいけない。」
ナレ「自動車の町、愛知県・豊田市。ここには、市内に40店舗のチェーン店を持つパチンコ店がある(「Apan777」のテロップ。各チェーン店の様子が映る)。経営は薄利多売。少ない利益で、お客さんに出来るだけ多く還元する方針を取っている。『このパチンコチェーンに行けば、必ず出る』が、ここのお客の合言葉(デジパチのスタート札が「しあわせ」と書いてあって面白い)。」
ナレ「そういったお客の言葉に応える為にも、防犯設備には完璧を期している。中央管理システムを取り、店内の様子は全てモニターに映し出され、手に取るようにわかる仕組みになっている。ホールにいるスタッフも、不穏な動きは見逃さない。最新技術の導入は、防犯とともに、健全なパチンコ店の基本である。」
ナレ「防犯カメラは、管理室内でその操作は思いのまま。もし、何かあった時は、即座に対応できる。しかも、証拠となる写真も撮れてしまう。また、コンピューターでその時のパチンコ台の稼働率や台の状況、変化もチェックできる。もちろん、異常電波や磁石にも素早く反応する(管理室から店員のインカムに「異常発生!えー、ドア開放、確認お願いします。」と伝わる)。」
ナレ「お客に安心して楽しんでもらう店づくりには、ゴト師をはじめとする不正行為は、追放しなくてはいけない。そんな愛されるパチンコ店を理想としているのが、この人、都筑順雄さん42歳。このパチンコチェーン(Apan777)の総帥である。自社のヘリコプターに乗り、日々、名古屋周辺の全店舗を視察。従来のパチンコ店のオーナーとは、全く違うタイプである。
ナレ「彼の経営方針は、今までの汚い、うるさいというパチンコ店のイメージを変える為に、優秀なスタッフを育て、さらにそのスタッフに暖簾分けをして、店の数を増やすことにある。都筑社長の夢は、パチンコファンのみならず、すべての人々に楽しんでもらえるアミューズメント・プレイランドの確立にある。」
株式会社善都・代表取締役、都筑順雄さん
「私たちは、あのー、お客さん、そしてうちの社員に還元をして、そしてまた、私たちが愛されるお店、愛される企業になる事を、私の一つのスローガンにして、やっております。」
ナレ「健全で、お客に愛されるパチンコ店を目指して、日本全国のパチンコ店は今日も頑張っている。ゴト師なんかに負けるな!」
ナレ「銀玉親方の必勝講座…ストップボタンの技。」
ナレ「粘りと根性で勝ち取った、ハネモノの大当り。ところが、せっかくハネが開いているのに玉が入らない。そんな時に有効なのがこの方法。」
(三共ハネモノ「マジックカーペットI」が映る。大当り中、ハネが空振りを続ける。)
親方「パチンコ台には、ストップボタンというものが付いています。ハンドルの近くにあるこれがそうです。」(三共、西陣、平和、三洋など、色々なタイプのストップボタンが映る。)
(ピーアーク南行徳、三共「道路工事I」のシマに陣取る親方)
ナレ「台によってボタンの位置は違いますが、ストップボタンは必ず付いています。」
親方「これで、玉を打つタイミングをコントロールして、うまくヤクモノに玉を入れることができます。」
ナレ「このように、ハネが閉じている間はボタンを押してストップ、ハネが再び開くのを見計らって玉を打ちます。この方法を使うと、確実に約300円分の玉の節約になりますよ。オイシイ情報は、まだまだ続きます。」
(CM)
(CM明け)
ナレ「パチンコ店での一番人気は、やはりデジタル台。数字が見事に揃うと、気持ちがいいですよね。スタートは、パチンコファン憧れのしるし。」
(上野・東京会館、「ダービー」(京楽)や「ブラボーセンチュリー」(平和)のシマ。東京会館の黄色いスタート札が映る。)
ナレ「銀玉親方の必勝講座…デジタル台の釘を読む。」
親方「デジタル物は、ここ(ヘソ)とここ(寄り)の、2か所の釘を見て下さい。」
(ピーアーク南行徳、「ロータリーセブン」(マルホン)のシマ)
ナレ「このテの台を選ぶときは、この丸印のところの釘に注目して下さい。」
ナレ「こちらの釘(ヘソ)は、デジタルを回すための重要な釘ですので、なるべく左右に開いている台を選んで下さい。左右に開いていれば、玉が入ってデジタルが良く回ります。」
ナレ「次に注目する所は、デジタルの横にある釘です。」
親方「こちらのデジタルの横にある釘は、この一列の釘(ヨロイ釘)が、下の方に下がっている台の方がいいです。」
ナレ「釘はハネモノと同じで、左側の釘が下がっている方がいいんです。玉が中央に集まり易くなります。では、どこを狙って打ったら良いのでしょう?」
親方「デジタル物の場合は、ブッコミよりやや強めに打って、右側にも3割ぐらいの玉が流れるようにして下さい。」
ナレ「玉を右側にも3割ほど流して、左右から始動チャッカーの入賞を狙います。良いデジタル物の目安、1000円で35回から40回回るなら合格です。」
(東京・上野、ガード沿い。パチンコ店密集地帯の夜景)
ナレ「夜の上野。パチンコ店のネオンサインが目立ちます。ここは、どこよりも早くパチンコ台の新機種が入る事でも有名です。」
(ニューセブン、ニューセンチュリー、チャンピオンのネオンが映る)
逸見「いや、本当に沢山のパチンコ店が並んでますね。えー、東の上野、西の名古屋という風に言われておりますが、現在、この上野界隈のパチンコ店の数は、40軒なんですが、今年中には60軒になるという事なんですねぇ。」
ナレ「という事で、逸見さんに新機種に挑戦して頂きましょう。」
(逸見さん、目の前の「東京会館」上野店に入店。新機種という割に、着席したのは旧要件機・京楽「ダービー2」。)
ナレ「どうも、あまり期待しない方がいいかもしれませんね。…ありゃ、ところがどっこい、大当り!取材班もビックリ。」
(逸見さん、「4・4・4」の大当りでニコニコ。当時、無制限営業。下皿にもギッシリの玉。)
ナレ「思わず逸見さん、エヘラエヘラ。もう一つおまけに、エヘラエヘラ。これこそ、アイ・ドント・ビリーブです。」
逸見「(興奮した様子で)偶然、これになっちゃったよ!こういうね、こういうマグレがあるとね、もう止められなくなんだよね、これ!凄いよ、これ!」
ナレ「ちなみに、この時、逸見さんが出した玉数は1800個。やはり、パチンコをやるからには、勝ちたいと思うのが当たり前です。その為には、誰よりも早く、情報を手に入れることが一番の近道。そして、情報を得る方法も増えました。最近は、パチンコに関するいろんな本が出ています。どれを選ぶが迷ってしまう。(ガイド、マガジン、〇秘情報、P術など、当時の攻略誌が次々と映る)」
(ダイヤルQ2パチンコ情報の自動音声)
「パチンコ大研究!はい、お電話有難うございます。パチンコ大好きなあなたに、面白くて役に立つ情報をお送りいたします。パチンコ台も、話題のデジパチ機を中心に、様々な自分の好きな機種が選べます。他にも、注目すべきパチンコ店としては、従業員30名は全員女性でボディコンスーツ…。」
ナレ「今流行のダイヤルQ2もその一つ。電話を使って、簡単に情報をキャッチできます。」
ナレ「そして、愛媛県・八幡浜市。この市に、ユニークなパチンコの打ち方を考案した人がいるという情報を得て、取材班は早速飛びました。」
ナレ「阿部弘心さん、54歳。この人が編み出した打法、その名も『四次元サイクル打法』。」
密教行者、阿部弘心さん「私も修行者、行者ですから。では、仏様にその答えを示すように祈った訳です。それは、数字で示された訳です。」
阿部「(数字が書かれた紙を見せて)このように、えー、36が4段、9が4段となっております。サイクル打法の極意として、えー、6分打法を示しております。まず、釘とか、そのポイントとかいうことは、ほとんど関係ないと思います。勝つ為には、どうすればよいのか。出る台を見極めて、出玉時間に合わせて打つ、それ以外にないのです。」
ナレ「阿部さんがまとめた極意、四次元サイクル打法。パチンコ台の玉の出には、36分の大波と9分の小波がある。そこで6分打って30分休む、6分打って30分休む…を繰り返す。これを繰り返せば、役物に入る確率は高くなる。リズムとタイミングを合わせれば、出玉倍増になるのだそうです。」
阿部「これが、あのー、悟りです。パチンコも全て悟りです。」
ナレ「そこで我々は、早速、四次元サイクル打法の実験を試みる事にしました。」
(「ダイナム高田馬場店」のテロップ)
ナレ「今回、実験に参加してくれた宮野浩さん、パチンコ歴6年。そして、中島孝一さん、パチンコ歴5年。この実験では、右の宮野さんにはいつも通りのノーマルな打ち方、左の中島さんには四次元サイクル打法で打ってもらう事にしました。時間は、この教本から割り出した午後6時から9時までの時間帯で行われました。では、いざ勝負!」
(参加者は共にメガネの男性。若干キャラが被っている。)
ナレ「3・2・1・スタート!さあ、勝負開始です。二人とも、ほとんど毎日パチンコをやっているだけあって、型は決まっています。」
ナレ「最初の6分、中島さん初めての試みに、ちょっと緊張しています。こちらの台はスタッフが指定したもの。かたや、宮野さんはこれから先が長い。粘りと根性で頑張って貰いましょう。こちらは、台はどこに移っても構いません。」
ナレ「最初の6分も、終わりに近づいてきました。中島さん、玉を使い切ったようです。ノーマル打法の宮野さんはマイペース。」
ナレ「6分経過。四次元サイクル打法は、ここで一度ストップ。30分間は打ってはいけません。気合を入れなおす中島さん。一方、ノーマル打法の宮野さんは、順調に玉数を伸ばしてきています。休んでいる間、相手が気になる中島さん。宮野さんは相変わらずのマイペース。二人の戦いは、まだまだ続きます。」
ナレ「ノーマル打法の宮野さん、ノッて来たようです(大当り。下皿の玉をドル箱に落とす)。ハネが開きます。打ちたくて仕方がない中島さん。好調に増える宮野さん。中島さんにとって、待っている30分間は、時間以上に長く感じているようです。メガネを上げて、さあ、6分間ガンバレ!」(中島さん、やたらとメガネを触る癖がある。)
ナレ「一方、こちら(宮野さん)は、何か余裕さえ感じますが、本当のところはどうでしょう。しかし、増えている事だけは確かです。」
ナレ「さあ、四次元サイクル打法、そろそろ6分が経ちます(絶不調の中島さん)。どんどん減っていく。下(皿)にも、全然ない…。」
中島「腹立つわ~、これ、ホンマ!(台に八つ当たり)」
ナレ「台にアタる中島さんであります。宮野さんの方も、多少減ったように見えますが、中島さんと比べれば、この時点では大差がついています。」
ナレ「さあ、午後9時。泣いても笑っても、最後の6分です。最後の6分間に全てを賭ける中島さん。かたや、最後の追い込みにかける宮野さん。ところが、ついに四次元サイクル打法の中島さんに、当りが来ました!一気に増やす最後のチャンス!そして、午後9時6分、実験は終わりました。」
ナレ「さて、結果やいかに?まずは、ノーマル打法の宮野さん。2430個。続いて、四次元サイクル打法で打った中島さん。1217個。宮野さんのおよそ半分。しかし、玉数を1個4円で計算し、使った金額で割ると、ご覧のようにほぼ互角。この勝負、引き分け。ま、たまにはこんなユニークな打ち方も、面白いかもしれません。四次元サイクル打法。」
(ノーマル打法の宮野さんは7500円投資の2430発。四次元サイクルの中島さんは3500円投資の1217発。当時の馬場ダイナムは「2.5円交換」なので、収支的には二人とも負け。負け額の少ない中島さんの方が、実質的には勝ちだと思うが…まぁ、どうでもいいか。)
※詳細な情報が残っているのは、残念ながらここまで。記憶では、この後「東京会館」浅草店の新装開店(夕方)の模様が流れ、さらに「銀玉親方の必勝講座…デジパチの連チャン」のコーナがあり、三共「フィーバーレクサスIV」(IVDの兄弟機。ドラムの図柄は違うが、内部判定システムはほぼ共通。)の「朝一単発・連チャン打法」を親方が実演・解説。最後はMC逸見さんが夜の上野の路上から、締めのコメント⇒エンディング(高橋真梨子の「遠いprophecy」がエンディングテーマ)。
※仙台太郎さんのコメントで思い出しましたが、確かに「開店前、シャッターの下から覗き込むお客」のシーン(東京会館・浅草店)がありましたね。ナレーションの槇大輔氏が、「いるんですよね~、気の早いお客が」と笑いながら言っていたのを覚えています。あれが、若き仙台さんのお姿だったとは…。
(「素敵にドキュメント、’91春パチンコ」の項、了)