1993年(平成5年)にニューギンから登場した3回権利物「カルメン」
★賞球…7&9&15
★大当り確率…1/365
★3回権利、出玉約6000発
★数珠つなぎ連チャンあり
1990年代前半のニューギンといえば、シンプルな3ケタドットを使った権利物を、一時期「シリーズ化」していた事がある。
ツインズ、トリプルエース、カーニバル、ツービートAA、カルメン、トリオ、パンチョス…。
ファンの心を掴んで大ヒットとしたもの、マニア心を絶妙にくすぐったもの、最後までマイナー機扱いで終わったもの…その命運は様々だったが、これらのドット権利物シリーズには、当時のニューギンの「個性」が色濃く出ていた。
もっとも、液晶連チャン権利モノ「キューティーバニー」以降、その方向性はガラリと変わってしまった感もあるが…。
さて、本機は3回権利物の人気機種「カーニバル」の後釜として登場。初当り確率が低くなった代わりに、権利消化後の「数珠つなぎ連チャン」が仕込まれていた。
※初当り確率の比較⇒(カーニバル…1/300、カルメン…1/365)
新宿・歌舞伎町「モナミ」、渋谷「柳小路」、向ヶ丘遊園「ニューギンザ」、新百合ヶ丘「ジアス」など、都内・神奈川の各ホールで打ちこんだ、想い出の一台だ。
「一撃6000発」が連チャンすれば、12000発、18000発…と一気の大勝ちも見込めた為、アツくなり投資が嵩むケースも多かった。始動チャッカーがスルー式で玉持ちも悪かった。そこへきて、期待の「ロングリーチ」が立て続けに外れた時の悔しさといったら…。
ゲーム性は非常にシンプル。ヘソのスルー始動チャッカー通過で、3桁の赤いドットデジタルが回転(停止順は左⇒中⇒右)。デジタルの三つ揃い(左はオールマイティの「サボテン」でも可)で、盤面下の電チューが約6秒開放。電チュー複数入賞⇒ヤクモノ回転体Vゾーン入賞で、権利発生。その後は右打ちで権利消化。2回目、3回目権利時は、デジタル確率が大幅アップする為、再度の権利発生は容易。3回権利で出玉は約6000発…といった具合である。
カーニバルで好評を得たオールマイティ図柄の「ヨット」だが、本機では「サボテン」に変わった。
※ニューギン・ドット権利物のオールマイティ図柄については、コチラの記事もご参考に。
http://blog.goo.ne.jp/selfconfide777mc/e/6c69b359c9b0065030c97a0a30ee8b1f
デジタル図柄が「0~9」の数字10個プラス、左デジのオールマイティ図柄(1個)、それと右デジのブランク図柄(1個)しかない為、デジパチに比べてリーチが掛かり易い特徴もあった。
さて、本機は明らかな「連チャン機」として知られるが、その「仕組み」については、ネット情報も少ない。
「大当り後、1/4で連チャンモード突入」とか「権利終了後、1/6で連チャンモードに入る」などの記述は散見されるものの、具体的な「連チャンシステム」に言及したページはない。
そこで今回は、カルメンの連チャンが一体どういう「カラクリ」で起こったのかを、今更ながら説明したいと思う。
本機の大当り抽選は、「一次判定」と「二次判定」の「2段階判定方式」。
・一次判定…カウンターの範囲は「0~4」の計5コマで、当選値は「0」。一次当選率は1/5。
・二次判定…カウンターの範囲は「0~72」の計73コマ。一方、当選値は特定の乱数ではなく、二次判定で取得した乱数が次の2条件を満たしていれば、当選となる。
条件1:取得した乱数が、「0」でないこと
条件2:取得した乱数が、「判定値」と同じか、それ以下であること
「判定値」とは、本機の2、3回目権利時の内部確率をアップさせる為に、プログラム上組み込まれた二次判定用の数値だ。電源投入時及び通常時の判定値は「1」。
二次判定のカウンター範囲は「0~72」(73通り)だが、判定値が「1」の時、上記の2条件を満たす値は「1」のみとなる※。よって、通常時の二次当選値は「1」で、当選率は1/73。
※通常時、「1」以外の乱数を取得した場合、全て「二次ハズレ」となる。
「0」…条件1を満たさないのでハズレ
「1」…条件1、2ともに満たすので二次当選
「2~72」…条件2を満たさないのでハズレ
以上より、一次・二次トータルの確率(大当り確率)は、1/5×1/73=1/365。
次に、2回目、3回目の権利中の内部確率はどうか。
表向きのプログラムでは、2、3回目権利中は、通常時の10倍アップ=1/36.5となっていた。
だが、実際は、さらにそれよりも高い1/8.69で抽選されていたのだ。
カルメンの権利中、やたらと早くデジタルが揃う事が多かったが、あれは決して偶然ではなく、内部で仕組まれた「カラクリ」だった訳だ。では、具体的に見ていこう。
表向き、2、3回目権利中は、「判定値」が「10」になるようにプログラムされていた。
判定値が「10」の場合、一次当選率は1/5のまま不変だが、二次当選値は「1~10」の10通りに増えて、二次当選率は10/73=1/7.3となる。よって、トータル確率も「1/5×1/7.3=1/36.5」と10倍アップする。
しかし、実際に1、2回目の権利消化後の内部状態をチェックすると、判定値が本来の「10」ではなく、「42」に書き換えられている事が判った。
判定値が「42」に書き換わると、二次当選値も「1~42」の計42通りに増える。よって、二次当選率は42/73となり、一次・二次トータルの確率も1/5×42/73≒1/8.69の超・高確率状態となって、2,3回目権利中はほとんどハマることなく、デジタルが揃うようになっていたのだ。
(ごく稀に、バグで判定値が「1」のまま書き換わらず、権利中に通常確率でドハマリする事があった。)
なお、デジタルが揃ってV入賞した直後に、判定値は「1」に戻る。よって、ラウンド消化中は1/365の通常確率となる為、ダブル狙い等は不可。
一方、デジタルが揃ったのにVへ入らなかった(パンク)場合、判定値は「42」のまま維持され、大当り確率は1/8.69にアップしたままとなる。これは、パンク時の「救済措置」といえよう。
では、肝心の「連チャンシステム」について。
3回目権利の終了時(厳密には、3回目権利中の16ラウンド開始直後)、内部では「モード移行抽選」が行われる。モードは全部で3つ。
(1)即連モード(大当り確率=1/5.07)
(2)数珠連モード(大当り確率=1/21.47)
(3)通常モード(大当り確率=1/365)
モード振分けは「モード抽選用カウンター」により行われる。カウンターの範囲は「0~11」の計12コマ。振り分け率は通常モードが10/12で、即連モードと数珠連モードが各1/12づつ。トータルの連チャンモード選択率は2/12=1/6となるが、即連Mと数珠連Mでは大当り確率が異なる。
10回転以内の速攻連チャンなら「即連」モードに、50回転以内の当たりなら「数珠連」モードに滞在していた可能性が高いという事だ。
で、この「モード移行」についても、例の二次判定に使う「判定値」が、大いに関係していた。
即連モード選択時は、判定値が「81」に書き換えられる。この場合、二次当選値は「1~81」と一気に増えるが、カウンターの範囲が「0~72」の73コマしかない為、実際は「1~72」(「0」を除いた全数値)が二次当選値となる。即ち、当選率は「72/73」で、ほぼ「フリーパス」状態だ。一次判定の部分は変わらない為、即連モードの大当り確率は、「1/5×72/73≒1/5.07」。
一方、数珠連モード選択時は、判定値が「17」に書き換えられる。二次当選値は「1~17」で、二次当選率も「17/73」にアップ。やはり一次判定の部分は不変なので、数珠連モードの大当り確率は「1/5×17/73≒1/21.47」。
いうまでもなく、通常モード時の判定値は「1」で、大当り確率は1/5×1/73=1/365。
このように、カルメンでは、確率変動時の内部確率が、本来のプログラムが示す数値よりも、大幅にアップしていた。さらに、二次判定の「判定値」を状態毎に巧みに変化させ、権利終了間際に行われる「モード移行抽選」で、2つの異なる連チャンモードに突入させる事により、あのアツい「6000発の連チャン」を実現していたのだ。当然、大当り直後にヤメた数珠連モード台の「ハイエナ」も有効だった。
では最後に、カルメンの「リーチ」に関して少々…。
カルメンは、カーニバルなどと同じく、通常時はロングリーチ(スーパーリーチ)しか大当りしない。、ノーマルのままでは、ハズレ確定である。「ノーマルorロング」というリーチの判り易さも、本機を好んで打った理由の一つ。リーチがかかる度に、「ロングに発展しろ!」と強く念じたのは、いうまでもない。
左・中デジタルがテンパイするとリーチとなり(左にサボテンが止まると、中デジは何が止まってもリーチ)、右デジタルはスロー回転でスクロールを開始する。通常は、ノーマルのまま半周から1周半程度進んでハズレとなるが、2周手前辺りでサウンドが派手に変わり、ドットが赤・緑・橙とカラフルに変化すると、ロング(スーパー)突入である。こうなると、大当りか前後1コマでしか停止しない「激アツ」リーチとなる。
本機は大当り時、必ずロングリーチを選択する。また、右が「プラス1コマ」でハズれるリーチは、7/10でノーマル、3/10でロングを選択。一方、右が「マイナス1コマ」でハズれるリーチは、逆に3/10でノーマル、7/10でロングを選択。右が±2コマ以上でハズれるリーチの時に、ロングリーチが選ばれる事はない。
「1コマ手前」でリーチが外れる時は「7割」がロングだが、「1コマ先」で外れるリーチがロングを選択する可能性は「3割」しかない。必然的に、ロング発展時に1コマ手前を超えた時点で、大当りの期待度は一気に高まる。
ただ、不調時に限って、この「プラス1コマハズレ」を、立て続けに喰らったりしたから哀しい。
「次こそは、次こそは…」と投資を続けた挙句、結局は財布をカラにした事が何度あったか…。
逆に、残り1000円の土壇場から初当りを掴むと、数珠連のループで逆転勝ちした事もある。
ゲーム性こそ単純だが、それ故にアツく、のめり込みやすい「魔力」があった。
「1993年・下半期」という、連チャン規制ギリギリの時期に登場した為、ノーマル機カーニバルに比べると、設置を敬遠する店も少なくなかったが、それでも多くのファンの心をワシ掴みにした名機「カルメン」。
’97年10月には、「社会的不適合機・第四次撤去対象機種」にリスト入りしたが、その後もしぶとく本機を残す「みなし機ホール」は各地に存在した。
私もすでに実機と離れて久しいが、あの心ときめくリーチと香ばしい連チャンは、今後も記憶に残り続けることだろう…。