Life is ART!

高齢者施設で活躍しているアートワークセラピスト達の旬な声をお届けします。

”いくつになっても。想定外のアート”

2013-10-31 08:17:48 | 素敵な現場
みなさま、こんにちは。
シニア担当のShikibuです。
こちらでは初めてブログを書かせていただきます。 
どうぞよろしくお願いいたします。

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季節はずれの台風がいくつも通り過ぎてゆきながら、秋が深まってまいりました。

モノ思ったり、食べ物が美味しかったり、体を動かしたり・・・そして芸術の秋。

毎月1回開催している高齢者介護施設でのアートセラピーのプログラムを作るネタは
たーくさんありそうなのになかなか降りて来ない。。。

悶々と苦しい時間を過ごしていた私の頭にふっと浮かんできたのが「村祭り」。

♪村の鎮守の神様の~♪という歌です。

秋の豊かな実りを神様に感謝するとともに、皆でこのお祭りを祝う、
明るくてうきうきした感じをアートにして施設の皆さんとこの季節を楽しみたい・・・
と思い色々調べると、ある地方では秋にいろいろなお面をかぶり街を練り歩く、
というお祭りを開催していることを知りました。

お面には色々な意味があり、
例えばひょっとこは「火男」で火の神様、「おかめ」は福を呼ぶ面相等々、
見た目の面白さに加えてそのお面をかぶる人や
見る人にご利益をくださる意味合いもあったのでは・・・と想像が広がります。
あるいは、面白いお面の造形が皆の笑いを呼び、
笑いのエネルギーが場や人々に力を与えるような・・・そんな効果もあったかもしれません。


そこで、今回は『秋祭り 歌とお面で秋を楽しむ』と称して
「自分も皆も笑顔になれる、とびきり面白ーいお面!」を作る、というワークにしました。

私が担当させていただいているクラスは施設の中でも最も介護度が高い方がご参加くださいます。

このため、このクラスでは何かを切る、つなげる等はもちろん
ご自身で絵筆やクレヨン等持つことが難しい方も多くいらっしゃいます。

そんな中で、いかにその方とアートを通して関わることができるか・・・

毎回、プログラムを一つ一つのプロセスに落とし込むにあたり悩むところです。


そしておそらく、普通に生活している私たちでも誰かがいきなり現われて、
「さあ、今からアートしましょう!」なんて言われても急にアートする気持ちに切り替えること、難しいですよね。
シニアの方ならばなおさらです。

ご参加いただくシニアの方々にはアートすることに少しづつ気持ちを向けていただけるよう、
写真をご覧いただいたり体をほぐしていただいたり、歌を歌ったり・・・
徐々にイメージを広げていただくところから始めます。

先の「村祭り」の歌を歌って、皆さまノって来たかな~という頃合を見計らい、お面作りに突入です。

まだ目や鼻が付いていない、のっぺらぼうのお面を前にして

「これシワくちゃだから、こっち(シワが少ない)のほうがいいわ!」とおっしゃる方、

「僕は自分の顔自体が面白いからお面みたいなもんだよ」とおっしゃる方、

「・・・・」 無言で向き合われる方・・・

色々な方がいらっしゃいます。

そんな時、お一人お一人に寄り添うのがサポーターのセラピストたちです。

ご自身でお作りになれる方は「このパーツを使いたい!」というようなきっかけから
どんどんユニークな作品が仕上がってゆきます。

例えばS様。 どちらかというと強面で無口な方なのですが、ひょうきんな一面もお持ちです。

今回は途中からのご参加で、いらした当初はセラピストの説明にもしばらく無言・・・

だったのですが、ベローンと伸びた舌のついた口のパーツを手に取られ、ご自身でもベローンと舌を出されると、
そこから何とパーツをお面ではなくご自身の顔に貼られて、顔面お面?の出来上がり。

こちらの想定を遥かに超えた、ユニークな作品が出来上がりました。



あるいはN様。セクシーな口を最初にお面にペタリ。少しして、オレンジ色のほっぺをペタリ。

その後手が止まってしまわれていたのですが・・・

ご自身の手に握りしめておられた2つのパーツがあったので、これをお面に載せてみましょうか、と

おすすめしたところ、何となく目のような感じに。

そこから、これ貼ろう、あれも貼ろうとイメージが広がってゆかれた様子。

普段おちゃめなN様からは想像もつかない、宇宙人のような?!前衛的な作品になりました。



一方でご自身で手を動かして”作る”ことが難しい方、会話が難しい方もいらっしゃいます。

そんな時はまずシンプルに、好きあるいは嫌い、Yes/No を眼の動きやかすかなうなづきなど、
何かしら出してくださるサインをセラピストが汲み取り、一つの作品に仕上げるお手伝いをします。

そんなこと判るの?!と言われそうですが、それがこのクラスの本当に面白いところで、
何とか汲み取りたいと接していると非言語でも伝わってくる想いが感じられるのです。

私たちは普段コミュニケーションにおいて、つい”言葉”に頼ってしまいがちです。
しかし実は言語以外でも多くのことが伝わっていると言われてます。

言語以外での気持ちのやり取りは簡単ではありません。 
しかし実際にその場で皆さまと関わっていると
お互いの間にとてもあたたかく、深く、豊かな時間が流れることをいつも感じます。
(そして、つい時間を忘れてしまうのです・・・いけない、いけない。)

そんなやり取りを経て仕上がった作品は、その方ご自身が切ったり貼ったり、手をかけたもの、ではありません。

ただ、セラピストが大切にしているのはその方の言葉にならない、できない想い。

そして、どんな形であれ心がけているのはその方の”好き”、”YES”ができるだけたくさん詰まった作品であるということ。





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シニアの方々とアートを通して関わらせていただく中で驚くのは、
いくつになっても皆さま豊かな感性をお持ちだということです。

若い頃に美術を嗜んでいたから昔取った杵柄が・・・という事ではありません。
「私はこういうの苦手で」とか「どうしたら良いかわからないんです」なんておっしゃる方ほど上手下手を越えて、
こちらがはっとするような輝きを感じる作品が出来上がります。

「すっごいのができたー!」と皆さまが笑顔で楽しんでくださっている様子を見るといつも嬉しくなります。

と同時に将来自分がシニアと言われる年になった時も当たり前のようにアートを通して、
好き/嫌い、Yes/Noや様々な想いを誰にはばかることなく
自由に表現できる場や時間があると良いな、と思わずにいられないのです。

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お知らせ

11月23日から「シニアのアートワークセラピスト養成講座」が始まります!

いくつになってもシニアの方は素晴らしい感性をお持ちです。
手や体を自由に動かせなくても、うまく言葉にできなくても、
自分の想いを形にすることができたら・・・素敵ですよね。
そんな場を作るアートセラピストとしてあなたも仲間になりませんか?

詳しくはこちらから
皆さまのご参加、お待ちしております☆


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