9.花盗人(はなすし)て取んなちバラん刺(いら)が叱(が)っ
バラよりはバラの棘が強い印象を受けますが、この句が一番課題に近いようにおもわれます。
(フォト狂句課題吟の部)
《選評と蛇足》
自分が一句も詠まないのに、人様の句の選評をするのは、忸怩たる思いで一杯です。「そげん議を言(ゆ)となあわいが作っみれ」と言われれば一言もありませんが、勇気を奮って書いてみます。
今回の「バラの花」は、課題そのものが人間ではないので、バラと人間をどう関連付けるか結構難しかったのではと思われます。ご存知のとおり、薩摩狂句は「人間を詠む」のが基本ですが、人間以外のものを素材にする場合は次の二つが必要です。
1.擬人法を使う 2.人間との関りを持たせる。
今度の場合ですとバラそのものを詠むのではなく、バラと人間がどのように関っているかという視点が必要です。しかも「バラ」そのものが動かないことが重要です。ほとんどの句がそのような条件を満たしているので、問題はないようです。ただ、中には「バラ」でなくても成立するような句が見受けられました。課題の「バラ」が動くのは避けたいところですが、何句かあったようです。
課題吟の場合は「課題が動く」のはいけないと先人の教えにあります。課題そのものが句の中心になるように詠むということです。これがなかなか「曲者」で、課題吟のもっとも難しい点の一つです。初心者、ベテランを問わずしっかり念頭においておきましょう。
自由吟より課題吟の方が作りにくい最大の理由だと私は思っています。また、課題の写真を選ぶ場合も、風景画や生物などよりは、人間の方が詠みやすいと思います。次回からご配慮いただければ有難いです。
自由吟
2.綺麗(みご)て化粧(けしょ)我(わ)が家(え)ん中は塵(ごん)の山
外面だけを飾る心理を穿った句ですが、表現は少し違っていても同想句が結構詠まれています。
「良(よ)か着物(いしょ)は着(き)いが台所(おすえ)は油虫(あまめ)ん巣」
など。今後の参考にして下さい。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます