★オリジナル小説「黄昏の街の中で」~アーティストとの恋~★
※本小説及びポエムの前文及び一部の引用掲載は固くお断り申し上げます※
初めて小説を書きます。
感想などコメでいただけるととてもうれしいです。
※注意 本文内に掲載している写真は、あくまでもイメージで、小説は、完全なるオリジナルフィクションです※
ただ、読んでいただけると私の恋愛感がわかってもらえるかな
かなり妄想が入っているのでご了承下さい
【黄昏の街の中で~アーティストとの恋】
ピンポーンコンコンコン
いつもの合図のドアをあける
雨に濡れ、かなり酔った状態のリュウが倒れこんできた。
右手にシャンパン、左手には小さなケーキ箱をもったままで。
「Happy birthday to me!!!」
少々ろれつのまわらない口調でシニカルな笑みを浮かべてリュウはそのふたつを私に差し出した。
「お・・お誕生日おめでとう
っていうかびしょぬれじゃない!!それ今日はCDの発売のイベントのあと打ち上げだって・・・」
まくしたてるように話し始めた私を彼の冷たい唇が、まるで「それ以上いわないでくれ」というかのようにふさいだ。
そっと彼を押し戻すと、彼がこきざみに震えているのに気がついた。
(また・・・彼は何かに傷ついたんだわ)
いつもは、何かに向って、輝いている、そしてするどい瞳は、今日は翳っていた。
私は、バスタオルをリュウに投げると
「とりあえず座っていて・・・何かだすから」
といい体の温まるホットのエッグ・ノッグを彼の前にだした。
神崎龍(かんざき りゅう)
15歳でデビューし、当初は、今のアイドルブームやバンドブームに押され、なかなか芽がでなかったが、路上での弾き語りやライブハウス等、彼のスタイルを崩さず活動をつづけてた。
彼のメッセージ性の強い曲、詞、歌い方に日頃は、無関心だった若者を中心に有線で火がつき、5枚目のシングル「黄昏の街の中で」でオリコンチャート一位
それから、彼の曲を街中で聴かない日はなくなった。
「なあ ミナ」
彼は、美菜穂という私の名をミナと呼ぶ。
「5枚目のシングルが売れなきゃお払い箱だって言われていた俺が、ヒットしたとたんにマネージャーは愛想笑い、プロデューサーは、ペコペコ。おれを邪魔者扱いしていた社長さえ・・・俺に気を使ってるんだぜ・・・・
大人社会、音楽社会ってそんなものなのか?」
彼はあえて嫌いな「芸能界」という言葉を避けた。
私は、リュウの持ってきたシャンパンにオレンジジュースを注ぎ「ミモザ」というカクテルに、ケーキと即席でつくったカナッペをテーブルに並べグラスをかるくあげて言った。
「20歳のお誕生日おめでとう」
「ありがとう・・ミナ。今日は、君と一緒に祝いたかった」
「ねえリュウ、このカクテルの名はミモザ・・・あなたのデビューシングルと同じ名前よ」
「ああ・・・ミナは言っていたよな。いつかリュウが売れたら絶対ミモザでカンパししようって」
「あの頃は、楽しかったよ。自分の思うままに、心から湧き出る言葉をノートに書きなぐり、ギターを片手に曲をつくり、路上で歌ったり、ライブでみんなで熱唱したり、手を伸ばせば俺の歌を本当に愛してくれる奴らと一緒に熱い空間、時間を作り上げていたから」
そういうとリュウはミモザを一気に飲み干した。
私はもうひとつのフルート型シャンパングラスにシャンパンを注いだ。
「シャンパンは、シャンパンを注いだときに、グラスの底から気泡があがってくる様子が、とっても綺麗でうっとりするでしょ
ひとすじの泡が綺麗に上にあがってくるのが、良いシャンパングラスなのよ。
シャンパングラスの中には、内側の底の部分に小さな傷をつけて、綺麗な泡を立ち上らせるようにしてあるものもあるの。わざとね・・・」
「リュウは、今までもたくさんの人に助けられ、でも時には、裏切られ、傷ついたこともあるよね。でもだからこそ他人の痛みがわかり、心に影をもち、なにかにおびえ、不安な気持ちを自分でだきしめている人たちの共感をよぶ歌が作れたんじゃないの?
このシャンパンの泡が、人々の心に感動を呼ぶように・・・・
私だって、私だって・・・リュウの歌が無かったら今頃生きていなかったわ・・・」
3年前・・・・当時愛していた人にふられ、身も心も傷つき、秋の誰もいない海を眺めているうちに、失った愛を求め、さまようように海に入っていった私を、海を眺めながら作詞をしていたリュウが見つけ全身ずぶ濡れになりながら助けてくれたのだ。
当時17歳だった彼に抱きかかえられ、砂浜に座らされた私に向かい、彼は、歌いだした。
今はもう秋 誰もいない海
知らん顔して 人がゆきすぎても
私は忘れない 海に約束したから
つらくても つらくても
死にはしないと
今はもう秋 誰もいない海
たった一つの 夢が破れても
私は忘れない 砂に約束したから
淋しくても 淋しくても
死にはしないと
今はもう秋 誰もいない海
いとしい面影 帰らなくても
私は忘れない 空に約束したから
ひとりでも ひとりでも
死にはしないと
ひとりでも ひとりでも
死にはしないと
ルルル ルルルル
ルルル ルルルル
透き通ったそして少し寂しげなきれいな歌声だった。
「1968年(S.43)トワ・エ・モアが歌っていたうたなんだ。
http://www.hi-ho.ne.jp/momose/mu_title/daremo_inai_umi.htm
俺は、人の心にしみる詞を書き、自分の心の叫びを曲に載せて世に出したいんだ。」
車で来ていたという彼は、その後、また、自殺をしかねない私を心配し、マンションまで送ってきてくれた。
その夜、私は泣いた。
その日出逢ったばかりの無名のシンガーの胸の中で、体中の水分すべてがなくなるほど・・・・
泣き疲れて眠る私を、ずっとリュウは、髪をなでつづけてくれた。
朝日のまぶしさで目がさめると彼は、寝室にはいなかった。
耳をすませると、リビングからギターの音がかすかに聞こえた。
*******つづく********
※本小説及びポエムの前文及び一部の引用掲載は固くお断り申し上げます※
初めて小説を書きます。
感想などコメでいただけるととてもうれしいです。
※注意 本文内に掲載している写真は、あくまでもイメージで、小説は、完全なるオリジナルフィクションです※
ただ、読んでいただけると私の恋愛感がわかってもらえるかな
かなり妄想が入っているのでご了承下さい
【黄昏の街の中で~アーティストとの恋】
ピンポーンコンコンコン
いつもの合図のドアをあける
雨に濡れ、かなり酔った状態のリュウが倒れこんできた。
右手にシャンパン、左手には小さなケーキ箱をもったままで。
「Happy birthday to me!!!」
少々ろれつのまわらない口調でシニカルな笑みを浮かべてリュウはそのふたつを私に差し出した。
「お・・お誕生日おめでとう
っていうかびしょぬれじゃない!!それ今日はCDの発売のイベントのあと打ち上げだって・・・」
まくしたてるように話し始めた私を彼の冷たい唇が、まるで「それ以上いわないでくれ」というかのようにふさいだ。
そっと彼を押し戻すと、彼がこきざみに震えているのに気がついた。
(また・・・彼は何かに傷ついたんだわ)
いつもは、何かに向って、輝いている、そしてするどい瞳は、今日は翳っていた。
私は、バスタオルをリュウに投げると
「とりあえず座っていて・・・何かだすから」
といい体の温まるホットのエッグ・ノッグを彼の前にだした。
神崎龍(かんざき りゅう)
15歳でデビューし、当初は、今のアイドルブームやバンドブームに押され、なかなか芽がでなかったが、路上での弾き語りやライブハウス等、彼のスタイルを崩さず活動をつづけてた。
彼のメッセージ性の強い曲、詞、歌い方に日頃は、無関心だった若者を中心に有線で火がつき、5枚目のシングル「黄昏の街の中で」でオリコンチャート一位
それから、彼の曲を街中で聴かない日はなくなった。
「なあ ミナ」
彼は、美菜穂という私の名をミナと呼ぶ。
「5枚目のシングルが売れなきゃお払い箱だって言われていた俺が、ヒットしたとたんにマネージャーは愛想笑い、プロデューサーは、ペコペコ。おれを邪魔者扱いしていた社長さえ・・・俺に気を使ってるんだぜ・・・・
大人社会、音楽社会ってそんなものなのか?」
彼はあえて嫌いな「芸能界」という言葉を避けた。
私は、リュウの持ってきたシャンパンにオレンジジュースを注ぎ「ミモザ」というカクテルに、ケーキと即席でつくったカナッペをテーブルに並べグラスをかるくあげて言った。
「20歳のお誕生日おめでとう」
「ありがとう・・ミナ。今日は、君と一緒に祝いたかった」
「ねえリュウ、このカクテルの名はミモザ・・・あなたのデビューシングルと同じ名前よ」
「ああ・・・ミナは言っていたよな。いつかリュウが売れたら絶対ミモザでカンパししようって」
「あの頃は、楽しかったよ。自分の思うままに、心から湧き出る言葉をノートに書きなぐり、ギターを片手に曲をつくり、路上で歌ったり、ライブでみんなで熱唱したり、手を伸ばせば俺の歌を本当に愛してくれる奴らと一緒に熱い空間、時間を作り上げていたから」
そういうとリュウはミモザを一気に飲み干した。
私はもうひとつのフルート型シャンパングラスにシャンパンを注いだ。
「シャンパンは、シャンパンを注いだときに、グラスの底から気泡があがってくる様子が、とっても綺麗でうっとりするでしょ
ひとすじの泡が綺麗に上にあがってくるのが、良いシャンパングラスなのよ。
シャンパングラスの中には、内側の底の部分に小さな傷をつけて、綺麗な泡を立ち上らせるようにしてあるものもあるの。わざとね・・・」
「リュウは、今までもたくさんの人に助けられ、でも時には、裏切られ、傷ついたこともあるよね。でもだからこそ他人の痛みがわかり、心に影をもち、なにかにおびえ、不安な気持ちを自分でだきしめている人たちの共感をよぶ歌が作れたんじゃないの?
このシャンパンの泡が、人々の心に感動を呼ぶように・・・・
私だって、私だって・・・リュウの歌が無かったら今頃生きていなかったわ・・・」
3年前・・・・当時愛していた人にふられ、身も心も傷つき、秋の誰もいない海を眺めているうちに、失った愛を求め、さまようように海に入っていった私を、海を眺めながら作詞をしていたリュウが見つけ全身ずぶ濡れになりながら助けてくれたのだ。
当時17歳だった彼に抱きかかえられ、砂浜に座らされた私に向かい、彼は、歌いだした。
今はもう秋 誰もいない海
知らん顔して 人がゆきすぎても
私は忘れない 海に約束したから
つらくても つらくても
死にはしないと
今はもう秋 誰もいない海
たった一つの 夢が破れても
私は忘れない 砂に約束したから
淋しくても 淋しくても
死にはしないと
今はもう秋 誰もいない海
いとしい面影 帰らなくても
私は忘れない 空に約束したから
ひとりでも ひとりでも
死にはしないと
ひとりでも ひとりでも
死にはしないと
ルルル ルルルル
ルルル ルルルル
透き通ったそして少し寂しげなきれいな歌声だった。
「1968年(S.43)トワ・エ・モアが歌っていたうたなんだ。
http://www.hi-ho.ne.jp/momose/mu_title/daremo_inai_umi.htm
俺は、人の心にしみる詞を書き、自分の心の叫びを曲に載せて世に出したいんだ。」
車で来ていたという彼は、その後、また、自殺をしかねない私を心配し、マンションまで送ってきてくれた。
その夜、私は泣いた。
その日出逢ったばかりの無名のシンガーの胸の中で、体中の水分すべてがなくなるほど・・・・
泣き疲れて眠る私を、ずっとリュウは、髪をなでつづけてくれた。
朝日のまぶしさで目がさめると彼は、寝室にはいなかった。
耳をすませると、リビングからギターの音がかすかに聞こえた。
*******つづく********