「財務省次官セクハラ問題」への一般の理解が酷い。
ある酒場で、常連さん(男性)とまだ日の浅いお客さん(女性)のふたりが、仲良く会話をしていた。場所を特定すると、どこの誰までわかってしまうかもしれないので、そこは控える。
話題は財務省の、例の話だ。
「麻生太郎副総理兼財務相は24日の閣議後記者会見で、財務省の福田淳一事務次官の辞任承認を公表した際、セクハラ疑惑について「はめられて訴えられているんじゃないかとか、世の中にご意見ある」と語った。被害を受けたとされる女性の訴えを軽視するかのような発言に野党から批判の声が上がっている。」
https://mainichi.jp/articles/20180424/k00/00e/010/247000c
お客さんの論点は以下だ。
1)マスコミは「色仕掛け」で取材は日常のこと。はめられたんだよ。
2)触った相手によって「セクハラ」かどうか感じ方が違うでしょ。触った相手が「山P」だったらむしろ喜ぶのでは?
3)北朝鮮の問題の方がよほど重要では。国会でする話題ではない。
これが男女ともで盛り上がっていた話だ。
1)2)とも偏見に基づく見解で、「セクハラ」擁護論である。少なくとも職場で公式にこの見解を述べたら、アウト、である。少なくとも、一方の彼の職歴や地位から推測すれば、そのことは理解していると思う。ただ酒の場で本音が出てくるのだと思う。
3)については、1)2)の見解を持つ人ならばそうなるだろうし、メディアが連日取り上げるのと裏腹に、この間の国会での論戦の文脈にほぼ関心がない人が多数を占めているであろう現状も反映されていると思う。
おそらく国会で何があったとしても、自民党は次の選挙で圧勝するかもしれないし、もはや立法府としての国会の機能が限りなく無意味になりつつあるようにも思う。そうした「無意味な国会」への冷笑的な態度が、「セクハラより北朝鮮」には一定程度表現されていると思う。
「セクシャル・ハラスメント」は性差別に基づく暴力のひとつである。その認識はまだ社会に定着してはいない。少なくとも日本の政府機関自体が、適切に理解していない=「アウト」であることが、この間の「財務次官セクハラ問題」への対応を通して明らかになった。「政争の具」批判以前に、まず今回の「国家機関による報道記者への二次セクシャル・ハラスメント」問題は、誰もが冷静に、ていねいに考えなければならない。
何より、興味本位で、「政治家と記者の間の話は人権の埒外」のような言動が巻き起こることへの賛同は、してはならない。それは自ら加害の輪に加わることであり、自らの偏見を拡大することであり、いつか間接の加害者から直接の加害者へ変わっていく道に踏み出すことだと考える。