森永卓郎(経済アナリスト)さんは言いました。
株価は80%暴落し、為替は1ドル90円台に?
こうした過去を踏まえて、これからの10年を予測すると、真っ先に起こるのは株価の大暴落でしょう。しかも今回は史上最大のバブルなので、下がり方も半端ではない。1929年の米国金融恐慌でも、1989年末からの日本のバブル崩壊でも、株価は80%強暴落したので、少なくとも同程度は下がるはずです。
さらに恐ろしいのは、同時に急激な円高が進行すること。これまでは投機筋の円売りによって円安に振れていましたが、IMF(国際通貨基金)が2024年4月に発表した最新の世界経済見通しでは、購買力平価の推計値を1ドル=約91円としています。
つまり、短期的には為替相場が上下に振れたとしても、長期的には「どの国でも同じ商品やサービスの価格が等しくなる為替水準に収束する」というのが購買力平価の理論なので、近いうちに為替レートは1ドル=90円台まで上昇するはずです。
一時は1ドル=162円近くまで円安が進んだので、45%ほど円高になる。そこへ80%の株価下落が重なれば、外貨建て金融資産の価値は10%も残らないでしょう。
そうなると、新NISAの開始に乗っかって貯蓄を投資に移した人の多くが破産者となり、老後資金を失う人が続出する。これが私の目に映る近未来の光景です。この変化の行き着く先は、グローバル資本主義の完全なる終焉です。要するに「金を出して世界のどこかから安く買ってくればいい」という経済が成り立たなくなるわけです。
今から遡ること150年前、経済学者のマルクスは「資本主義は必ず行き詰まる」と指摘しました。その理由を彼は4つ挙げています。1つめは地球環境の破壊。2つめは許容できないほどの格差の拡大。3つめは少子化の進行。そして4つめがブルシット・ジョブ、日本語に訳すと「クソどうでもいい仕事」の蔓延です。
中でも大都市で働く非正規社員の仕事は、コンピュータに管理・指示され、まるで機械の歯車のようにボロボロになるまで働かされるようになる。そこには何のやりがいも楽しみもありません。
しかも今後、定型的な作業はどんどんAIに置き換わります。すると最終的にはブルシット・ジョブもAIに代替され、人間との価格競争になっていく。クソどうでもいいうえに、お金も稼げない仕事にしがみつくという悲惨な状況になるでしょう。
森永卓郎(経済アナリスト)