思い当たる節あり・・・
米経済がいよいよ陰るとなれば、その前に横行していた投機の巻き戻しで相場が急展開しがちなこと。そして、日本投資家は円高ともにリスクを増幅されやすいことを、(さらに以下に述べる)こうした場面で日本投資家の行動パターンがあることを踏まえて、あらかじめ備えておく、それだけです。
第1に踏まえておくべきは、「平常バイアス」です。米国経済は悪化というより軟着陸に向かっている、来る場面の円高リスクは限られる、だから米日とも株価の下落も限定されるのではないか、こういう従来の見方に安穏として、危機の兆候を見逃すという、行動学上の罠です。「平常バイアス」は、日本の投資家に限らず、世界の誰にもある性向です。しかし、日本株の売買状況を見ても明らかなように、相場に対して方向性をもって臨む海外勢は、相場の方向転換の兆しに対してより敏感というのが筆者の実感です。
第2は日本投資家の「逆張り性向」です。日本の投資家は、相場が下がれば買い、上がれば売る逆張り行動が強いことで知られており、統計上も確認されるところです。小刻みな逆張り対応は、持続的な上げ相場においては、まずまずの成果となるでしょう。しかし、日本投資家の問題は、相場がトレンド転換した後も逆張りで頑張り、やがて含み損が大きくなって、ポジションを塩漬けにし、身動き取れなくなるケースが少なくないことです。
しかし、「平常バイアス」と「逆張り性向」の戒めは、情勢が不穏だから早く売って逃げるべきというばかりではありません。短期投資で相場に臨んでいるなら、当レポートのロジックを踏まえて、早期売り逃げも、ショート戦術も、機動的な押し目買い戦術も「あり」でしょう。
他方、中長期投資家の場合、下がるから売るべきか、下がるときこそ買うべきかを、自身の投資のスタンスとポジション状況を踏まえて考える必要があります。損失が許容度を超える恐れがあるなら、部分でも全部でも撤退して、立て直す必要があります。しかし、中長期投資では、押し目買いこそがパフォーマンスを高める好機なのです。重要なことは、下げの程度とタイミングを見計らって行動するか、そんな評価はしようがないから鈍感力発揮で時間分散買いをするか、です。
まずは当レポートのロジック、情勢認識を一助として、相場の下げ場面に遭遇しても、恐怖でまっとうな判断ができないような心理状態にならないこと、冷静な判断のために今後起こり得る事態を想定して備えておくことを勧めます。市場の専門家、FRBなど当局者ですら、データ次第と言って、情勢判断を変転させている状況です。不確実性とリスクへの対応を実体験する重要局面です。
田中泰輔氏のレポートより抜粋
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます