なにげな言葉

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迷宮・緑柱玉の世界の独り言

緑柱玉の大人の童話 NO.06   人魚姫

2021-01-02 | 大人の童話
青い青い海の底に人魚の国がありました。
人魚は15歳まで海の上を覗けない決まり。
一番下の人魚姫は、海の上が見たくて仕方が無い。
海の上を見てきた、お姉さま方の色々なことを聞いていれば、みたくなっても仕方が無い。それでも、決まりは決まり。

お姉様の話・・・
海の上には、星が輝き、月が輝いているのよ。
青い空は、海と同じように、何処までも続いているの。
海には無い雨が降り、雪というものも、降るのですよ。
冷たい海には、氷が流れ込むとこらがあるそう

一番下の人魚姫が15になったその日、何を置いても海上に出てみたかった。
まっすぐに上を目指して泳いだ。
波が白く輝く水面を海中から覗きながら、ドキドキしていた。
「あの波の向こうに、何があるのかしら・・・」

初めて見る海上。
見るもの全てが眩しかった。
これが・・・初めての深呼吸。
波に漂い、空を見ると、何処までも青空が輝いていた。
白い雲が流れる。
肌に触れる波と風邪を心地よく感じた
ぎらぎら光る太陽は、目が焼けるようにまぶしかった。
毎日、海の上が見たくて泳いだ。
人魚姫は何処までも何処までも泳いだ。
人魚姫にとって、見るもの全てが新鮮で、楽しかった。

ある日人魚姫は岩場に腰掛け、歌っていた。
人魚姫の声は、例えようのない美しい声。
宝石のように、透き通り、鳥のように、風に乗って何処までも届きそうだった。
人魚姫の歌を、魚も、鳥も聴いていた。
そして、丁度そこを通りかかった船の乗組員も聞いていた。
「おい!美しい声がするぞ!!」
皆が耳を澄まして聞きほれた。

人魚の声には魔物が棲んで居ると、言われていた。
人の正気を失わせ、声に惑わされた人々は、海に身を投じるものもいた。
操縦者のいなくなった船は、海の底深く沈んで逝くのだった。
そして、誰も二度と戻ってこなかった。

人魚と人には大きな違いが・・・
人間は人魚のように泳げない。
人魚には、人のような足が無い・・・。

人魚姫は、好奇心旺盛で、近くを通る船を見ては人間を観察した。
そんな船の中に、一人の気になる男を見つけた。
人魚姫にとって初めての感情だった。

人魚姫の暮らす深海は、女の園。
男はさほど重要ではない。
卵で生まれる魚と同じで、子孫を残す時のみ受精すればいい。
そう、それは体外受精。
それ以外は、女同士で愛し合い、語り合っていればよかった。
争いのない平和な世界。

男にとっても、女社会は居心地がいい。
王は王であっても、男社会の王とは違っていた。
本当に深海を仕切っていたのは、皇太后だろう。

そんな女社会で育った人魚姫が初めて男に興味を持った。
その男はとても素敵に見えた。

あの人の住んでいる世界に行ってみたい。

人魚姫は、人間の男を探した。
それは違う世界。
世界が違うのだから、探しても無理と言うもの。
それ以来、彼を見つけることは出来なかった。


   *   *   *


ところが、神様とは何といたずらなことをするのだろう。
ある日船が遭難した。
人魚姫はその船に、恋しい男を見つけ、心臓か飛び出しそうなほど驚いた。
おぼれた男を抱きかかえ、陸地まで運んだ。
息をしていることを確認したが、そこから先は進めない。
岩陰で見守るしかなかった。
人が訪れ、男を連れて帰った。

もう姫は、恋心を抑えることが出来なくなってしまった。
「あの海での出会いは、運命なのよ。
 逢いたい・・・
 あの人に逢いたい・・・」

人魚姫は、おばあ様にお願いした。
人間になりたい・・・

「人間はね、争うんだよ。
 愛する人と一緒になると言うことは、結婚して、子供を作るんだよ。
 人間はね、体の中に性器を差し込んで生殖を行うんだよ。
 男の体液で女の体を汚すのだよ。
 そして10ヶ月の間、肉体の中で子を育て、肉が裂ける思いで子を産むんだよ。
 これほど醜く、惨いことがあるかい?
 人魚のように、いつまでも清く体外で受精できないのだよ。
 人間の教えはね、男のアバラから女が作られ、男が寂しくないように作られたんだよ。
 女はおまけのようなもの。
 女が罪を犯したから、人類が罪人になったと言いつづけている。
 女を何だと思ってると言いたい教えを信じているんだよ。」
皇太后は、人間になりたいと言う人魚姫に話したが、人魚姫にとっては、風のようなものだった。事の重大さなど、知る由もなかった。

どれほど人間の男を愛してると言っても、おばあ様には理解してもらえなかった。
「私は彼を愛しています。彼のいないここで生きるのは、死人も同じです。」
「片思いを愛というのかい?」
おばあ様の忠告など、人魚姫にとっては、何の意味もなかった。

人魚姫は、魔女に相談することにした。
魔女は、人魚姫の望みを叶える代わりに、美しい声を貰う事にした。

男の住む宮殿の階段で、魔女のくれた薬を飲んだ。
そして、そのまま気を失い目が覚めると、男が人魚姫を抱きかかえていた。
男は、何処から来たかわからない女をまじまじと見つめ、問いかけた。
しかし人魚姫は答えなかった。

人魚姫が声を失い手に入れた二本の足。
足で歩くことがこれほどつらく痛いことだとは思ってもいなかった。
そして始めてみる足の付け根の切れ込みも又人間になった証拠と思った。
今まで見たことの無かった足と切れ込みの感覚を、人魚姫は不思議な感覚で味わった。

男の傍をヨチヨチと歩く人魚姫は、男にとってかわいい存在だった。
人魚姫もまた、足の痛みは、男の傍にいられる嬉しい痛みとなった。
人間の女は、体中を締め付ける苦しい服を着ていた。
かかとの不安定な、高い靴を履いていた。
人魚姫にとって全身がきしむような痛さだった。

男を見つめるまなざしは、恋する乙女の潤んだ瞳。
全身の苦痛に耐える瞳は潤んだ瞳。
男はそんな瞳で見つめてくる少女を愛らしく思い、いつも傍に置いた。
「かわいい僕のお人形」
人魚姫はそう呼ばれることが嬉しかった。

「人魚姫、いいかい、いくら足を手に入れて人間になっても、
 心から愛され、結婚を申し込まれなけれな、本当の人間の魂は手に入らないのだよ。
 それは愛されて肉体が繋がったとしても、だめだよ。
 愛され、結婚できた時に初めて人間になれるのだからね。
 もしも、他の女と結婚したなら、お前の心臓は破裂して死ぬのだよ。」
魔女の言葉がいつも心の中でこだましていた。

男は、美しい人魚姫の裸体を見て以来、毎夜人魚姫の体をむさぼった。
人魚姫は自分に好意を持っていることを知っていた。
男とすることを、口外できないことも男は知っていた。
人魚姫は、自分の体に男を受け入れる苦痛も幸せだと感じていた。
「このお方に一生愛されるのが、私の幸せ。」
苦痛すら喜びになった。
「貴方無しでは生きていけない・・愛しています。」
人魚姫は心の中でいつも叫んでいた。

潤んだ瞳から流れる涙は、苦痛か、喜びか、男には理解できなかったが
人魚姫の体は、喜びの反応を嫌というほど、男に見せ付けていた。
女の涙と、溢れる花園に、欲情することは確かだった。

人魚姫は不安になった。
これほどまで男に尽くしても、男はプロポーズをしてくれない。
このままでは、私は本当の人間になれない。
人魚姫は、今まで以上に男に尽くした。
男が喜ぶことは何でもした。
それが、人魚姫にとっても幸せだった。

そんなある日、疲れた体を横たえているとき、男が話し始めた。
「とうとう僕も結婚しなければいけないようだ・・・。」
人魚姫はとうとうその日が来たと喜んだ。
しかし、男の口から出た言葉は・・・

「近国の姫と結婚話が進んでいるんだよ。
 だが、僕には、忘れられない人がいるんだ。
 海で遭難したときに助けてくれた寺院の女性。
 僕の汚れた心と、死んでしまったはずの命を助けてくれた女性。
 僕はあの人と一緒になりたいのだが、尼との結婚は無理だな。」

これほどまでに愛していると言うのに・・・
なぜ男は、私にプロポーズをしてくれないのだろう・・
人魚姫は、貴方を助けたのは、私ですと言いたかった。
身分が違うかといわれるなら、私は海の王の娘です。
届かない声でも、人魚姫は必死に訴えた。
しかしそれは男には通じなかった。

姫との婚礼の旅に出る前夜、人魚姫は男に抱かれた。
「お前がいなかったら、僕は平静を保てなかっただろう。
 望んでする結婚ではない。お前を一番に愛しているよ。
 たとえ結婚してもお前は、僕のかわいいお人形でいておくれ。」
愛されている。
花嫁よりも私を愛してくれていると信じたかった。


   *   *   *  


神は再び、人魚姫に過酷な運命の扉を開いた。
花嫁になる姫は、男を助けた女性だった。
姫は、勉強のため寺院で学んでいたのだった。

男の目には、命の恩人、質素でありながら気品のある姫の虜になってしまった。
今まで、純粋でかわいいと思っていた人魚姫が、幼く感じた。
キスをねだる姿、抱きつく姿、全てが子供じみて感じた。
そのくせ、男を欲しがる体のいやらしいこと。
何をされても拒否しないその体に男は嫌悪感を感じ始めた。
皆が言うように、何処の馬の骨ともわからない女なのだ。
男の生気を吸い取る魔女のような女だと思い始める。

花嫁となる女性の気高く可憐なこと。
男を誘うような目つきをしない。
細やかな気遣い、気品と教養で輝いているではないか。

婚礼が決まり、人魚姫はもうどうすることも出来ない。
それでも、一筋の希望が捨てられなかった。
まだ、正式に結婚したわけではないわ。
私を愛してくださっているのよ・・・

男は、考えた。
妻は妻、妾は妾。
性の処理に使うのだ、僕の欲望全て、妻にはつらいだろう。
僕の人形なら、何も言わず受け入れる。
妻を愛する為にも、性人形は必要だ。それも男の甲斐性。
いつ、男を誘惑するかわからない、みだらな女は、妻には望まない。
あいつが去るまでは、僕のかわいい性人形にしよう。

婚礼ための船出の前に、男は人魚姫を抱いた。
今まで以上に激しい責めに、人魚姫は全身を震わせ、いつまでも感じていた。
どれだけ激しく責めようと、声が漏れない。
男にとって、人魚姫は最高の性人形だったのだ。
今までの行為を思い出し、男は興奮した。
庭園の隅で、階段で、テーブルで、パーティーで・・・
女は何処で責めても、声を出さず受け入れ、潤んだ瞳で訴える。
女が我慢しきれなくなり、カーテンの陰で抱き合い、男のものを口に含んだこと。
細くくびれたウエストを抱きかかえ、杭を打ち込むように激しく突いたこと。
細く切れ込んだ蜜部はいつも、無毛で湿っていた。
この女には、毛が生えないのだと知った。
永遠の少女の蜜部に男は興奮した。
人魚姫の性器は、男が知っている中で一番だった。
背後から挿入すれば、女はよろめき、その都度強い締め付けをする。
無毛の丘を叩き、たゆやかな尻を叩く。
声を発しない口でも、男の物をむさぼるように頬張る。

人魚姫は、今までに無い程激しく愛された。
全身で男の愛を受け止めていた。
苦痛ではなかった。
歓喜の涙が溢れていた。

人魚姫が吸い付くようなキスをして、男がその舌を噛むのがいつもの癖であった。
しかしその日は、舌を入れても噛んではくれなかった。
人魚姫に不安が残った。

私の愛の言葉が伝わらないと嘆いているけれど、私は愛を知っているの?
愛されていると分かっているのに何故、不安になるの?
幸せだって思っているのに、何が欲しいというの?
あれほど激しく抱いてくださるのに・・・・

      *   *   *

この先どうなってしまうのだろうと人魚姫は思った。
魔女との約束で、結婚できなかったときは、私は死んでしまうのよ。
男は、花嫁を連れて戻る。
これほどつらい旅は無かった。

波間から声がした。
「人魚姫、この剣で男を刺しなさい。
 そうしたら貴方は、人魚に戻れるのよ。
 さあ、早く男を殺しなさい。」
姉達が自慢の髪と交換に魔女から、剣を受け取ってきたのだった。


寝息を立てる男を見つめながら、人魚姫は悲しんだ。
結婚しなくても、今までのように愛してくださるのならそれでもいい。
貴方が満足してくださることを、するのが私の幸せです。

そのとき、男が寝言を言った。
「清らかな姫、・・・・」
それは、人魚姫の名前ではなかった。
花嫁の名前だった。

結婚・・・・・
人魚姫の瞳から、涙がこぼれた。

海からの姉達の声が聞こえた。
「早く剣を、刺しなさい・・。」

人魚姫には出来なかった。
絶望し、落胆しても愛した男を殺すことなど出来ない。
手にした剣を海へと投げ捨てた。

男に愛される結婚をしたかった。
永遠の命が欲しかった。
国を捨て、親を捨て、姉妹までも捨ててまで来たと言うのに
どんなに激しい悲しみも、声を出せないのは、仕方ないこと。
叫びたい思いが胸を張り裂けんばかりにしても、どうしようもなかった。
「もう、何もいらない。結婚なんか・・・・
何時も代償を求めるなんて嫌です。
片思いでも貴方を愛しています。
代償の無い愛で抱かれた私は幸せでした。」


そして人魚姫は海に身を投じた。
海の泡となり、消えてしまった。
人魚姫の声は、誰にも聞こえなかった。

朝になり、人魚姫がいないことに気がついた男は必死で探した。
しかし何処にもいなかった。
「僕のかわいいお人形・・・」
誰も男の本心など知らない。
人魚姫が男にとってどんな役割だったのか・・・・


男は、時折、人魚姫とのsexを思い出した。
時も場所も関係なく、激しく欲望のままに責め続けたsexは、まるで、猛獣の雄のようだった。
夢のように過ごした月日が懐かしかった。その思い出も、もう遠い昔の夢の話。


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