なにげな言葉

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迷宮・緑柱玉の世界の独り言

緑柱玉の大人の童話 NO9 ラプンツェル

2021-01-30 | 大人の童話
ある夫婦は、長いこと子供が欲しいと願ってた。
しかし、なかなか子供が出来ませんでした。
数年がたち、やっと、子供を授かった。
しかし、妻は、日に日に弱っていくのを、如何する事も出来ずただ、見守るしかできなかった。
夫は、何とかしたいと、必死になり妻に尋ねた。
「どうしたんだ、このままでは、子供は愚か、お前まで弱って死んでしまうのではないか?」
すると、妻は、
「窓から見えるラプンツェルが食べたい。 あれを食べれば、私は元気になれるかも知れない。」
そう言う、妻のために、夫は家の裏の畑を眺めながら、思った。

あれほど沢山あるのだ少しならいいだろう。
実は、畑いっぱいのラプンツェルは、夫婦のものではなかった。
他人の畑のものだとわかっていながら、妻と、生まれる子のためにその畑から、いただいてしまった。
妻はそれを美味しそうに食べた。
そして次の日も妻は、ラプンツェルを食べたいと言った。
再び夫は畑で、ラプンツェルを取っていると、畑の主人であるゴルデおばさんに見つかってしまった。
夫は、ゴルデおばさんに必死に妻が食べたいということを説明した。
実はこの畑、ゴルデおばさんの所有。
人々が、ゴルデおばさんを嫌っていたことは知っていた。
しかし、ゴルデおばさんは、夫の必死の願いを聞き入れてくれた。
「立派な子供が生まれるまで、好きなだけお食べ。
 その代わり、女の子が生まれたら、その子を私にくれると約束してくれるなら、いいよ。」
夫は、ゴルデおばさんの言葉を疑ったが、良いだろうという気持ちで返事した。
子供をくれだなんて冗談さ、それに生まれてくるまでには、まだ日がある。大丈夫さ。

ラプンツェルを食べる妻は、見る見る元気になっていった。
月日は満ち、妻は、可愛い女の子を産んだ。
ゴルデおばさんは、夫の顔を見て、
「約束だよ・・覚えてるね。」
「もうしばらく待ってくれ。子供の調子が悪い。」
言葉を濁すが、夫は、わが子を抱くことが、嬉しくて仕方が無かった。
手放したくなど無い。
内心「冗談じゃない!」と思っていた。

妻は、産後の調子が悪く、だんだん弱っていくではないか。
夫は、妻と、子供の両方の面倒を見ることになってしまった。
何をしても、うまく運ばない。
泣く子を抱きながら、泣きたいのは俺だ・・・
そして、数日したある日・・・
妻は、子供を残し、亡くなってしまった。

夫は、必死に頑張ったが、幼い子供を男一人ではどうすることも出来ない。
そして、子供を、ゴルデおばさんに渡してしまった。
「大丈夫さ、隣にいるんだ。俺が父親だということに代わりは無い。」
男の安易さであった。

ゴルデおばさんは、幼い子供に、ラプンツェルと名づけた。
ラプンツェルは、何処の誰よりも可愛く、美しい娘に育っていった。
ゴルデおばさんは、ラプンツェルを12歳の誕生日に、何を思ったのか、高い塔に閉じ込めてしまいました。

ゴルデおばさんは、変わり者として有名だった。
今ではおばさんといわれるが、おばさんにだって若い頃はあった。
若き日のゴルデは恋をした。
毎日が輝き、言葉は鳥のさえずりのように美しかった。
全てが輝いていた。
ゴルデの未来は、薔薇色に輝いていた。
結婚も決まり、幸せを絵に描いたような毎日を過ごしていた。
婚礼の日、教会で、ゴルデは真っ白なウエディングドレスを身にまとい、式の始まるのを待っていた。
しかし、新郎である男は、教会に姿を見せなかった。
ゴルデは、彼に何かあったのではないかと、彼の家に使いを出した。
戻った者から信じられない言葉を聞いた。
「誰もいない・・」
彼の家には、誰もいなかったのだ。
新居になるはずの家にも行って見たが、家財道具が、一つも残っていなかった。
それどころか、その家は、彼の家ではなかったことまで、分かった。
そう、ゴルデは、結婚詐欺にあってしまった。
ゴルデの全てを持って行ってしまった。
一人娘の婚礼に、無理をして持参金を用意した両親は、全てを失ってしまった。
ゴルデの心までその男は持って行ってしまった。
ゴルデは、幾日も泣いて過ごした。一生分の涙を流しきってしまった。
ゴルデが、代わってしまったのはそれからだった。

ゴルデおばさんは、ラプンツェルを、本当に大切に育てた。
この世で一番可愛く美しいと言って育てた。
事実、ラプンツェルの肌は、透けるように白く、くびれた腰、豊満な胸、濡れた唇、そして、吸い込まれそうな濡れた瞳。
何より、ゴルデは、ラプンツェルに女の喜びである快感を
幼少より教え込んでいった。
幼子の快感に喜ぶ表情を見て、ゴルデは嬉しくなった。
快感というのは、麻薬だ。
ラプンツェルは、自分でも快感を求めるようになった。
ゴルデは、自分でする事を禁じた。
その代わり、毎日毎晩、ラプンツェルが欲しかる快楽を与えた。
そして、快楽の与え方も教えた。
その快感を経験した男の愚かさもと野蛮さを懇々と言い聞かせた。
そして、幼子が女になったその日、ラプンツェを、塔に閉じ込めた。

ラプンツェルは、塔の上で、鳥のさえずりのように毎日歌った。
森の中で、そのような声を聞く者は、限られる。
猟師、きこり、旅人・・・
男達は、風に乗って聞こえる声に引かれ、塔の下まで来てしまう。
ラプンツェルは、塔の上から、長く伸びた髪の毛を垂らし、男どもを引き上げた。
男にとって、森の中で、女が誘うとは思ってもいない。
ラプンツェルの肉体をむさぼった。
若い少女の肉体。
己の前に跪き、可愛いピンクの唇が、自分のものを咥えている光景など、想像できただろうか。
甘い香りと、柔らかな肌。
くびれた腰に手をかけて、男の力を誇示した。
ラプンツェルは、熱い吐息で男の動きに応えた。

ラプンツェルの純粋さは、男達が忘れた心を呼び起こした。
「君の前にいると、ほっとする。君は女神だ。」
ラプンツェルの仕草に、男は全てを吸い取られる思いだった。
そして、この上ない幸福感を感じた。
ラプンツェルの全てが、男を惑わせた。

夢のようなひと時を過ぎ、足元もおぼつかない男達は、森の中に消えていった。
そして、再び、鳥の囀りの様な歌声に男たちは引き寄せられて、塔に上った。
そして、その日の事を
食事を持ってきたゴルデおばさんに男の話をする。

とても若い娘のする話とは思えない。
まるで街中で男に体を売って稼ぐ娼婦そのものだった。
ゴルデは、こんな小娘に、男達が良いようにされているのがおかしくて仕方なかった。

ラプンツェルの体は、ゴルデによって作られた最高傑作。
女のゴルデの指は、ラプンツェルの体の隅々まで知り尽くし、最高の反応を示すように、仕上げられていた。
男を喜ばせる以上に、ラプンツェルの体が欲する快感を、ゴルデは、教え込んでいた。
快楽と幸せは、途切れると不安になる。
不安に成らない為におねだりする術も教えた。
その快感が、よりラプンツェルを美しくし、男を誘うのだった。
ゴルデは、自分の作り上げた作品に満足して、ラプンツェルを見つめていた。


ある日訪れた男は、今までの男とは違っていた。
いつもの男なら、何を置いても、ラプンツェルの肉体を欲しがった。
しかし、この男は、ラプンツェルの体を抱こうとはしなかった。
いつまでもいつまでも話続けた。
ラプンツェルも、男を誘わなかった。
うぶな男は、そんなラプンツェルを可愛いと思った。
男は、この塔以外知らないというラプンツェルの言葉を信じた。
ラプンツェルも、男がこれほど可愛いと思ったことはなかった。
二人は、夢のような生活観を語り合った。
お互いの理想の姿を思い描くうち、二人は惹かれていくようになった。
男は、毎日塔に通ってくるようになった。

その男のことは、ゴルデおばさんには語っていなかった。
それがとうとう、ばれてしまった。
「お前は、私に嘘をつくのかい? 
それとも、新しい遊びかい?」
ラプンツェルは、答えなかった。
「お前は、この世の男どもを皆破滅させれば良いんだよ。
 その美しさ、その肉体で男を惑わせばいいんだよ。
男は愚かだね。それをお前だって、嫌というほど知っているだろ?」
男を愛し始めていたラプンツェルは、ゴルデおばさんの思いとは、違うことを考え始めていた。
そんなラプンツェルを見て、ゴルデおばさんは怒り出した。
「お前には、何でも与えたじゃないか。
 お前のためなら、なんだってそろえたじゃないか!」
「おばさんは、私を復習のために育てたんでしょ?
 私は今まで、そんなおばさんの命令に逆らわずに来たのよ。
 男を男と思わない心になってしまったと嘆いたわよ。
 でも、でも、私だって、出来るのよ。私、恋したの!」
「恋をしただって?」
「誰からも愛されない孤独って、怖いのよ。
 闇が迫ってくるように、音もなく迫ってくるの。
 外の世界を知らない私は、男が話してくれるのを楽しみにしていたのよ。
それが楽しみだったの。男は、私の体しか見ていない事だって、わかっていたわよ。
それでも良かったの。 男が去った部屋は、音もないの。
 気が付いたら、自分がそこにいることさえ嘘じゃないかって思えるぐらい静かなのよ。」
「ラプンツェル、泣かないでおくれ。私はお前を、愛しているじゃないか。」
「嘘よ! おばさんは、私を愛してなどいないわ。
 私は、おばさんの復習の道具よ。
 おばさんは、復習で、孤独など感じないでしょ。
 私は、何もないのよ。 守るものって何?
生きる為の大切なものって何?
 おばさんの命令で、男に抱かれるだけの私よ。
 私の幸せの為に、抱かれるんじゃないわ。
おばさんの復習の為でしょ?
 この体だって、道具よ。
男なんか、私の上を通り過ぎる風みたいなものよ。
愛され、抱かれている訳じゃないんですもの、寂しいだけよ。」

これほど、激情したラプンツェルを見たのは、初めてだった。
ゴルデおばさんもそれ以上何も言わなかった。
男に関しても、それ以上言わなかった。

それからしばらくして、ラプンツェルは
「ゴルデおばさん、最近服がきついの。」
ゴルデおばさんは、最近、ラプンツェルに対して、こまごまといろいろ言わなかったことを思い返しながら、はっとした。
「ラプンツェル、もしかして、お前は・・・・・」
「え?」
「お前・・・あれほど言ったじゃないか!注意していたかい?」
「え?」
「お前、妊娠しているね。」
おばさんの言葉を聞き、ラプンツェルは、妊娠に気が付いた。
「ラプンツェル、子供は始末しな!」
「嫌よ・・・・産むわ。」
「馬鹿を言うでない。子供を育てることなんかお前にできるわけが無いだろ!
 この世に、又不幸な子を増やすのかい?」
「不幸な子?また?そんな・・・・」

ゴルデおばさんは、怒り、ラプンツェルの金色に輝く髪を、切り取ってしまった。
そして、ラプンツェルを森の中に追いやってしまった。
そんなことを知らない男は、その夜も、塔の下でラプンツェルを呼んだ。
「ラプンツェル!」
金色の髪がたれ、塔に上ったそこにいたのが、ゴルデおばさんだった。
「ラプンツェルは、もうここにはいないよ。
 男にだまされ、醜い心を剥き出しにして、育てた私を捨てたんだよ。
 私より、男を選んだんだよ。
 やさしさのかけらも無い。醜い女になってしまった。情けないことだよ。」
ゴルデは、ありったけのラプンツェルに対する怒りを、男に語った。
男は、ラプンツェルがそんな女だったのかと・・絶望的になり、塔の上から飛び降りてしまった。

塔の上では、ゴルデおばさんの高笑いが聞こえた。

落ちた男は、命を取り留めたが、両目を失った。
それから、森を彷徨う民となる。
ラプンツェルは、森で、双子を産み、必死に生きていた。
再び男とラプンツェルは、巡り合う事となった。
互いに抱き合い涙した。
その涙は、男の目を開けた。

お互いの姿を見たとき、自分の変わりように驚いた。
あの美しかったラプンツェルは、生活に疲れきっていた。
走り回る子供は、僕の子供かと思った反面誰の子だと疑いも持った。
ゴルデから聞いた、ラプンツェルの真の姿が本当ならば、怖い女だ。
そんな疑いは、ラプンツェルを見る目を変えた。

ラプンツェルもまた、みすぼらしくなった男の姿に夢も消えた。
やさしかった男はそこにはいなかった。
生きているだけで必死、昔の面影はなかった。
この男が私を妊娠させたのよ。
そのおかげで、楽な生活を失い。こんな山の中で暮らしていかなければいけないのよ
私の人生を壊した男。
ラプンツェルの心には、男を憎む心が生まれていた。
ゴルデおばさんが言っていた事が自分の身に迫ってきていることをひしひしと感じていた。

互いに憎む心があっても他に頼れるものがない
質素であっても慎ましい生活が出来るようになった。
傍から見たら幸せかもしれない
でも二人の心に、お互いを思う心は消えていた。

そんなある日、ラプンツェルは、ゴルデおばさんを訪ねた。
ゴルデおばさんは、
「男が女の幸せを奪うのだよ。やっと分かったみたいだね。
 おろかな男に惚れる女はもっと愚かだよ。賢い女に戻るんだよ。」
「私が馬鹿だったわ・・・でも、もう昔には戻れない。」
「そんな事はないよ。又、元の生活の戻してあげるよ。」
髪を整え、綺麗な洋服に着替え、森に戻った。

森に帰ったラプンツェルは、恋した昔を思い出し穏やかになった。
みすぼらしくなった男は、小ぎれいになり、昔を思い出し、二人は、愛し合った。
男も昔を思い出し胸に顔をうずめ、しっとり潤んだ瞳を見つめ、ラプンツェルを抱いた。
体中が、求めあった。
時を越え、思いは、一途だったあの頃のまま、欲するままに、男と快感を求めた。
あの頃は・・・・嘘じゃなかった。私だって、好きだった。
あなたと一緒に居たかった。

寝息を立て眠り始めた男を見ながら、ベットを抜け出した。
窓の側に座り、外を眺めた。
そして、ドアを開け入って来たのは、ゴルデおばさんだった。
「終わったかい?」
「ええ。これで、全て終わりました。」
「最後に楽しませてあげたんだね。これでお前の恋は終わりだよ。いいね?」
ラプンツェルは、うなずいた。
「一人の男を愛する気持ちなど煙のようなものさ。火が消えれば、煙は出ない。
 お前には、可愛い2人の子がいるだろ。やっと手に入れたね。守るものだよ。」


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