読書備忘録

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中山七里著「特殊清掃人」

2023-09-23 | な行
特殊清掃業者〈エンドクリーナー〉を舞台にしたヒューマンミステリー。「誰もいなくなった部屋にこそ、住んでいた者の嘘のない生きざまが現れる」。特殊清掃業会社エンドクリーナーには、日々、様々な依頼が押し寄せる。会社は元刑事の社長の五百旗頭亘(いおきべわたる)、新人の秋廣香澄、一年先輩の白井。彼らの仕事をとおして、死者が抱えていた様々な事情が浮かび上がる展開。気持ちの悪い舞台だしテーマもと二の足踏んだが登場人物たちの人間性に惹き付けられてあっ~という間に読了。死体が醸し出す悪臭、腐乱、部屋の床等に染み渡る体液による破損等の、こうした事実を認識すればするほど、孤独死などとても出来ないと思ったし、早く発見できるように一考しないと思った。自分が孤独死するとは、死後の処理を清掃業者が行うということだ。誰にも迷惑を掛けない死など難しい。部屋の清掃と、その後の形見分けの話だが、孤独死の発見が遅れるとなかなかきつい現場だ。そして死というものは、その人の過去の人生を雄弁に語るものなんだなぁと思う。汚部屋に唖然。引きこもりになった原因に立腹・・・「祈りと呪い」。風呂場での独居老人の孤独死・人間シチューにはびっくり・・・「腐蝕と還元」。ミュージシャンになる夢を追い続けた生活困窮者の熱中病死・・・「絶望と希望」。大金持ちの遺産をめぐる話。争いの火種となった遺言書にはそんな意味が・・・「正の遺産と負の遺産」。四つの連作。「負の部分はおいそれとは解消出来るものでない。まずは耐性をつけることだが、その第一段階は客観視から始まる。客観視すれば自虐とブラックジョークが口をついて出てくる。後は、覚悟と向上心が備われば心が剛くなる。」(P168)特殊清掃人も是非シリーズ化してほしい。
2022年11月朝日新聞出版刊

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