読書備忘録

私が読んだ本等の日々の
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小杉健治著「裁判員ーもうひとつの評議」

2010-11-02 | か行
母娘殺人事件の裁判員に輸入雑貨の販売の仕事する堀川恭平は選ばれた。
被告人は、幼少のころに負った火傷の痕のためコンプレックスをもち人とうまく付き合っていけない人間だったが、殺害された女、並河留美子と出会い系サイトで知り合いやがて意気投合して付き合うことになる。
しかし女からのお金の無心が続きそれがもとでトラブルになり母娘の住む家での話し合い中の途中に憤慨して殺害したという嫌疑。
殺人事件の裁判員に選ばれた六名の男女と三人の裁判官との裁判員裁判で、被告人は自白を強要されたと無罪を主張するも、自白の事実、決定的証拠はないが状況証拠で8割がたクロとなり無罪3対有罪6の評議の結果、死刑判決が下される。
被告人は、即刻控訴したが、拘置所内で血で『むじつ』と残し自殺を図る。
一命は取り留めたものの、その衝撃は裁判員にとっては計り知れないものとなった。・・・
『死刑』・・・この判決は、本当に正しかったのか? 死刑判決にかかわった裁判員たちの葛藤や苦悩を描いた。リアルな司法ミステリーです。
「所詮裁判員裁判は白か黒かを決めるゲームだ。人選によって無罪にもなるし有罪にもなる。結局裁判員の人選によって被告人の運命が変わる。運・不運の問題だ。」(185P)
「有罪に賛成していないことを公にしたい。死刑判決に与しなかったことを知ってもらいたい。だが、それをすれば守秘義務違反に該当するかもしれない。」(189P)
「公判前整理手続に不備が・・・もっと慎重に事件の精査をされていたら、新たな事実が見つかったはずです。」(251P)
裁判のなかで冤罪の可能性があり、裁判員たち「警察の捜査の不備を、裁判員が評議の時点で気づいても、審理が終わった後では、もうどうにもできない。
・・・など裁判員制度にはこんな怖い要素が含まれているのかと不安になりました。
その不安と怖さとは、もともと市民感覚を判決に反映しようという試みが、その裁判員本人を苦悩の生活へと追いやる可能性があるということ。
自分がもし選ばれたらと興味を持ちつつ引き込まれるように読みました。
読みやすかったです。
主人公が自らも離婚問題に悩みつつこの裁判事件に正面から取り組み人生の希望を見出す展開に好感を持ちました。
同じような裁判員裁判を扱あった夏樹静子著「てのひらのメモ」とは別の視点で面白かった。
2010年4月NHK出版刊



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