転落はほんの少しのきっかけで起きた。主人公の山崎遼一41才は、大手証券会社をクビになり、妻・美奈子に逃げられ、借金を重ねて、住む場所を放棄せざるを得ず、ネットカフェ難民にあげくに携帯・財布を持ち逃げされ遂にホームレスになってしまう。そのときの全財産は、3円。
段ボールハウスの設置場所を求めて辿り着いた公園で出会ったのは、怪しい辻占い師錦織龍斎と若い美形のホームレス仲村だった。やがて寒さと飢えと人々の侮蔑の目中で閃く、「俺は宗教を興す」。
龍斎と出掛けた浦和競馬場で大穴を当てると、それを元手に仲村を教祖に祭り上げて、龍斎と3人で新興宗教「大地の会」を立ち上げ自分を路上に捨てた世間に逆襲を誓うのだった。
「大地の会」の事務局長・木島礼次と名を変えて二人を裏で操り、徐々に会員数を増やしていく。作りだされた虚像の上に、芸能人の広告塔も出来会員数も飛躍的に増えたとき、創設者でありながら自分では制御しきれなくなった組織「大地の会」。
人間の底知れぬ強さとかぎりない脆さ。多くを手に入れ、ふと振り返ると、そこにあるのは空虚な祝祭と、不協和音だったとは。人の心を惹きつけ、操り、そして壮大な賭けが迎えた結末は予想通り。
大きくなりすぎて制御不能に、ある日突然、他の組織に乗っ取られたり、組織から追い出されたり、ビジネス界ではよくあること。同じ新興宗教を扱った篠田節子の『仮想儀礼』とまた違った面白さした。
驚愕のリアリティで描かれるホームレスの極貧の日々と宗教創設の様子、こうやって新興宗教が出来るんだ、そしてやがて訪れる悲劇、登場人物のキャラも明確で、長編ながら難なく読めました。
仲村のようにやがて自分が教祖だと信じ込んでいく様が怖かった。
2010年11月講談社刊
段ボールハウスの設置場所を求めて辿り着いた公園で出会ったのは、怪しい辻占い師錦織龍斎と若い美形のホームレス仲村だった。やがて寒さと飢えと人々の侮蔑の目中で閃く、「俺は宗教を興す」。
龍斎と出掛けた浦和競馬場で大穴を当てると、それを元手に仲村を教祖に祭り上げて、龍斎と3人で新興宗教「大地の会」を立ち上げ自分を路上に捨てた世間に逆襲を誓うのだった。
「大地の会」の事務局長・木島礼次と名を変えて二人を裏で操り、徐々に会員数を増やしていく。作りだされた虚像の上に、芸能人の広告塔も出来会員数も飛躍的に増えたとき、創設者でありながら自分では制御しきれなくなった組織「大地の会」。
人間の底知れぬ強さとかぎりない脆さ。多くを手に入れ、ふと振り返ると、そこにあるのは空虚な祝祭と、不協和音だったとは。人の心を惹きつけ、操り、そして壮大な賭けが迎えた結末は予想通り。
大きくなりすぎて制御不能に、ある日突然、他の組織に乗っ取られたり、組織から追い出されたり、ビジネス界ではよくあること。同じ新興宗教を扱った篠田節子の『仮想儀礼』とまた違った面白さした。
驚愕のリアリティで描かれるホームレスの極貧の日々と宗教創設の様子、こうやって新興宗教が出来るんだ、そしてやがて訪れる悲劇、登場人物のキャラも明確で、長編ながら難なく読めました。
仲村のようにやがて自分が教祖だと信じ込んでいく様が怖かった。
2010年11月講談社刊
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