佐伯章子は成績が良く自立した考えを持つ小学4年生。やさしくて思いやりのあるパパと美人だけど時々心をなくして人形になってしまうママとの3人暮らし。ところが、4年生の最後の春、大好きなパパが死ぬ。そんな時、『こんにちは。章子。わたしは20年後のあなたです』ある日、突然届いた一通の手紙。送り主は未来の自分だという。その手紙に励まされた十歳の章子は「大人の章子へ」に向けての返事という形で日々の日記を書き始める。意地悪なクラスメート、無気力だったママの変化、担任の先生の言葉・・・辛い出来事があっても、「未来からの手紙」に記されていた『あなたの未来は、希望に満ちた、温かいもの』という言葉を支えに頑張ってきた章子。 しかし、中学に入った彼女を待っていたのは、到底この先に幸せがあるとは思えない苛めだった。相次ぐ災厄が、章子の心を冒していく。私は幸せになるんじゃなかったのか、という悲鳴が聞こえる。DV、父娘相姦、親殺し、自殺、AV出演強要などのネガティブな身勝手な大人の犠牲を強いられながら生きなければならない子供たち。子供たちが生きていくために選択するしかなかった出来事はあまりにも残酷で悲しすぎます。人と人の関係で、悪意や歪みはその関係の中で生まれ、関係を蝕んでいくその中で人はなぜ壊れ、何を求めるのか、終盤は、明と暗、善と悪とが反転し、一気に湊かなえワールドが展開されて面白かった。二人称小説。
2018年5月双葉社刊
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