読書備忘録

私が読んだ本等の日々の
忘れない為の備忘録です

西村健著「激震」

2021-06-27 | な行
雑誌著者自身が雑誌記者として奔走した経験をもとにした長編小説。1995年、1月阪神淡路大震災、地下鉄サリン事件、オウムが地下鉄にサリンをまき多数の死傷者が出た。それに続いて警察庁長官が狙撃され,都庁に届いた小包が爆発し職員重症,オウム信者と名乗る者のハイジャック、八王子のスーパーでの3名の女性が虐殺。沖縄では米兵が少女を強姦する事件,と未曾有の災厄が相次いだ一年、当時の首相は村山社会党政権。戦後五十年かけてこの国が築き上げたあらゆる秩序が崩れ去っていく。・・・主人公ヴィジュアル月刊誌「Sight」記者の古毛は、年明け早々に阪神地方を襲った大地震に衝撃を受け、被災地に駆けつけたが、その凄まじい惨状に言葉を失う。神戸では火災被害の激しかった長田地区の焼け跡に佇む若い女と遭遇。夕方の光を背にこちらを振り向いたときの眼はかつて戦場で出会った少年兵とそっくりだった。果たして彼女は何者なのか? この女性を最後まで追い続ける古毛。『「何やってんだろうな、俺達」加納が自嘲ぎみに呟いた。(略)「世間の耳目を引く話題に引っ張り回されて、取材取材に駆け回る。それで終わってみりゃぁ、前に何やってたかも記憶が薄れてる始末だ。(略)世間、てぇお釈迦様の掌で踊らされてる、孫悟空かよ」「元々、報道なんてそんなものだったのかも知れませんけども」古毛は言った。「特におかしくなって来たのが、あのバブルの辺りからだったような気はします」「あれで、日本が溜め込んで来たあれこれの矛盾が一気に噴き出して来た感じだな。戦後、営々と築いて来たこの国の神話が次々と崩壊してる、ってところかな」』(本文より)。読んでいると「1995年の世界」に引き込まれて連れ戻される。そして年の終盤には<ウィンドウズ95>が登場してもいる。「雑誌記者が取材中に見掛けた人物に纏わる事件」という“ミステリー”を軸とし、「揺れた“戦後50年”」を、「その時点から四半世紀」という中で振り返るかのような作品になっている。26年前1995年自分は何をやっていたのかを思い出しながら読んだ。謎の女を追うミステリーとしても面白かった。
2021年2月 講談社刊
写真は夜叉ケ池に咲いていたニッコウキスゲとノアザミ)

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