読書備忘録

私が読んだ本等の日々の
忘れない為の備忘録です

幸田 真音著「舶来屋」

2011-06-11 | 幸田真音
エルメス、グッチをはじめ数々の高級品を初めて日本に紹介した「サンモトヤマ」創業者・茂登山長市郎。
戦後の闇市から出発し日本にブランド・ビジネスを確立した男、昭和の商人の半生記。主人公「茂里谷」が若い二人に語り聞かせながらストーリーが進む。
戦時下の兵隊で行った天津で出会った、西洋の一流品。
その圧倒的な輝きは、東京の焼け野原に戻っても長市郎の胸から去らなかった。
実話に基づいているのでその半生が波乱万丈で魅力的で面白くて飽きない。
偶然蠍に噛まれてこん睡状態に陥ったため全滅した部隊から離れて命拾いした太平洋戦争での経験、闇屋として大儲けしていく過程、何度押しかけてびくともしなかったグッチとの取引が始った瞬間、闇ドルでの大量の買付に目をつけられ、税関で逮捕されたこと、ショップ・イン・ショップの発想で商売、やがてメーカーの直接販売でグッチが、エルメスが返還したこと。
ブランドビジネスを育て上げるまでの痛快で心にしみる一代記です。
著者らしく戦後の経済史がやさしく学べるのもうれしい。
『失敗というのは、こっちがもう無理だとあきらめたときに本当の失敗になるんだよ。・・・こっちがあきらめてしまわなかったら、失敗にはならない。・・・途中ということだ。』(P248)
『人間、一度どん底を味わうと、本当に大切なものが見えてくる。周囲の人の懐の深さも、毎日の暮らしのありがたさもね。その気になれば案外我慢強いこともだ。反省はいくらでもしたらいい。失敗から学ぶことは、成功から学ぶことよりずっと多いからね。・・・だけど、公開はしなくてもいい。後悔なんか、してもなんにも生まないから』(P290)

2009年7月 新潮社刊

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