読書備忘録

私が読んだ本等の日々の
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福田 和代著「 オーディンの鴉」

2011-06-09 | は行
題名の「オーディンの鴉」とは、肩に世界中を飛び回って情報を集めてくる二羽の鴉を止まらせいるので全ての情報を得ることができる北欧神話の最高神の名。
近々の閣僚入りを確実視されていた国会議員・矢島誠一は、東京地検が彼の家宅捜索を行う当日の朝、謎の自殺を遂げる。
真相を探る特捜部の湯浅雅彦検事と安見検事は、自殺の数日前から矢島の個人情報が大量にネットに流れ、矢島自身を誹謗する写真や動画、そして、決して他人が知り得るはずのない、詳細な行動の記録が氾濫していた事実に辿り着く。
匿名の人間たちによる底知れぬ悪意に不安を覚える二人だったが、やがて彼らにも差出人不明の封筒が届き、犯人による執拗な脅迫が始まる。
ある日気がつくと自分の個人情報がネットに氾濫していたらという、インターネット社会の“闇” を描いたネットサスペンス。
防犯カメラに写らず生活することは難しい現代社会、ネット商店などのレコメンドサービスが悪用されたり、サイトからの個人情報の流出、その情報が無限に増殖していくネット社会の可能性など考えたら充分有りうる話に完全結末に至らない不十分さはあるが面白く読めた。
『メール、インターネットの閲覧履歴、クレジット・カードの利用履歴、ネットショッピングの登録内容、ICカード・・・ひとつひとつ別々に見ると、それほどたいした情報ではないように見えても、全て集まると怖いくらい。』

『誰もが、・・・可能性を秘めている・・・過ぎた好奇心、心の底からじわりと滲みだす、ささやかな悪意。それが、誰かをオーディンの鴉にしてしまう。』(P344)

2010年4月 朝日新聞出版刊

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