九つの短篇集。野良犬に囲まれた夏の日の恐怖・・・「真夏の犬」、転校してきた混血の美少女をめぐる争い・・・「暑い道」、アル中の母と住んだ古いアパート・・・「階段」、奇妙な香具師が売っていた粉薬・・・「力道山の弟」、同級生の女の子の危険なささやき・・・「チョコレートを盗め」他ホットのコーラを注文され右往左往する喫茶店のマスターと客達の話・・・「ホット・コーラ」「駅」「香炉」「赤ん坊はいつ来るか」等々。少年や青年の目線であのころの少年の日の悲しみ、青春の日の心の痛み、歳月のへだたりを突き抜けてよみがえる記憶を鮮烈に刻みつけ、苦悩と慰めの交錯する人生への深い思いを浮かびあがらせた短編。多様な過去のイメージを交錯させ、見事な描写と会話ちょツとした小道具と場所を象徴的に描いてミステリー風に臭いが漂ってくるような強烈な描写の奥深い個性的な物語ばかりでした。
1993年4月文春文庫刊
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