ラグビーワールドカップ日本開催で馴染みのスポーツになりつつあるラグビーを絡めた警察ミステリー小説。日兼コンサルティング会社という男の社員が死体で発見された。その社では一人の女性社員が行方不明となっている。ほぼ時を同じくして同社の海外贈賄事件を内偵していた吉岡刑事が姿を消していた。実は所轄署の刑事課長原と同社今川社長とは、かつて過去に内部告発者として警察に協力した当時の刑事という形の信頼関係を築いていた。しかも二人には共に元ラガーマンとしてラグビーという固い絆もあった。しかし今、部下の失踪について調べる原刑事課長は署長への道を探り、今川社長は本社役員の座を狙っていた。殺人事件と失踪事件を追ううちに次第に事件の本質へと迫る展開。
企業が昔から慣例的に行ってきた贈賄の事実を知った今川は自己の保身と正義感による会社の建て直しかで揺れる。二人のせめぎあいが続くなか、二人にとっての正義とはに悩む。男たちそれぞれに決断の刻が迫る。謎解きはある程度予想が付くので立場の違う二人の正義に対する考え方と決断が見もの。『ラグビーは最も危険で乱暴なスポーツであるが故に、選手は紳士的でなければならない。・・・常に自らの「誇り」と相手に対する「敬意」を持っている必要がある』(P345)
2019年7月東京創元社刊
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