2011/11/20 日経新聞に住友化学が高分子型有機ELの量産する。と報道した。「液晶パネルより高精細で消費電力が少ないなどの利点がある有機EL」とあるが、本当か?検証してみよう。
まず、住友化学の材料は発光材料であり、画面の解像度と直接関係ない。
画面の解像度を決めるのは印刷で言う所の網点、つまり画素サイズだ。デジカメの画素数も全く同じ。荒いとブロックになる。アクティブマトリクス型表示素子の場合、画素のサイズは配線と駆動素子の専有面積となる(パッシブマトリクスは今回割愛する)。
有機EL(OLED)を使ったGALAXY Tab 7.7が196ppi。iPadは132ppiだ。
スペックを比較するとGALAXY Tab 7.7が高精細!だから有機ELは高精細なのだと思うだろうが、それは違う。
既に有機ELがそれほど高精細ではない事は此処が示している。画面の一部コピーを使わせてもらおう。

右側の"12 Sub-pixels"だが、これは液晶でも十分可能な技術である。ただここで紹介されているサブピクセルってのは実力の無駄遣いって感じがしないでも無い。
液晶パネルだとどうなるか?
垂直配向のIS03で実現されている300ppi超(326ppi)が
iPhone 4もIPSで実現できている。
画面サイズが大きくなると液晶は高精細にできないのでは?というのは大きな勘違い。
iPad 3では超高解像度液晶を採用する。
さらに東芝モバイルディスプレィとその仲間達はここまで開発している。

有機ELでも出来るのだが、有機ELは液晶と違ってスイッチのTFTと電流を流す駆動用TFTが必要だ。
TFTってのは薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor)だ。
液晶のTFT:詳細はこちらを見て確認してください。


スイッチのTFTのみ。
有機ELのTFT:詳細はこちらを見て確認してください。


駆動用のTFTが追加されている。
解像度/高精細を基本に考えて、作りにくさを無視すれば平面に2個並べるのではなく、絶縁膜を介して2階建てにする方法もある。なおこの二階建て構造は液晶でも使われている。素子や配線の上に樹脂を塗ってその上に透明電極を形成すれば見かけ上素子面積を拡大できる。
Wkipediaにあるように有機ELならトップエミッションと、積層発光があり得る。
積層発光について述べよう。
RGBを横分割(面積分割)していることは前述の写真でも判るだろう。だが、これがRGB積層だと1画素の面積が3倍になる。画期的な技術に思えるが実現していないのには訳がある。
ガラス(というか基板)の上に1画素に6個のTFTを設け、駆動用TFTから出てきた配線を各RGB層に分配するとできそうであるが、そう簡単ではない。難点を述べよう。
なお、発光系の場合、積層にする必要は殆どない。超高解像度にするために必要な技術の様に思えるが、黒背景に「輝点」で発光するので、発光効率が上がれば面積で光量を稼ぐ必要もない。
あと、有機ELの場合、各発光層の厚みを制御して発光層内で光が捕らわれて膜厚方向の干渉で消えてしまわない用にする事も必要な技術であるが、積層するとその効果が失せるだろう。
まず、住友化学の材料は発光材料であり、画面の解像度と直接関係ない。
画面の解像度を決めるのは印刷で言う所の網点、つまり画素サイズだ。デジカメの画素数も全く同じ。荒いとブロックになる。アクティブマトリクス型表示素子の場合、画素のサイズは配線と駆動素子の専有面積となる(パッシブマトリクスは今回割愛する)。
有機EL(OLED)を使ったGALAXY Tab 7.7が196ppi。iPadは132ppiだ。
スペックを比較するとGALAXY Tab 7.7が高精細!だから有機ELは高精細なのだと思うだろうが、それは違う。
既に有機ELがそれほど高精細ではない事は此処が示している。画面の一部コピーを使わせてもらおう。

右側の"12 Sub-pixels"だが、これは液晶でも十分可能な技術である。ただここで紹介されているサブピクセルってのは実力の無駄遣いって感じがしないでも無い。
液晶パネルだとどうなるか?
垂直配向のIS03で実現されている300ppi超(326ppi)が
iPhone 4もIPSで実現できている。
画面サイズが大きくなると液晶は高精細にできないのでは?というのは大きな勘違い。
iPad 3では超高解像度液晶を採用する。
さらに東芝モバイルディスプレィとその仲間達はここまで開発している。

有機ELでも出来るのだが、有機ELは液晶と違ってスイッチのTFTと電流を流す駆動用TFTが必要だ。
TFTってのは薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor)だ。
液晶のTFT:詳細はこちらを見て確認してください。


スイッチのTFTのみ。
有機ELのTFT:詳細はこちらを見て確認してください。


駆動用のTFTが追加されている。
解像度/高精細を基本に考えて、作りにくさを無視すれば平面に2個並べるのではなく、絶縁膜を介して2階建てにする方法もある。なおこの二階建て構造は液晶でも使われている。素子や配線の上に樹脂を塗ってその上に透明電極を形成すれば見かけ上素子面積を拡大できる。
Wkipediaにあるように有機ELならトップエミッションと、積層発光があり得る。
トップエミッションは発光面積の拡張であり、解像度には直接寄与しない。
積層発光は原理的に解像度が3倍程度になる。
積層発光は原理的に解像度が3倍程度になる。
積層発光について述べよう。
RGBを横分割(面積分割)していることは前述の写真でも判るだろう。だが、これがRGB積層だと1画素の面積が3倍になる。画期的な技術に思えるが実現していないのには訳がある。
ガラス(というか基板)の上に1画素に6個のTFTを設け、駆動用TFTから出てきた配線を各RGB層に分配するとできそうであるが、そう簡単ではない。難点を述べよう。
1) 透明電極で画素を挟持すること。
2) 短波長の発光が長波長側発光層で吸収されない事。
3)そういう構造を作る事が難しい。
という訳で、将来的には積層構造に寄って3倍まで高精細できるが(RGB+Yでも3倍)、これを実現するのは非常に困難だと思われる。ま、10年以上かかるでしょうね。
有機ELは電流を発光層に注入する必要がある。つまり電子を絶縁体である有機分子に与える訳で、通常は自由電子の非常に多い金属を使う。透明電極は電子が必ずしも飽和していない。どちらかというと半導体だ。
これは複数の方法がある。
(2) 微細メッシュ状金属電極による電子注入。
その他にも方法はあると思うが、それは有機ELの開発者に任せよう。もし、上記の方法が未公開で特許ネタになったとしても、こういう風に先行公開されてしまうと、誰も権利化できない。
なお、類似のアイデアは液晶では既出である。
これは複数の方法がある。
(1) 新規透明電極の開発
いつできるかわらんし、原理的に無理かもしれない。カーボンナノチューブ(CNT)を使うとよいかもしれない
(2) 微細メッシュ状金属電極による電子注入。
メッシュの開口率が大きいと光線透過率は高くなるが電子注入効率が低下する。しかし、高開口率だがメッシュのピッチが小さいと十分な電子供給能力を与えられる可能性がある。
気になるのは微細スリットにすると光の干渉の効果で特定波長の光のみを強調するかもしれないし、微細スリットでは偏光になる可能性がある。
気になるのは微細スリットにすると光の干渉の効果で特定波長の光のみを強調するかもしれないし、微細スリットでは偏光になる可能性がある。
その他にも方法はあると思うが、それは有機ELの開発者に任せよう。もし、上記の方法が未公開で特許ネタになったとしても、こういう風に先行公開されてしまうと、誰も権利化できない。
なお、類似のアイデアは液晶では既出である。
2) 短波長の発光が長波長側発光層で吸収されない事。
これは観察者側から順に青、緑、赤となるように積層配置すればよい。青の光は緑の発光層や赤の発光層に吸収される可能性が高いが、最上段ならその効果は小さい。
しかし、光は3次元にXYZ軸のプラス方向とマイナス方向で6方向に放出されるから、青い光が基板方向へ向かうと長波長側の発光層で吸収される。

この構造は液晶では困難である。ま、高分子ゲルを使ったタイプやマイクロカプセルに入れた液晶で出来ない事も無いが。駆動電圧が大変だ。
しかし、光は3次元にXYZ軸のプラス方向とマイナス方向で6方向に放出されるから、青い光が基板方向へ向かうと長波長側の発光層で吸収される。
これの解決策としては透明電極が選択反射すればよい。
例えば青の光は反射するが赤や緑は透過する光学薄膜の設計にする事は可能だ。いわゆる干渉フィルターの光透過バンドを薄膜の厚みでコントロールし、欲しい光だけ透過するようにする。
・青発光層
・緑の発光層
・赤の発光層
こんなイメージになる。画素の断面図だ。
青色を反射するがそれ以外の光を透過するフィルター機能を持つ透明電極を基板側に設置し、観察者側は可視光全てを透過するフィルター機能を持つ透明電極で挟持する。
・緑の発光層
それぞれの発光層の光は反射するが、それ以外の光を透過するフィルターを基板側に設け、観察者側は可視光全てを透過するフィルター機能を持つ透明電極で挟持する。
・赤の発光層
全ての可視光を反射する電極を基板側に設け、観察者側は可視光全てを透過するフィルター機能を持つ透明電極で挟持する。
こんなイメージになる。画素の断面図だ。

図の都合上、右側のスペースが大きいが、設計上は素子の配置を考えると画素駆動素子は画面あるいは紙面と鉛直方向にならべるとよい。また、この画面では赤層が最も基板側である。
この構造は液晶では困難である。ま、高分子ゲルを使ったタイプやマイクロカプセルに入れた液晶で出来ない事も無いが。駆動電圧が大変だ。
3)そういう構造を作る事が難しい。
高分子型なのでインクジェット印刷でやるのだろうが、絶縁層は設けてもスルーホールをどうやって設けるか、しかも水分や酸素に弱い発光層をどう回避するか、という課題が全く解決されていない。
という訳で、将来的には積層構造に寄って3倍まで高精細できるが(RGB+Yでも3倍)、これを実現するのは非常に困難だと思われる。ま、10年以上かかるでしょうね。
なお、発光系の場合、積層にする必要は殆どない。超高解像度にするために必要な技術の様に思えるが、黒背景に「輝点」で発光するので、発光効率が上がれば面積で光量を稼ぐ必要もない。
あと、有機ELの場合、各発光層の厚みを制御して発光層内で光が捕らわれて膜厚方向の干渉で消えてしまわない用にする事も必要な技術であるが、積層するとその効果が失せるだろう。
ということで、おそらく解像度は液晶を上回る事はないだろうと思う。
このコメント日時はそう簡単に捏造できない。
未来を予想すること、例えば本日の日本シリーズは中日が制したというネタを書いてもそれが真実か否かは証明できない。
やはりサーバへの記憶が唯一になりそうだ。
あとは、ほかのブログ等がどれだけ参考してくれるかってのも効くかな。