ならおうは穏やかに語る

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事業仕分けと科学技術

2009-11-18 13:03:27 | Weblog
事業仕分けでスパコン開発凍結。技術立国という選択肢を捨てるわけだ。
競争から降りると周回遅れになる。取り返しできない。元に戻れない。

「束の間の世界一に何の意味がある」
こういう競争が常にトップを目指した死闘だということを理解していない事を示している。競争から降りるとトップグループから弾き出される。そうなると技術も科学もトップグループではなくなる。

「二番手で良いじゃないか?」
だめなのだ。スパコンは科学技術のインフラだ。現在の順位は十位より下なのだ。相撲で言うなら幕下だ。横綱・大関・三役を目指さないということは二流でよいと言うことになる。

トップグループではない、二流のインフラ、これでどうやって科学技術で米・中・欧州を凌ぐというのだ。日本人が他国民より優秀という根拠はどこにもない。ただ、追いつけ追い越せ戦略で明治以後に米欧に留学(それ以前の平安の頃は中国に留学していた)して、西洋科学を吸収できただけだ。

明治時代の日本国内には科学技術のインフラが無いから、優秀な人々が西洋科学のインフラが整った米欧に留学して知識を吸収した。だが、留学は単に知識を吸収するだけではない。

ある大学の研究室を考えてみよう。
研究室の役目・存在意義・仕事は科学における新たな何かを誰よりも速く発見し、公表することだ。勘違い発表を正すための検証という仕事もあるが、それは誰かの発表が科学的にあり得ないことであれば、まだ自分の研究を継続する意義があることを確認するためで・・・と細かいところは置いておこう。

研究室の仕事は教授を中心としたスタッフ(研究生)・大学院生・学生でまかなう。ここで留学生を受け入れるとしても留学生が研究室の知識を吸収するだけの人物であれば必要ない。むしろ邪魔だ。さらに留学生を受け入れても研究室の予算には限りがあるので、スタッフ(研究生)の枠は変わらない。留学生が自国のスタッフよりも劣っていれば受け入れる理由はない。
そう、留学生の受け入れは研究室にとっては人員強化の一つになるわけだ。

ところが、科学技術(理学・工学・生物学・医学・・・)の研究室のインフラが劣っていると留学する動機が無くなる。戦後直ぐのように理論物理学の分野であればインフラが無くても優秀な頭脳で理論を構築することができたが、科学技術はその理論を実証することも必要なのだ。そしてその理論を実業に反映させるからこそ科学立国が可能になる。理論物理学を神学論争や禅問答とは言わないが、理論を実証し、実業に反映させるというプロセスにはインフラが必要なのだ。
このインフラは何も見た目が綺麗な大学や研究棟や空調だけではない、むしろこれらよりもスパコンがあることが重要なのだ。
これは一つの研究室の話ではない。
日本の研究開発体制に物凄いインフラ(=スパコン)があり、それをフル活用しているスタッフがいる。そこに優秀な留学生が参加すると、国内の研究生市場(労働市場みたいなものと思えばよい)にも競争が働く。より優秀な人がより良いポストに就くわけだ。そうすることでより効率的に研究開発が出来る。

留学生が留学先の学生を押し退けて研究室に入ると言うことは留学先の知的水準が上がることを意味する。インフラが無いと留学してこない。逆に優秀な人々が抜ける。これで科学立国は無理だ。

それを今回の凍結は捨てようとしているわけだ。この事業仕分人は日本の成長を望まないのか??

留学生が活躍しているのは米国を見ればよくわかる。世界中の優秀な頭脳を集め、切磋琢磨させることで世界一を維持しようとしている。ちょこちょこ実業でチョンボしているが、米国に留学したい優秀な人は、自分の才能を思いっきり発揮できるという環境を望んでいるわけで、単に経済的な問題ではない、ここに記した環境にインフラも含まれる。

そもそも科学技術は成果が出るかどうかなぞ誰にも解らん。
大航海時代の探検と同じだ。成果がすぐ判るもの、結果が見えているものは研究対象ではないし、ご近所は探検対象ではない。
スパコンは誰よりも速く、シミュレート結果を得るためのツールだ。それがなければ競争に負ける。
これは理論が正確かどうかの検証に使い、理論を補正する。それができなければ競争に負ける。
競争していない科学者にはそんなことは解らないし、科学を知らない者には重要性が解らないのかもしれない。

ゼロ戦やヤマトは留学していない人々が開発したというが、その開発インフラは明治時代の留学生の知見を基にしたものだろう。しかし、どちらも決定的欠点を持っていたがため、コルセアやヘルキャットに負け、空爆で撃沈した。
※零戦は軽いからこそ得られた驚異の航続距離と速度、そして口径の大きな機銃による攻撃力が特徴だが、軽い反面防弾力が無いこと、急速降下や高速横転に耐えないフレーム性能を忘れてはならない。ヤマトは単独では凄いが、空母からの機動部隊に撃沈された・・・。

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4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
箱モノ (きゃま)
2009-11-19 07:53:43
こんにちは。
スパコンの開発は必要だと思いますが、そのための箱モノは要らないと思います。
ニュース見てたら、えらくたいそうな施設の建設中の映像が出てて、普通の人はそれを見て無駄だと思ったのではないでしょうか?

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Unknown (Regal Close)
2009-11-19 09:11:16
事業仕分けのニュースは興味深く見ていましたが、複雑な感想を持ちました。
国民一人当たり600万円くらいの借金を背負っている現在、無駄な予算を削ることは絶対必要です。その意味でこのような議論は真剣に恒常的にされなければいけないでしょう。しかし「スパコン開発」が無駄だとは私も思えませんね。何が無駄で何が無駄じゃないのか、結論を出すのはとても難しいですね。
事業仕分による予算削減も重要ですが、いちばん手っ取り早くて誰もが納得する予算の削減は国会議員の数を半減することじゃないですか。多すぎです。
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箱モノ (ならおう)
2009-11-19 22:31:37
きゃまさん。
スパコンは冷却関連で大層な設備になりますからねぇ。
むしろ高速道路凍結とか、ミサイル防衛凍結とかの方が重要ではないかと思います。
ミサイルでミサイルを撃ち落とすなんて・・・。
複数弾頭が飛来した時点で意味が無くなります。

執行予算そのものから見たら大したことがないのに何という事やら。
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国会議員半減大賛成です (ならおう)
2009-11-19 22:35:40
参議院廃止でも良いと思いますね。
連立を組んで与党入りしていますが、あれは参議院選挙までの同床異夢でしょう。

ミンス党には経済センスが無いような気がします。
連立相手のヨイショも大変ですし。

語学力があって背負うモノがなければ逃げ出したいです・・・(笑)。
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