週刊 新大土壌研

新潟大学農学部農学科 土壌学研究室の活動日記です 『週刊』を名乗っていますが、不定期に更新していきます

放射能汚染が土壌動物に与える影響 ロシア科学アカデミー生態・進化研究所 Andrey Zaytsev博士

2011-06-04 | MN(野中)

ロシアでは4月の事故から2ヶ月後の6月から土壌動物の調査が始まりました。(野中コメント)

(大変だったと思います。)

(シンポジュウムで横浜国大・金子教授が翻訳された内容です。)

土壌動物は一般に放射能汚染に対して感受性が高い指標である。

(事実、チェルノブイリでは直後、周辺ではほとんどが死滅したようです。)

ミミズ、等脚類、ヤスデ、ササラダニは初期汚染の適した指標動物である。

落葉や土壌表層に住む動物は影響を受けやすい。

腐食性動物は捕食性動物と比べて移動性が小さいので、影響を受けやすい。

(落葉を分解する土壌動物が激減?)

1.個体数の回復に3年。

2.多様性の回復に25~40年。

3.食物構造の回復に100年かかるかもしれない。

(現在、あまり注目されていない森林や里山では放射性核種が葉や樹皮、枝に沈着・吸収されています。今後、これらから流れたり、落葉で土壌表層に蓄積した時、土壌動物が激減する可能性と動物に蓄積しないことから系外に流れると思います。要注意です。)

(里山の循環農業復興のためにどうすればよいか?皆さんで協力しましょう。)

(また、これからは人間以外の土壌微生物や土壌生態系がどのように変化するか、注目する必要があります。私の専門の植物の根と共生関係を持つ菌根菌は樹木・植物・作物への移行を高めているようです。)

(福島でも田んぼや畑の生き物調査。いつか始めないと)


国際放射線防護委員会(ICRP)と欧州放射線リスク委員会(ECRR)、それぞれの勧告について 野中

2011-06-03 | MN(野中)

 5月28日~29日は北海道で土壌動物学会に参加しました。30日は横浜国立大学でシンポジュウムに参加しました。

 ロシアの土壌動物研究者の話は印象的でチェルノブイリ事故後、今でも土壌動物の多様性は回復していないようです。

 後日詳しく書きたいと思います。横浜国立大学の金子教授がその辺の論文をまとめています。

 31日は料理人のチャリティーシンポに参加しました。東北で1日1000食の食事を提供しているシェフの話には感激しました。地元食材の温かい食事、本当に真心がこもっていました。

 これも、後で書きたいと思います。

 http://www.soulofjapan.org/report.html

  

 放射線の生体影響について、聞かれることがあるので国際放射線防護委員会(ICRP)と、欧州放射線リスク委員会(ECRR)、それぞれの勧告について、どのように理解すればよいか、下記ホームページを紹介します。

 神戸大学の山内先生がわかりやすく解説しています。

 過去の環境問題を見てもわかるように、私が関わってきた、例えば新潟

水俣病事件では国が科学的に明らかでないとの理由で被害者を増やし

ました。

 疫学調査では科学的に証明することが難しいとの理由でECRR勧告を

無視する姿勢は間違いです。ECRR勧告もきちんと国民に知らせるべき

です。

  国はECRR勧告を重視すべきです。私たちも自ら判断することが大切です。

 http://smc-japan.org/?p=1941

 

 http://www.jca.apc.org/mihama/ecrr/ecrr2010_dl.htm

 

 http://www.rri.kyoto-u.ac.jp/NSRG/seminar/No99/yamauchi041215.pdf

 

 


横浜でワークショップに参加します。

2011-05-27 | MN(野中)

下記、横浜国立大学グローバルCOEが主催するワークショップに参加します。

特に、ロシア科学アカデミーのZaitsev士の話は興味があります。

後日、内容を報告します。

 

福島原発事故の土壌汚染影響を考えるワークショップ

 

東日本大震災と、引き続き不安定な状態の福島第一原子力発電所事故は、私たちに大きな不安をもたらしています。なかでも福島原発から放出された放射性物質による広域な汚染に関してどのように対処したらよいのか、冷静かつ的確な判断が求められます。

本集会は、放射能汚染の土壌影響について焦点をあて、緊急にお呼びした招待講演者に話題提供をお願いしています。

放射線医学研究所の吉田博士には、さまざまな生物における放射能の影響と、生態系レベルでの影響について解説をお願いしています。

新潟大学の野中教授には、新潟大学で詳細に研究された大気核実験由来の放射性物質の土壌と作物間の移動についてのお話と、福島事故の影響を受けた農地の利用上の注意についてお話しいただきます。

最後にロシア科学アカデミーのZaitsev博士には、チェルノブイリをはじめとする旧ソビエトの複数の高濃度放射能汚染地域で調査された土壌生物への影響調査の内容をご紹介いただき、福島の将来について考えます。

 

 

開催日時:2011530日(月) 17:30-20:30 

場所:横浜国立大学教育文化ホール中会議室

定員:50

 

 

1.放射能の生態系での挙動とその影響-福島における予測

        放射線医学総合研究所 吉田聡博士

 

2.放射能汚染の土壌影響と農業のありかた

        新潟大学農学部土壌学研究室教授 野中昌法(まさのり)先生

 

3.ロシアの放射能汚染と土壌生態系への影響

        ロシア科学アカデミー生態・進化研究所 Andrey Zaitsev博士

 

4.総合討論

 

広く一般の方のご来場をお待ちしております。

 


ストロンチウムについて 野中

2011-05-26 | MN(野中)

 5月24日は千葉県佐原農産物センターで農家の方向けのお話と農家から現状を伺ってきました。

千葉県の改良普及員の方も参加されて、この農事組合法人では「土」を育む力を大切にして、化学肥料は使わず、農薬は最低限で有機物を大切にした循環型の農業で安全な食料を生産しています。若い後継者が多くいます。

 ところで、昨日、三条の女性からお電話いただきました。その時、原発事故から放出されるストロンチウム90のことを大変心配していました。私はチェルノブイリ事故では40~50Km程度の汚染で遠くには拡散しないのではないかと話しました。

 しかし、1960年代の核実験で、新潟の土壌に蓄積したセシウム137:ストロンチウム90が1:0.7の割合でした。(図参照)

 昨日電話いただいた方の連絡先やお名前を聞いていないのでここで少し訂正します。3月からストロンチウム90の問題は指摘してきましたが、炉心溶融が明らかになったこと、プルトニウムもあったことを考えると、核実験のころのデータも考慮すると、ストロンチウム90をもっと警戒する必要があります。

 今後、ストロンチウム90にも注意して、横山論文も含めて、土壌を含む自然生態系の挙動をこのブログで解説して行きます。

 


ため池の用水が水田に与える影響

2011-05-21 | MN(野中)

これも既に、文章で書きましたが、ため池から流れた用水中や標高の高い水田から低い水田へ流れる用水中からセシウム137が移動することを示しています。

低地水田でセシウム137が蓄積されやすいです。また、当時調査した横山先生は②では用水を多く利用したためセシウム137が多く蓄積したと書かれています。

これから、汚染の可能性がる森林の集水域から用水を利用するときは監視体制が必要です。


野菜への影響(まとめ)

2011-05-21 | MN(野中)

文章で述べてきましたが、野菜への影響を図にしました。

当時、洗浄してもセシウム137は減少しませんでした。大気から降下してきて、葉面吸収の可能性を考えました。

越冬野菜は根からの吸収は考えにくいので大気中の雨や雪から葉に蓄積吸収されたと考えられます。