2009年12月、大阪の鍼灸整骨院で患者が鍼治療による気胸事故で死亡する事件があった。この事件については私も以前、このブログに「鍼灸接骨院で患者死亡事故」という記事を書いた。その事件についての続報である。
ちなみに今回は、BGMに映画『Once upon a time in America』のOSTから「Poverty」を選んでみたがどうだろう。
2010年12月、事件について刑事裁判での判決が下った。週間あはきワールドの記事によると
無免許で女性に鍼治療を行い、肺を傷つけて死亡させたとして、業務上過失致死とあはき法(あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律)違反の罪に問われたメイプル鍼灸整骨院元副院長の岡村祐樹被告(27)に対する判決が12月7日、大阪地裁(増田耕児裁判長)であり、同地裁は懲役3年執行猶予5年、罰金50万円(求刑・懲役3年、罰金50万円)の有罪判決を言い渡した。
朝日新聞や日本経済新聞などの報道によると、判決では、岡村被告は昨年9~12月、免許がないのに、箕面市の上田清美さんらに14回にわたり鍼治療を施し、昨年12月、上田さんの背中に約3センチの深さまで誤って鍼を刺して気胸を発症させ、低酸素脳症で死亡させた。
被告側は「鍼を刺した深さは1.9センチ以内だった」「被害者は施術前から自然気胸の持病があった」などとして業務上過失致死罪については無罪を主張していたが、増田裁判長は「施術で気胸が発症したと認められ、死亡との因果関係は明らか」と被告側の主張を退け、「安全な鍼の深さなどの認識が乏しく、必要な専門的知識や技能を十分有していなかった」と指摘。「危険な施術を繰り返した過失は大きく、結果も極めて重大」と述べたという。
この事件について、これまでマスコミやネットなどで伝えられた情報をまとめると、
岡村被告は当時、柔整師として施術に当たるかたわら、鍼灸師の資格を取るため学校に通っていた。つまり、鍼灸師の資格を持たずに患者に鍼治療を行っていた。
岡本被告は施術後、患者が院内のトイレで倒れていたにも関わらず、2時間以上経って救急車を呼ぶまで、適切な措置を執らず放置していた。これについては事情聴取の中で「無資格で鍼治療をしていたのがバレるのが怖かった」と述べている。
司法解剖の結果、気胸を起こしていたことが確認されたが、同時に死亡した患者は過去にも鍼と思われるもので何度も肺膜を傷つけられていた形跡が認められた。
岡本被告の上司に当たる院長は、被告が無資格で鍼治療を行っていたことは全く知らなかった、と述べているが、実際には黙認していた可能性もある。
私はもとより法律のことは詳しくないが、上に述べた~が事実だとすれば今回の判決内容は、「危険な施術を繰り返した過失は大きく、結果も極めて重大」という裁判長の言葉とは裏腹に驚くほど軽いものだった、という気がしてならない。もちろん、表に出ていない何らかの不可抗力的な事情があったのかもしれないし、被告はまだ20代と若く前途があることも考慮されたのだろう。また被告は全くの無資格者ではなく、柔整師の免許を持って施術に当たっていたという事実も判決に有利に働いた可能性はある。が、それでも仮に自分が被害者の遺族だとすれば、この判決には到底納得できないだろう。
記事からは、これで判決が確定したのかどうかはわからない。原告側が上告する可能性もある。それに刑事訴訟の判決がこれで確定したとしても、これに続いて民事訴訟が始まることになる。この事件はまだ終わってはいないのだ。
・・・が、業務上過失致死だと懲役3年と罰金50万円までというのが最高刑なんですね。
交通事故でも業務上過失致死なら同じ量刑なわけで判例上は別にこれで軽すぎるということはなく妥当な判決なのかもしれません。
ただ交通事故の方は3年前に罰金100万円までに引き上げられましたので、今回の件で世論の動向によっては同様の事件で量刑が引き上げられることもあるかと。
一般人の感覚からしておかしな法律はいっぱいあるわけで、いくら裁判員制度とか始めて一般人の感覚を取り入れるとか言ってもそれ以前に法律を直さないとダメなんでは?と思います。
>業務上過失致死だと懲役3年と罰金50万円までというのが最高刑なんですね。
なるほど、そういうことなら(執行猶予がついたことはともかく)上記のような判決も法律上は妥当なもの、ということになるのですね。
ただ、それが本当に「業務上」と言えるものか…。あるブログには「にせ医者が患者を死なせたら(「業務上」のつかない)傷害罪になる。鍼灸師でない被告が鍼で患者を死なせておいて、「業務上」はないだろう」といった内容のことが書かれていました。
一方、「業務上」がつかない「過失致死傷罪」だと50万円以下の罰金・科料のみで懲役刑はありません。
えっ!なんで?と思う人もいるかも知れませんが業務でやったことには、より重い責任が問われるということで当然といえば当然。
資格がない者の行為で起きたことを「業務上」というのが妥当かといえば、日本語としては確かにおかしい気はします。
が、法律の運用上は「業務」の範囲は相当広く取られているようで、単なる「過失致死傷罪」はごく狭い範囲でしか適用にならないそうです。
なので資格がない「ニセ」でも業務のようにやってた実態があれば「業務」なんでしょう。
ところで「業務上過失致死」の上限は懲役5年でした。
お詫びとともに訂正させていただきます。
ちなみに07年から適用の「自動車運転過失致死傷罪」が懲役7年です。
「危険運転致死傷罪」だと上限は15年になります。
医行為は人の命を直接預かるものだけに自動車事故と同様に「危険医療致死罪」で懲役15年というのがあってもいい気がします。
もしそういう法律になっていれば、、、上限の懲役15年の判決が出てもおかしくない事例じゃないでしょうか。
やっぱり3年は軽いですよねぇ・・・
>法律の運用上は「業務」の範囲は相当広く取られているようで、単なる「過失致死傷罪」はごく狭い範囲でしか適用にならないそうです。
この辺は「あくまで過失なんだから、できるだけ罪を軽くしてあげよう」という日本的なやさしさでしょうか?
確かに重い量刑を科せばいい、というものではないですが、市民感覚からかけ離れすぎてしまうのも問題で、だからといって法律がそうなっている以上、それを変えない限り裁判員制度でもどうにもならず…う~ん、悩ましい