【昔の手帳から】 ６月１１日 （83年：須磨海岸にて）

【１９８０年】（１囘生）

二輪卒檢 落第
家庭教師


水曜日。

５月１９日に二輪の教習所に入り、この日、卒檢を受けたが合格出來なかつた。
クランクでふらついたのがいけなかつたらしい。
翌日の補習と翌々日の再檢定を申し込んだ。
さういへば、思ひ出したが、教官に怪しい人物がゐた。
顏をスカーフで覆ひ、サングラスをしてゐる。
それで、メチャ巧いのだ。
サッとウィリーさせて、前輪を持上げたまま走つてみせたり、アクセルターンで○を描いてみたり。
現役の交通機動隊員（白バイ隊員）が非番の日にバイトしてゐるのではないか、などといふまことしやかな噂が流れてゐた。
あのテクニックの見事さからすれば、一概に否定するわけにもいくまい。




【１９８１年】（２囘生）

白バイ追跡１２ｋｍ。 白バイ１１台目撃！
なんといふウルササよ
關西二期會＜カルメン＞ 18:15 厚生年金大Ｈ


木曜日。

６月１日に卑劣なやりかたで覆面パトに捕まつた。
そのことがどうにも腹に据ゑかねて、私は白バイへの厭がらせを思ひついた。
スピード違反を取り締まる際、彼らは１００ｍ以上同じ速度で追尾して初めてスピードを確認したことになる。
つまり、１００ｍ追尾されなければ良いのである。
白バイを後方に發見したら、即座にブレーキランプを點燈させる。
さうすれば、スピードが變化したわけで、スピードを確認することは出來ない。
もつと積極的な厭がらせは、逆に白バイを追尾すること。
本來、彼らはのべつに速度超過をするわけにはいかない。
違反者や犯罪者の追跡など合理的な理由がある時に限られてゐるのだ。
なので、追尾された場合にスピードを上げて振り切るのは違法だし、かりに合理的な理由があつたとしても、追尾者をスピード違反者として取り締まることは出來ない。
なぜならスピードを確認することが出來ないから。
といふわけで、ヒマな私は１台の白バイを追尾した。
彼は、スピードを上げたり、大通りから小さな通りに入つたり、小刻みに進路變更したりと、いろいろな手立てをつくして私を振り切らうとした。
しかし、合法的な走行をしつつ追尾者を卷くのは至難の技である。
さうかうしてゐるうちに、私の背後に白バイが。
つねにミラーには注意してゐたので、すぐに氣づいた。
とにかくブレーキを踏んでスピードを落とす。
白バイは殘念ながら私を追拔くしかない。
すると私は今度はその白バイの背後につく。
と、また私の背後に新たな白バイが・・・
彼らは無線で聯絡を取りあつてゐるらしい。
結局、１２ｋｍ追尾した間に、延べ１１台の白バイが私の周圍を走つてゐた。
學生のイタズラとはいへ、彼らには申し譯ないことをしたと思ふ。
でも、言ひ譯に過ぎぬが、彼らもゲーム感覺で樂しんでゐたやうな氣がする。
だつて本氣で捕まへようと思つたら、彼らのテクニック＆組織力をもつてすれば簡單なことではなかつたか。
子供の遊びに付合つてくれた大人の皆さま、ありがたうございました。




【１９８３年】（４囘生）

11:00 三宮 （阪急 東改札）
異人館 → メリケン波止場 → 「細雪」 → 須磨海岸
ホロヴィッツ 日本公演 20:00 ＮＨＫホール


土曜日。

前年１０月以來、Ｈとの７度目のデート。
前囘が６月２日だから、９日ぶり。
この日は京都でも大阪でもなく、神戸。
異人館。
初めて行つた。
うろこの家は震災でどうなつたのだつけ。
メリケン波止場。
さう、あの頃はまだ波止場だつた。
「細雪」。
いい映畫だつた。
平安神宮の枝垂れ櫻。
この映畫のお蔭で初めて知つて、櫻の季節にＨと行つてみたいと思つた。
映畫を觀てから食事をしたと思ふのだが、覺えてゐない。
何故なら、その後のことが強烈に心に燒き付いてゐるから。
須磨海岸。
夜の須磨海岸はロマンティックだつた。
夜の海に向つて、肩を寄せあつて座る。
この時のことは死ぬまで、いや、きつと死んでも忘れない。
６月といふのに寒くてふるえてゐたのに、いつしか寒さを忘れてゐた。


ホロヴィッツの歴史的な日本公演については、翌日の日記で記すことにする。



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＜１９８２年＞
１０月９日：京都。飮む
１２月１０日：シンフォニーホール。ヘンデルのメサイヤ
１２月２４日：梅田。クリスマスイヴ。
＜１９８３年＞
２月１８日：花房晴美リサイタル。ベートーヴェン：ピアノソナタ第３２番ほか。
５月１４日：京都。「楢山節考」。
５月２６日：大阪城など。（秋田沖地震）
６月２日：みゅーず → 圓山公園 → 枚方。