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著者名 北村薫 発行年(西暦) 2003
出版者 新潮文庫 値段 500-600円
お薦め度 :☆☆☆☆☆
私は北村薫の作品が好きだ。
「覆面作家」シリーズや「圓紫師匠」シリーズなどの日常生活的なミステリーも好きだし、最近のものでは「スキップ」に始まる「時間もの」がたまらなく好きだ。
この「リセット」は「スキップ」「ターン」に續く「時間もの」の第三作である。
「スキップ」も「ターン」も良かつたが、今囘の「リセット」も秀逸だつた。
讀者は「時間もの」であることを意識して讀み始めるから、第一部は序章だと判つてゐて、どこに伏線があるのか考へながらも、ゆつたりと讀みすすめることができる。
第二部は第一部との關係を想像しながら讀み始めるが、やがて豫想がついて、今度は「それ」が、いつ、どのやうに判明するのか、期待を膨らませて讀むことになる。
そして、「それ」はさりげなく、意外な小道具をきつかけにして實現される。
「それ」自體は豫想できてゐるにもかかわらず、やはり、そのシーンは素晴らしい。
私などは、電車の中で讀んでゐたのだが、すつと全身の毛が逆立つやうな氣持ちがした。
そして第三部。
この第三部がまた素晴らしい。
第二部で終はつてゐたなら、これほどの感動は味はへなかつただらう。
さすがに、ここまでは豫想してゐなかつた。
この作品を讀んで、「時は親切な友達です」と云ふ詩句を思ひだした。
作者も題名も思ひだせないが、20數年前に駿河台の豫備校に通つてゐた時のテキストに載つてゐた詩である。
詩では「時」の瘉しの作用が詠はれていたが、この作品ではもつともつと「時」はやさしい。
讀んで良かつたと思ふ。
2003年8月18日讀了
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