仙丈亭日乘

あやしうこそ物狂ほしけれ

読書録(2023年1月)

2023-02-01 07:34:00 | 読書録(備忘)

 

15

「夜と霧の隅で」北杜夫

 kobo版電子書籍なのだが、なんと初期の短篇も収められていて、読みたいと思っていた『岩尾根にて』が!

『岩尾根にて』

 学生時代以来の再読。北杜夫の短篇の中で一番好きだと思っていたのだが、僕の好きな情景描写はなかった。40年以上も勘違いしていた。あれは『幽霊』の最後のほうにあったものだった。

『羽蟻のいる丘』

『霊媒のいる町』

『谿間にて』

『夜と霧の隅で』

 1960年、つまりぼくの生まれた年に発表された芥川賞受賞作。

たぶん40数年ぶりの再読。

大戦末期のドイツでの精神病院が舞台。

ほとんど覚えていなかったけれど、いい作品だ。


18

「星のない街路」北杜夫

 高校以来、40数年ぶりの再読。

表題作を含む7篇を収めた初期短篇集。

『河口にて』(「文学界」19609月号)

『星のない街路』(「近代文学」19589月号)

 11月の陰鬱な東ベルリンで17歳の少女と出会いうん、いい感じ。

『人口の星』(「文芸首都」19567月号)

『異形』(「新潮」19597月号)

『浮標』(「文芸首都」19589月号)

『不倫』(「近代文学」195811月号)

『薄明るい場所』(「近代文学」195610月号)


117

『楡家の人びと』北杜夫

高校時代以来45年ぶり?の再読。

北杜夫の代表作。

この本の函書で、三島由紀夫が「戦後に書かれたもつとも重要な小説の一つである。この小説の出現によつて、日本文学は、真に市民的な作品をはじめて持ち、 (中略) これほど巨大で、しかも不健全な観念性を見事に脱却した小説を、今までわれわれは夢想することも出来なかつた」と称賛している。

ぼくが三島を読み始めたのは浪人時代だったので、彼の作品より先にこの書評を読んでいたことになる。

トーマス・マンの『ブッデンブローク家の人々』にインスパイアされた作品であることは作者が標榜している。

さて、楡家の末娘、桃子がかわいい。

確か三島もそう書いていた。

藍子がまたかわいい!

大正7年から戦後にかけて、関東大震災、大東亜戦争と、日本の激動の時代。

一番若い周二が昭和2年(1927年)生まれだから、大正15年生まれのぼくの父の人生が重なる時代。

日本人はよく頑張ったのだなぁ。


118

「見知らぬ国へ」北杜夫

初読。

2016年、北杜夫の亡くなった5年後に新潮社から刊行されたエッセイ集。

1976年から2001年までに書かれたエッセイなどを集めたもの。

なかでも、「北杜夫全集」の月報に掲載された創作余話がいい。

これまでに読んだ作品が懐かしく思い出された。

また全て読み返したくなった。

特に『白きたおやかな峰』。

中学2年の時に読んで以来、何度読み返したかわからない、ぼくの愛読書。

2年前に引っ越した時に売り払ってしまった。


130

「トーマス・マン作品集・20作品⇨1冊」

楽天koboで、なんと200円!

ぼくの好きな『トニオ・クレーゲル』が収録されている。そしてすべてぼくが読んだのと同じ実吉捷郎訳!

『ヴェニスに死す』と『トニオ・クレーゲル』以外はすべて初読でした。

『ある幸福』

『衣裳戸棚』

『餓えた人々』

『ヴェニスに死す』

 再読。

 芸術と生活との対立。少年愛。ギリシャ的なるものへの憧憬。三島由紀夫。

『神の剣』

『幻滅』

『幸福への意志』

『小フリイデマン氏』

『神童』

『鉄道事故』

『道化者』

『トビアス・ミンデルニッケル』

『トリスタン』

『なぐり合い』

『悩みのひととき』

『墓地へゆく道』

『予言者の家で』

『ルイスヒェン』

『トニオ・クレーゲル』

 何度も読んだ愛読書。最初に読んだのは1974年、実吉捷郎訳の岩波文庫だった。確か90円だったと思う。

 "僕は君たちを忘れてゐたらうか?いいや、決して!ハンス、君のことも、インゲ、君のことも・・・"

 これがぼくの憶えている訳なのだけれど、この本の訳は違っている。なんでだろう。不思議だ。 

 



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