仙丈亭日乘

あやしうこそ物狂ほしけれ

「夏子の酒」(全12卷) 尾瀬あきら

2007-07-27 15:49:55 | 讀書録(コミック)
「夏子の酒」(全12卷) 尾瀬あきら
お薦め度:☆☆☆☆☆ /
2007年7月21日讀了


私は日本酒が好きだつた。
いや、いまでも好きなのだが、肝臟の關係で殆ど酒は飮まないやうに努めてゐる。
日本中で「地酒ブーム」がわき起つたのは、いつのことだつたらう。
私はおそらく、そのブームよりも、ほんの少し早く地酒に目覺めたと思ふ。
そんな私がこの作品を通讀したことがなかつたのは不思議なことだ。
「地酒ブーム」に便乘した作品だと思ひ込んでゐたからかもしれない。

たまたま、ヤフオクで1圓から出品されてゐるのを見つけた。
全12卷なので、おそらく落札價格は3千円前後だらうと思つたのだが、なんと1400圓で落札出來てしまつた。
これは、いま私にこの作品を讀めといふ、神樣の啓示に違ひない。

日本酒は米から作られる。
それは誰でも知つてゐるが、酒造好適米といふ米があり、それが栽培するのが困難な品種だといふことは知られてゐない。
この作品では「龍錦」といふ米が登場する。
「幻の米」と云はれてゐる、いまでは誰も栽培しない品種だ。
手間がかかり過ぎて、いまの農藥依存、機械化依存の農家では、とても栽培できない品種なのだといふ。
その米を栽培することから、主人公・夏子の奮鬪が始まる。
夏子ひとりで米を栽培することは不可能だ。
地元の農家に聲をかけて、「龍錦」の栽培會を結成するまでの努力が前半の山場だ。

「龍錦」の栽培に成功した後は、これを使つて、日本酒を造る作業が始まる。
これがまた、大變な作業なのだ。
現在でこそ少なくなつたが、この作品が書かれた當時は「三増酒」があたりまへのやうに出囘つてゐた。
これは、まともな日本酒がわづかに1/3で殘りは、釀造用アルコールといふ代物。
こんなものは日本酒とは云へない。
かつての「ワンカップ○關」とか、カッパが踊る酒とか・・・(いまでもさうなのかな?)
さういふ酒造りを否定して、夏子は昔ながらの酒造りをする。
しかも、造るのは吟釀酒だ。
精米歩合が50%、つまり米の周邊部を50%削つて、中心部の50%だけを使つて酒を釀すのである。
そして出來上がつた酒は・・・

米栽培から始まつて、酒造り、そしてそれに關はる人間模樣。
現代の農家が抱へる問題なども絡まつて、じつに奧行のある作品だ。
日本酒好きなかたはもちろん、さうでないかたをも十分に感動させるちからが、この作品にはある。
自信をもつてお薦めできる作品である。


夏子の酒 (1)
尾瀬 あきら
講談社

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2 コメント

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hhiroshiiさん (仙丈)
2007-07-27 22:28:47
>昨夜の飲み会では利き酒大会をして何時に家に戻ったのか?どうやって家に戻ったのか?全然記憶にないの。

日本酒は何故か急に廻つて來ますよね。
私もひどい時には、滋賀縣の瀬田驛で目が醒めたこともあります。
兵庫縣に住んでゐるのに、何故??
阪急沿線なのにどうしてJRに乘つてゐるのか?
いまだに不思議です・・・


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愛読書で~す (hhiroshii)
2007-07-27 21:53:51
この本で日本酒を勉強しました。
今でも愛読書です。


「夏子の酒」読本 尾瀬あきら も、お薦めです。

昨夜の飲み会では利き酒大会をして何時に家に戻ったのか?どうやって家に戻ったのか?全然記憶にないの。

あほやわ
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