仙丈亭日乘

あやしうこそ物狂ほしけれ

「緋友禅―旗師・冬狐堂」 北森鴻

2006-05-28 13:00:33 | 讀書録(ミステリ)
「緋友禅―旗師・冬狐堂」 北森鴻

お薦め度:☆☆☆+α
2006年5月27日読了


旗師の冬狐堂・宇佐見陶子を主人公とした作品集。
短篇3つと中篇1つが收録されてゐる。

いづれの作品でも、陶子の人柄が傳はつてくる。
「狐罠」や「狐闇」といつた長篇もよいが、かうした短篇では、
それぞれに異なる角度から陶子に光が當り、陶子の魅力を浮き彫りにしてくれる。


「陶鬼」:
陶子の師匠ともいへる「ツルさん」が亡くなつた。
遺骨を引き取りに萩に向つた陶子は、そこで萩燒の「陶鬼」の人生を知る。

「永遠笑みの少女」:
陶子が作家の「先生」に書いてゐる手紙から、この作品は始まる。
そしてそれは、實は脅迫状なのであつた。
未盜掘の古墳に入つたことのある者でなければ、決して知ることの出來ない世界があるのだ。

「緋友禅」:
染め物で「緋色」を出すのは難しいのださうな。
染め物を盜んで自分の作品に仕立上げた者の陷つた陷穽とは・・・

「奇縁圓空」:
圓空上人の刻んだ佛像は十二萬躰あると云はれてゐる。
ひとりでそれだけの佛像を作るには、毎日10躰作り續けなければならないらしい。
それだけに、圓空佛の贋物は多い。
しかし、ここに自ら圓空にならうとした男がゐた。
彼の作品は「奇縁圓空」と呼ばれてゐる。
そして、この「奇縁圓空」を巡つて事件は起きた。
事件の根柢にある謎を解き明かすヒントは意外なところにあつた。
そのきつかけとなつたのは、カメラマン・硝子の一言だつた。
長篇にしてもよいやうな密度の濃い作品である。


2006年5月27日読了


緋友禅―旗師・冬狐堂

文藝春秋

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