the ‘Voice and Performance’終了。出番トップは「息のキャンバス」(川田智子+倉本高弘+高橋真理子+藤崎博和+森すみれ)5人が横に並び、正に息を順番に吐きだすパフォーマンスで始まる。何故か各人がスマホを前方にかざしながらというのが何やら意味ありげで、かつシリアスなムード。やがてその息がスキャットになり、台詞になり、風船のパフォーマンスになり、各々がまばらになり、朗読や身体的動きに転じていく。表情が一貫して真面目で無表情なのが逆にユーモラスでもあり、一体感を感じる。こういったパフォーマンスチームを観るのは新鮮。2番目は情動的な気配」北村千絵(voice)+山根明季子(Performance)+宮本隆(bass)+田中康之(percussion)。出だしは静か、やがて狂騒というパターンではあったが、非日常的空間を作れたのでは。北村さんのボイススキャットが炸裂し、私と田中氏が疾走するビートを作っても、どこか知らぬ顔で座り込み、淡々とおもちゃや子供用の鍵盤等のガジェットを遊ぶように操作する山根明季子のパフォーマンスが異質的雰囲気を生んでいた。その態度はどこまでもシュール。愛らしい笑顔も狂気を含んだ様相を示す。途中、壁面を対角にテープを貼り、謎の部屋を作り始め、身体的パフォーマンスを見せるが過剰にならず、あくまでもガジェットを次々に繰り出していく。前衛と遊びの境界が消失する瞬間芸のようでもあった。トリは「今来た道も帰りは迷子」Blacky(voice) +浅井一男(electronics)+後藤宏光(performance)+田辺弘一郎(bass)。レギュラートリオに私の目論見で田辺氏を投入した4人。田辺氏は見事なサポートを見せた。ここで安心。Blacky氏は気張った様子は全くなく、豊かな声量で全体のサウンドの流れに乗って歌う。浅井氏はエレクトロニクス音響を奏でながらBlacky氏のボイスと交互にナレーションを入れる。これに私は感心。語り部がもう一人存在するという一寸劇のよう。そして後藤氏のパフォーマンスはやはり圧巻。裸なって後ろ向きで褌締め、蝋燭に火を灯し、茶を習煎じ、習字を始める。気合いの表情は笑えるが真剣。何やら文字を書いてるが、それはコンセプトというより、発作的な即興か。全く絵になる男。ロール紙をクルクル広げながらトイレまで行ってしまった。以前、酒游館で一緒だったときはハシゴで天井まで駆け上がっていったが、あいにくこの会場は天井低いので、それは叶わない。それでも力感溢れるパフォーマンスを見せてくれた。今回のイベントはパフォーマンス主体という私にとっても異色のイベントだったが、‘魅せる’という意味での尊い表現者の方法が勉強になった気がする。
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