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ロルコックスヒル(sax)、チャールズヘイワード(ds)、ヒューホッパー(b)、ゲストのロバートワイアット(cor)というドリームチームのようなプロジェクトだが、実質的にバンドのキーパーソンとなっているのはビブラフォンやスティールパン、パーカッションを担当するオーフィーロビンソンであると感じた。クレジットは全曲が<compositions by>となっているが、恐らく全て即興演奏だと思われる。チェンバーロック系のフォーマットでビブラフォンが重要な働きをするケースは多いが、このプロジェクトに於いては独特のエスニック感覚で処理されている。それがコックスヒルのホーンに象徴される無機質な音響と融合し、独特の‘熱さ’となって聴く者をワクワクさせる。英国即興シーンの新たな地平と言えるであろうか。
ソフトマシーンが初期のサイケロックの物語性から中期以降の演奏至上主義による広大な無意味性へと転身した事は重大な影響力をもったはずだ。その他多くのプログレッシブロックとは異なる器楽主義、演奏の応酬という形式がイギリスでも生まれたのだから。デレクベイリー、エバンパーカーらによるcompanyやジョンスティーブンスのspontinias music ensambleのようなヨーロッパフリーに連なる即興音楽シーンに、ポップ、ロックサイドからの即興の概念が融合された。しかもソフトマシーンがボーカルレスのインストバンドに変化した事はジャズロックという新たなジャンルを開拓しただけでなく、大きな視点で見れば、それは結果的にアメリカジャズへの明確な対抗基軸を形成したという点で重要だったのではないか。ジョンマクラフリンやデイブホランドなどがマイルスデイビスに招集された事を成果とは言うまい。しかしブリティッシュジャズ、ジャズロックがソフトマシーンを大きな幹としながら、ヨーロッパフリーやプログレを巻き込んで、アメリカジャズの膨大な層に対するオリジナリティを確保した事こそが成果であろう。
CLEAR FRAMEに見られるインプロビゼーションはもはや不測の事態ではない。もうこの世界は充分に様式として機能しているし、一つの快楽原則になっている。と言うことは新鮮味には欠けるという事か。いや、私はこれをイギリスのルーツミュージック的快楽の一形態と見る。甚大な影響を受けたはずのアメリカジャズ、そのブラックミュージック要素などを捨象しながら、独自の英国様式を創造した大きな空間に永遠に生じるブルースのようなものだと解している。この即興音楽はある意味、排他的な快楽様式なのだ。ホッパーとヘイワードのリズムの応酬、激闘に感じ入る。深く。
2008.7.17
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