ローマ法王『コンドームが問題を広げた』と発言

『ＷＨＯなど世界が批判』

世界のエイズウイルス（ＨＩＶ）感染者の６７％がアフリカ大陸に集中し、特にサハラ以南のアフリカは、世界で最もエイズに苦しんでいる地域で、07年の世界全体の新たな感染者の35％、エイズに起因する死者数の38％が、アフリカ南部に集中している。
アフリカ各国に対しては現在、国連やＮＧＯが『有効なエイズ対策』としてコンドームの無料配布を続けている。

３月１７日、エイズ禍に苦しんでいるサハラ以南のアフリカ最初の訪問国カメルーンに向かう機中で『コンドーム配布はエイズ（AIDS）対策の解決策ではない』と超ＫＹ発言を行う。
ローマ法王ベネディクト１６世は機中で記者団に、エイズについて、
『コンドーム配布では解決できず、問題を広げるだけだ』
『資金のみで克服することはできない悲劇。コンドームの配布によって克服することもできないし、むしろ問題を悪化させる』と主張。
ベネディクト１６世の考えるエイズ問題の解決策は、
『宗教的、人間的な目覚め』であり、
『苦んでいる者への友情』であるとしている。


『禁欲がエイズを解消する』

ローマ法王庁のフェデリコ・ロンバルディ報道官は記者会見で、ベネディクト16世は、
『教育と責任という部分を強調された』
『前法王ヨハネ・パウロ２世の立場を踏襲しただけ』と擁護の構えである。
バチカン当局は、以前から避妊や婚外交渉を禁じており『禁欲がエイズを解消する』と主張して、国際社会から批判を浴びていた。

法王はこれまでも「避妊具」の使用に反対する立場を強調してきたが、『コンドーム』という具体的な名称を使ったのは今回が初めて。

バチカンはコンドームに反対の立場だが０８年、約６０のカトリック団体が、コンドームの禁止は、
『非常に多くの人をエイズウイルス感染の危険性にさらす』として法王庁に避妊反対の意思表明を撤回するよう公開書簡で要請していた。


『法王発言に批判』

世界保健機関（ＷＨＯ）は『公衆衛生を後退させる』『コンドームが性交渉を広げるという証拠はない』と反発。
カトリック教国フランスのクシュネル外相も『寛容からかけ離れた発言だ』と批判した。

世界のエイズ感染者の６割以上が集中するアフリカでは、(コンドームを禁止していない)北部イスラム圏に対して南部キリスト教圏の罹患率の高さが際立っている。
男性の間に「コンドームを使うのは（エイズを恐れる）臆病者」といった古い考えがあるだけに、法王発言の影響が懸念されている。


『カルト教団の教祖』？

『禁欲』や『友愛』『信仰心』で、今現在の差し迫った緊急の問題が解決するなら、エイズに限らず、全ての困難な問題は解決する。

ローマ法王ベネディクト１６世は保守派として有名で以前にも、イスラム社会を邪悪で残酷と評する東ローマ皇帝の言葉を引用しジハード批判を行うなど、問題点を認識しない発言が目立つ。
確かに、コンドーム配布だけでエイズは解決しないが、今行える一番安上がりなエイズ蔓延を予防する最善策である事は間違いなさそうだ。
世界一の巨大教団トップの無責任発言には呆れるが、もともとのキリスト教は成立当初、庶民の病気を癒す宗教だった。
病に苦しむアフリカ人の心に共感できない今のベネディクト１６世には、イエス・キリストのつめの垢でも煎じて飲ましてやりたい。