逝きし世の面影

政治、経済、社会、宗教などを脈絡無く語る

GDPショックと、首相解散表明と、凍らない凍土壁と、

2014年11月20日 | 政治

『恐怖の三題噺』

消費税の3%増税(合計税率8%)により、日本の2014年7~9月期国内総生産(GDP)は2期連続のマイナス成長と、予想の通りの景気後退( リセッション)局面入りとなって安倍晋三首相は解散を表明する。
安倍晋三は
GDP(国内総生産)速報値が年率1.6%減のマイナス成長になったが、これを『消費税増税の悪影響だ』と自分の責任を認めて、来年10月に予定していた消費税率10%への引き上げを1年半先の2017年4月まで『先送り』を行い、衆議院解散・総選挙を行うという。
(ただし、テレビに出てきた安倍晋三はアベノミクスのプラス面だけを強調、増税でGDPがマイナスとなり再びデフレに突入した事実は一切触れなかった)
唐突な消費税増税の3年先の2017年までの『先送り策』に対して、今まで強硬な消費税増税論者であった甘利
財政金融TPP担当大臣までが『せっく日本経済のデフレ脱却の動きが、予定どうりの消費税増税では失敗する』として先送り策(事実上の増税中止策)に賛成する。
一貫して消費税増税を主張している甘利大臣ですが、何と、消費税の増税では日本経済がリセッション(デフレ)になると知っているのですよ。
もちろんマスコミ関係者も全員が知っている。経済学者はもっと知っている。

『語るに落ちる』

2年前の野田義彦首相の消費税増税での『自民と民主の馴れ合い解散』 (自爆解散)を行った民主党も、『予定どうりの増税』から『先送り』(事実上の増税中止)へと転じる。
自民党民主党以外の他の野党は元々が『消費税の増税先送り』であった。(小沢一郎などの民主党の分裂騒動の原因とは、そもそも消費税増税の是非だった)
共産党だけは少し表現が違い先送りでは無くて『増税中止』なのですが実は中身は同じだった。
(消費税8%の3年先の日本国の未来は、今よりも全ての
経済指数が大きく落ち込んでいるので消費税の増税など夢のまた夢)
今回の安倍自民党総裁のいう『3年先の2017年へと、増税の先送り策』とは、丸々中身が志位共産党委員長の増税中止と同じ意味なのです。
ですから、我が日本国では自民党から共産党まで全政党が挙国一致、みんな仲良く『先送り』が満場一致で決定され『めでたしめでたし』なのである。
ところが、なにやらマスコミも野党も有識者も一般国民も全員が今回のバンザイ解散に不満なのですか不思議である。(3年先へと『増税先送り』が選挙の争点なら、与野党とも意見が全員同じなので、そもそも争いにならない)
辻褄が合っているようで、少しも辻褄が合わないのである。(ちなみに町村自民党副総裁は今回の解散劇をして『念のため解散』であると指摘している)

犬が西向きゃ尾は東。雨の降る日は天気が悪い/親父は俺より年が上』

When the crow flies her tail follows.(カラスが飛べば尾が後ろ)の例えの通りで、何も安倍晋三でなくても輪転機をグルグル回せば世界中何処の国でも必ずインフレになる。
逆に、消費に税金をかければ必然として、国内消費が落ち込む。
1997年のようなバブル崩壊後の消費不況時に消費税を増税すれば必ずデフレに落ち込みGDPが下がり国税収入が減ってしまう。

この程度は、別に経済学者でなくても大人なら常識の範囲なのです。全員が消費税増税後の結果が日本国のデフレスパイラルであることを知っているのですよ。
ところが超高偏差値の日本国の財務官僚たちは全員が逆の『財政再建のための消費税増税』を主張していた。
1997年に、たったの2%増税した結果、我が日本国が世界的に珍しいデフレスパイラルに陥り、GDPが下がり続けて、年々国税収入が減っている。
この事実は財務省自身が認めている。
消費税はバブル経済(ハイパーインフレ)の真っ盛りの1989年4月に導入されているが、国税収入の最高値は翌年の1990年の60・1兆円である。

消費税導入以後の日本経済は、『25年間も穏やかに死につつある』事実は、なにもヘッジファンドのジョージ・ソロスに指摘されなくても誰の眼にも明らかなのである。
ところが何故か財務省やマスコミや自民党政治家は真実を語らず、消費税の増税での財政再建を主張する。
我が国の国税は例外だったバブルの絶頂期(1990年の60兆円)の特殊例を除けば、それ以後は消費税を増税した1997年(平成9年)の53・9兆円が最高値だったのである。
財務省の国税収入の年度別推移を見れば一目瞭然で、日本経済は1997年をピークにしてジリ貧状態に陥って現在は40兆円台にまで落ち込んだ。
日本経済にまだまだ余裕が有った1997年には消費税を増税した翌年以降にデフレが起きていたが、長年続くデフレスパイラスで体力を消耗、日本経済が極限まで弱体化している今回は即座にデフレが発生している。 

『京の五条の糸屋の娘 姉は十六妹十 四 諸国大名は弓矢で殺す 糸屋の娘は目で殺す』

どこの世界でも『兄は弟より年ゃ上』『犬が西向きゃ尾は東』であり結果を勝手に動かせないのですが、我が日本国だけは別だった。『大阪本町糸屋の娘、姉は十九で妹は二十歳。どこかで勘定を間違えた』。
誰かが何処かで勘定を間違えて、姉のほうが妹よりも年下だ』(消費税を増税すれば国税が増える)(増税でインフレになる)と強引に言い張って譲らない。
安倍晋三ですが愚かにも今回の消費税3%増税で、税金分だけ物価が上がるのでインフレ指向だと言い張っていた。
消費税を増税しても消費が以前と同じで→『同じ数量が売れれば』→『消費税分だけインフレになる』計算だったのである。
確かに消費税の増税分、物価は上昇した。
ところが賢い日本人は一斉に財布の紐としめて消費を抑制して、質素倹約、貯蓄と
生活防衛に走ったのである。
高偏差値の秀才ぞろいの財務官僚には、我が日本国では消費税で消費活動が大きく冷え込む(売り上げ総額が下がりデフレになる)との、当然の発想が無かったのである。
現実の日本経済は、消費税の3%増税に敏感に反応して、即座にデフレに落ち込んでいる。
今回、財務省の机上の計算(真っ赤な嘘のプロパガンダ)とは大違いで、消費税とは増税すればデフレになる種類の特殊な税金だったのである。
(日本国の長年続いていた悪性のデフレの原因とは消費税だった)
日本経済は消費税の導入後25年間もゆっくりと穏やかに死につつあったが、今回は、その厳然とした『明白な事実』を日本人全員が確認したことの意味は大きいだろう。
今回のGDPショックでは、消費税増税派の筆頭だった甘利大臣までが『増税でデフレになった』事実を嫌々認めているのである。

『いくらでも操作が可能な政府発表の数値(速報値)

政府の発表する数値ですが、実は数字ほど簡単に誤魔化せるものはないので有る。(真実と数値が一致しているとは限らない)
今回のような1次速報がアテにならない。(政治的の思惑で最終的な『確定値』と、最初の『速報値』とでは大きく違う場合が有る)
もっとも有名なのは自民党政府が崩壊して民主党政権に変わった歴史的な政権後退選挙があった2009年7~9月期の政府発表である。実質GDPで、1次速報が4.8%、2次速報は1.3%に下方修正、確報がもっと下方修正してマイナス1.9%だった。
最初の速報値と最終的な確定値では6.7%もの開きが出ている。基本的に『数値』などはいくらでも修正が可能なのである。(基本となる民間設備投資とか在庫調整の数値を操作する)
2013年10月安倍首相は消費税増税に逡巡していたが、最終的に消費税8%増税を決断する。この時に財務省が出した4~6月期の1次速報は2.6%だったが2次速報で3.8%に上方修正して景気回復を演出。
浜田宏一内閣官房参与(エール大学教授)らの慎重論の押し切って消費増税が決定された。
ところが消費税の増税決定後に発表された財務省の改定値は1.1%で3分の1以下にまで縮小している。日本国の財務省とは口から出まかせ、ゴムひもを売り歩く香具師の寅さんと五十歩百歩の信用度なのである。

『新聞は「見出し」だけ読めば十分』 麻生太郎の大名言

2014年11月18日の毎日新聞(西日本版の大阪本社)朝刊の第一面の見出しはスポーツ紙並みの特大の『DGPショック』であり、右側には大きく『首相 きょう解散表明』なのですが、実に良く考えられたタイトルであると感心する。
サブタイトルが『アベノミクス瀬戸際』であり、『「想定外」株価急落』だった。
小見出しが『与党 解散に懸念も』だった。
漫画中毒で日本語を読めない総理として有名だった麻生太郎の大名言 『新聞は「見出し」だけ読めば十分だ』の正しさをこれ程証明している事例も珍しい。
毎日記事で特に秀逸だったのは、この第一面の左端の方に『汚染水 止水できず』『福島原発のトレンチ』と題した4段ほどの小さな記事。(第一面の記事はGDPショックとフクシマだけ)
フクシマの凍らない凍土壁の不可思議な事実を報じている事であろう。(世界に冠たる我が日本国の一流土木会社が数メートルのトレンチの凍結に半年以上も失敗するなど到底現実に起きた話とは思えない悪夢である)
これだけ輪転機をフル回転しても、最早消費不況による日本のデフレが止まらない。
130兆円の年金資金を株式の賭博にぶち込んでも、頼みの株価の下落も止められない。
もちろんフクシマの汚染水も止まらない。
どれ程努力しても凍らないのですが、メルトダウンして原子炉の地下に落下した核燃料から膨大な熱量が放出されているのでしょう。何十年ぶりかの御嶽山の噴火どころか3年半ぶりのフクシマの大爆発が一番心配されているのである。
我が日本国ですが、間違いなく45度以上傾いた旅客船セウォル号そのものですよ。日本丸の沈没までの時間は、あと少ししか残されていないのです。
一つ一つは何の意味であるかが分からない。
しかし、GDPショックと唐突な衆議院解散・総選挙と意味不明な凍らない凍土壁の『恐怖の三題噺』なら結論は自ずから明らかなのである。

『高倉健さん死去と橋下徹出馬(大阪市長辞任)とアベノミクス解散』

GDPショックが起きた18日の毎日新聞夕刊のコラム『近時片』が面白い。
『アベノミクス礼賛の音頭も木枯らしに消え。一炊の夢冷めて景気後退局面の悪夢か。
名づけて「矢も盾もたまらない解散」なんて。
 
福島第1原発。トレンチ止水ならず。流れ去るは「アンダーコントロール」の確言。』
「怪物」どこ吹く風との『近事片々』コラムですが、アベノミクスがGDPショックで簡単に吹き飛び、衆議院解散とフクシマの原発事故との関連を示唆しているのです。
コラム『近時片々』がある2014年11月18日の毎日新聞(西日本版の大阪本社)夕刊の第一面は大きく『高倉健さん死去』で左に小さく『橋下氏出馬』。大阪市長の橋下徹よりも一回り小さい活字の『首相今夜解散表明』の見出しだった。毎日新聞の扱いですが、高倉健>>橋下徹>安倍晋三の順番なのである。

『小市民のルサンチマンとしての、東映仁侠映画と橋下徹の政治ごっこ』

1960年代に一世を風靡した高倉健主演の東映仁侠映画ですが、歴史的に見てこれは同時代のアメリカの西部劇と同じであり日本の仁侠映画は完成された様式美を持っていた。そして、全ての完成されてものには発展も未来も無い。完成された様式美が持っている運命である『終り』が来て仕舞う。同時期に作られたブルースリーの香港製活劇ですが、何と東映仁侠映画のパクリですよ。
真面目一筋で正義の主人公がひたすら悪党のイジメや世の中の不条理にじっと耐えているのですが、最後の最後に堪忍袋の緒が切れてプッツンする。今までの温和な平和路線とは180度決別して、やることが無茶苦茶、暴力の限りを尽くす。
健さんは日本刀だかブルースリーはヌンチャクを持って悪党の巣窟にたった一人で殴り込みをするのですが、このカタルシスが日本人観客にとってたまらない。
香港映画でもラストシーンは同じだったのですから、最後の破滅的なカタルシスの快感は世界共通だったのである。
私憤の暴力的な憂さ晴らしの弱者のルサンチマンのように見えて、実は社会的正義を求める多くの市民の公憤 を高倉健は具現化していたのであろう。
対して自民党や大企業、マスコミなどの社会的不正を告発している公憤を代表しているかに装って自分勝手のルサンチマンを具現化していたのが組織売春の顧問弁護士だった橋下徹である。
善良で疑うことを知らない庶民は昔の健さんに拍手したように全員でヤクザものの橋下徹のルサンチマンを拍手喝采を送って歓迎した。
今回は都構想に非協力的な『公明党に仕返しする』と市長の椅子を蹴って衆議院に打って出るが、発想が丸っきりチンピラヤクザそのもの。少しの違いも無い。


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2 コメント

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福島の収束していない原発事故やアベノミクス失敗を誤魔化し続ける日本 (鳩と共生)
2014-11-20 15:05:01
閣僚の辞任や野党の汚職追求に直面していた自民党がまさか このタイミングで解散に打って出るとは思っていなかったので吃驚しました。

私は2012年の衆議院選挙で 消費税 3党談合合意の 自民・公明・民主党 自民党に政策が近い みんなの党 
・日本維新の会以外の政党に投票したのですが結果は惨敗でした。 今回はどうなるか分かりませんが 自民党と公明党には絶対 投票しないつもりですし 生活や原発・消費税増税反対・TPP反対の政党に入れて白紙投票は絶対しない様にしたいと思います。

山本太郎議員が最近 何かのニュースで 本来払うべき大企業が税金逃れをしているので そこから取れる様にすれば増税など必要ないと仰っていましたがその通りだと思いましたし 安倍政権の法人税引き下げ(優遇措置)は可笑しいと思います。

そして原発事故も 事故から3年半以上経過しましたが未だに収束せず放射能や汚染水が大量に流れ続け生態系・人体にどんどん影響が出てきている様ですが 日本の支配層は恐らく収束させる気がないのかと思いますし事実上の人体実験を日本人は受けている様にも見えます。 

凍土壁はとっくに止めたものと勘違いしていましたがいい加減に止めるべきだと思います。
返信する
一つだけでも、とんでもなく恐ろしいが (宗純)
2014-11-20 16:31:21
鳩と共生さん、コメント有難う御座います。

解散の理由だという消費税の10%増税ですが、実は与野党とも先送りでは全員一致しているのですよ。
その意味では共産党から自民党までが意見が同じなのですから、まったく選挙の争点が無いのです。
ですから、今回の解散ですが、目的はまったく別にあると考えるべきでしょうが、
最大の問題とは、
この『目的』なるものが一つでは無いことでしょう。
とりあえず誰でもが考え付くのが、
(1)先に行くほどアホノミクスの大失敗に国民が気付く。
(2)リーマンショック以後の世界的な金融破綻による資本主義の断末魔。
(3)3年を経過して4年目からの被曝疾患の爆発的表面化。
来年ですが、この3点が間違いなく表に出でくるが、大騒動が起きるその前に選挙を、『とりあえず』やる。
この三点セットは間違いなく来年早々に日本国で大問題になる。
ところが、それ以外にもとんでもない大問題が控えている。
フクシマのレベル7のメルトダウン事故以来、原子炉1基当たり1時間に7トン、総量では1日400トンもの冷却水を今でも注入し続けているのです。
ところが、原子炉には核燃料が無いと政府や東電は爆発事故から3年目に発表しているのですよ。
この空っぽの原子炉に今でも何故か理由は不明だが冷却水を以前と同じ量の大量に注入し続けているのです。結果的に大量の汚染水を毎日400トンも作り、これを入れるタンクを作り続けている。
物事の辻褄が少しも合っていないのです。
何故、今でも1号機から3号基で大爆発事故が起きたときと同じ。
事故当時と同じ量の冷却水を空っぽだと発表した原子炉に注入しているのか。
この理由ですが、たぶん止める決断が付かないので、仕方なくずるずると続けている。
フクシマですが、アンダーコントロールどころが、五里霧中で何一つ分からない。
分からないどころか、凍らない凍土壁が示しているように、地下ではメルトダウンした核燃料の塊が高熱をだしていて、未だに再爆発の危険性が高いのですよ。
だから冷却水の注入を止められない。
少しも危険が去っていないのです。
北海道新聞は、吉田調書を誤報だとしたは、誤報だったと結論したそうですよ。
摩訶不思議な朝日新聞誤報事件ですが、猫だましであり、実はフクシマが危ないことを誤魔化したいのです。
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