逝きし世の面影

政治、経済、社会、宗教などを脈絡無く語る

今年起きた米国内の銃乱射事件355件(ワシントン・ポスト紙)

2015年12月10日 | 政治
『アメリカは数カ月ごとに銃の乱射事件を繰り返している唯一の先進国』

12月2日米カリフォルニア州ロサンゼルスの東約100キロにある人口約20万人サンバーナーディーノ市の障害者支援施設で銃乱射事件が発生し、14人が死亡し、17人が負傷。警察は路上での銃撃戦で容疑者の男女2人を射殺する。
アメリカでは11月27日にコロラド州で医療施設を狙った中絶に反対するキリスト教原理主義者によるとみられる銃撃事件が発生したばかりだった。(6月にはサウスカロライナ州の黒人教会で同種の悪質なヘイトクライム事件が起きている)
米紙ワシントン・ポスト(電子版)は、今回の12月2日の事件を含めて今年起きた4人以上の米国内の銃乱射事件は355件と報じています。
12月5日、アメリカ国内で相次ぐ銃乱射事件を受け、ニューヨークタイムズ紙が銃規制を訴える社説を、95年ぶりに1面に掲載した。
オバマ米大統領はすでに10月の西部オレゴン州で起きた銃乱射事件に関連して『われわれは数カ月ごとに銃の乱射事件を繰り返している唯一の先進国だ』、事件や報道、自身の対応を含め、全てが『日常化している』とアメリカでの銃規制の必要性を強調していが、12月に発生した銃乱射事件ではFBIがテロと断定し有力マスコミも銃規制の必要性を訴える動きにつながった。
2015年12月08日付けThe Huffington Post 『銃規制を訴えたニューヨークタイムズの1面社説、保守派の論客が銃弾を撃ち込んで笑いものに』によると
『12月5日にニューヨークタイムズ紙が銃規制を訴え、95年ぶりに1面に社説を掲載した。保守的な物言いのウェブサイト「RedState.com」の論客、エリック・エリクソンは、ものすごく不愉快だったようだ。紙面に銃弾を撃ち込み、ソーシャルメディアに写真を投稿した。』
エリック・エリクソン氏ですが、相次ぐ銃乱射事件とアメリカ政府やマスコミの銃規制の姿勢を、(一般の日本人市民の常識的な判断とは正反対に)『明確な憲法違反であり、社会正義に反する』として、ものすごく不愉快に感じたのである。
それなら銃規制のオバマ大統領と擁護派(銃による武装)のエリクソン氏と、平均的なアメリカの庶民はどちらを支持するのだろうか。
基本的に善良だが愚かなB層市民の本音の代弁者である不動産王トランプ氏(徹底したポピュリストで、誰かれ無しに喧嘩を吹っかけて喝采を浴びる日本のヤクザ政治家橋下徹のそっくりさん??)は目下共和党の大統領レースでトップを独走するが、『テロ防止でイスラム教徒の入国禁止』を言い出した。
この過激で超御バカな主張ですが、『多くの有権者の支持を得られる』とトランプ氏が政治的に判断した?結果でしょう。(今回のトランプ氏のように公衆の面前で口にするかしないかはともかく、多くのアメリカ人の『隠された本音』であることは間違いない)

『ボウリング・フォー・コロンバイン』(Bowling for Columbine)

トレンチコート・マフィアと自称していた在校生2名が引き起こしたコロンバイン高校銃乱射事件(1999年4月20日)を題材にして、2002年にマイケル・ムーア監督はドキュメンタリー映画『ボウリング・フォー・コロンバイン』を制作し、2002年のカンヌ国際映画祭 55周年記念特別賞受賞や2003年のアカデミー賞 長編ドキュメンタリー映画賞受賞など世界的な数々の賞を与えられるだけではなく興行的にも大成功する。
映画のタイトル名の『ボウリング・フォー・コロンバイン』の意味は、銃撃犯たちが心酔していた歌手のマリリン・マンソンや銃規制に反対する全米ライフル協会(NRA)が『乱射事件を誘発した』としてマスコミで厳しく批判されていたことに由来するらしい。
凶悪な銃撃犯たちですが、大量殺人の直前までボウリングを楽しんでいたが、誰もボウリングと銃乱射を関連付けるものがいない事実を皮肉ったもの。
保守派メディアからは『犯人たちがマリリン・マンソンの影響を受けた』と非難したが、後に『銃の乱射とマンソンの影響は無関係である』と否定された。
ところがニューヨーク・タイムズやワシントン・ポスト等のリベラル紙の唱えた『銃乱射を誘発したNRA』の方は、今でも少しも変わらず主張され続けられている。
今回もまったく同じで、オバマ大統領までが主張しているリベラル紙の公式見解(社会常識)なのである。
『ボウリング・フォー・コロンバイン』では全米ライフル協会(NRA)会長のチャールトン・ヘストンの狂気も描かれているが、しかしカナダはアメリカ以上に銃の普及率が高いが銃乱射事件の発生率は低い。
銃の乱射とボーリングやマリリン・マンソンが無関係であるように、実は主犯であるかのごとく描かれている全米ライフル協会(NRA)も、本当は濡れ衣(意識的な冤罪事件)の可能性が高いのである。
マイケル・ムーア監督ですが『ボウリング・フォー・コロンバイン』では無くて、ドキュメンタリー映画を『NRA・フォー・コロンバイン』として制作するべきだったのかも知れない。
銃の普及率が高いカナダがアメリカとは違い何故銃乱射が起きないのかの『答え』は至って簡単であり、『永久に終わらない戦争を続けるアメリカ』の特殊性を指摘するだけで十分だろう。
世の中に原因の無い『結果』(奇跡)は決して生まれない。何の不思議も疑問も無いのである。
アメリカでは乱射事件の発生する度に一般の人々は銃器を買い求めるし、コロンバイン高校銃乱射事件の1999年には銃規制賛成の世論は6割以上の多数派だったが、今は世論が逆転している。
乱射事件の引き金はボーリングのプレイでもマンソンの歌でもない。NRAは原因では無くて、その結果である。
第二次世界大戦終了後にアメリカでは延々と戦争を続けていたことが頻発する銃乱射の誘引であり、2001年の9・11事件から始まった対テロ戦争こそが真の原因だった。

『蔓延する銃と麻薬と憎悪の三重苦に喘ぐ黄昏の大帝国アメリカの断末魔』

『ワン・ドロップ・ルールのアメリカの矛盾と混乱』

オバマ大統領は黒人大統領だと信じているが、正しくはハーフ(1/2だけ黒人)であり、黒人から見ればオバマ大統領は1/2白人である。
あるいは歌手のマライア・キャリーは白人に見えるが自分で『黒人である』と名乗っている。
アメリカではオバマのように母親が白人でも、マライア・キャリーのように肌が白くても『黒人』に分類されるが、黒人の血が混じれば黒人だと看做す『ワン・ドロップ・ルール』で、アメリカでは白人と黒人の『二つのカースト』しか認めない。
アメリカ人とっての最大の恐怖とは、ある日突然に自分の先祖に『黒人がいた』ことが判明することらしいが『ワン・ドロップ・ルール』でアメリカ人の精神を深く蝕んでいる。『モンテ・クリスト伯』の作家アレクサンドル・デュマは混血(クレオール)だがフランス人は誰も文豪デュマを黒人とは呼ばない。

世界最大のトヨタ自動車のアメリカ人役員が麻薬密輸で逮捕されるが、アヘンの麻薬成分を合成した『オキシコドン』はモルヒネよりも強力な鎮痛作用があり、マイケル・ジャクソンの死亡原因だといわれている。
オキシコドンの過剰摂取によりアメリカでは銃による死亡よりも多い年間16000人以上が死んでいるし、世界中のオキシコドンの消費の8割がアメリカ一国で使われていると言うから無茶苦茶。
今のアメリカの現状ですが交通戦争ならぬ、もはやオキシコドン戦争であるが何故か日本ではその実体が報道されることは無い。
銃規制に反対する圧力団体としての全米ライフル協会の話は日本でも詳しく語られているが、銃以上の死亡者が出ている医療用麻薬による薬物被害に関してマスコミが沈黙している理由はNRA以上に強力な製薬会社や損害保険会社、医療産業の圧力が考えられる。

『頻発するヘイトクライム(銃乱射)の恐怖』

ブッシュ大統領が9・11事件を口実に始めたイスラム過激派との永久に終わらない『対テロ戦争』では『愛国法』など人権抑圧法案が次々可決され一般社会全体が一変する。
9・11後、政府の言うとおりに治安対策が強化にされるが、アメリカ全体が目に見えて悪くなる。
過激派テロの2倍の『ヘイトクライム』(hate crime、憎悪犯罪)がアメリカでは発生していた。今年6月、アメリカ深南部のバイブルベルトであるサウスカロライナ州チャールストンにある最も由緒有る黒人教会で、白人至上主義者が銃を乱射し説教していた牧師や州の上院議員を含む黒人の男女9人が死亡した。
ところが全米ライフル教会(NRA)は反省するどころかツイッターで銃規制に賛成だった犠牲者の一人であるクレメンタ・C・ピンクニー上院議員を罵倒。『もし彼が銃所持を認めていたら、教会にいた(ピンクニー氏を除くそれ以外の)8人は生きていただろうに。彼の政治的なスタンスのせいで、無実の人が亡くなった』と主張した。
『銃が人を殺すのでは無い!人が人を殺すのだ』NRA会長チャールトンヘストン、『銃を持った悪いやつらを止めるには、良い人間が銃を持つしかない』ラピエール副会長。『全米のすべての学校に銃と警官を配備することだ』NRAウェイン・ラピエール会長。『目には目を歯には歯を』で、無差別銃撃事件を『銃には銃を』でNRAは解決出来ると思っていて、少しも自分たちの発想に疑問に感じていない。そもそもの根本が狂っているのである。

『全米ライフル協会日本支部長?としての安倍晋三の大きな勘違い』

260年前の建国以来、憲法で武器の所持(自主防衛、自衛権の自由)が保障されているアメリカの全米ライフル協会(NRA)と、対照的に豊臣秀吉の刀狩以来、400年間も厳重に銃器が管理され市民全員が丸腰の日本人。
無茶苦茶な安倍晋三『なんちゃって平和法案』(国会答弁)も、日本国首相ではなくて『全米ライフル協会日本支部長』なら全ての辻褄がピッタリと合う。
米ライフル協会会長のチャールトン・ヘストンは『枕の下に銃を入れていると、安眠出来る』と語っている。
この考え方は安倍晋三など、憲法9条で外国(北朝鮮)が攻めて来ると思って心配で心配で眠れない日本の改憲派と共通する感性でしょう。
武装すれば安心でき、非武装は(誰かが襲って来ると思って)不安で不安でたまらない。
アメリカでは『武装していないと襲ってくる』との考え方は大は国家から小は市民一人一人まで共通の考え方で一貫していて筋が通っている。
日本の右翼のように国家の武装を言って個人の武装を言わないのは胡散臭いし主張自体がニセモノである。
民主主義国家ならば、国家に武装権があるなら、なおさら個人には武装する権利がある。アメリカでは第三次世界大戦(ヨハネ黙示録にあるハルマゲドン?)が必ず起こると思っている人々が沢山いて数千もの民間武装組織(ミリシア)が常時軍事訓練に励んでいるし、核シェルターを自家用に用意して食料や武器弾薬を備蓄している人もいる。
世界の常識である公的医療保険にさえ反対する人が大勢いるアメリカは『自助努力』、『自己責任』がモットーの世界なので、『自主防衛』が基本的な考え方。
ところが不思議な事に日本では国家の武装を主張する人はいても個人の武装を主張する人は一人もいませんが、これは主張が一貫していない。物事の根本を理解しておらず基本的に間違いである。
何故なら国家の武装(自主防衛)の基本思想は、他人に頼らず『自らを自らが守る』ことである筈で、それなら国家の武装の必要があるなら、それ以上に個人の武装が必要になる。
それなら皆が家の下を掘ってシェルターを作り水と食料、手斧とかボーガン、猟銃を用意する必要が生まれる。
此処で一番大事な注意点は一瞬の手抜きも駄目で、片時も油断せず24時間常時周りを監視すること。
家の境界を超えて入ってくる不審者は、たとえ親しい隣人でも無断の時は散弾銃で警告のために一発お見舞いするべきなのです。
これでは周りの隣人すべてに嫌われるが、何よりも大事な自分の安全の為です。この程度の不利益は仕方ないと諦めて、我慢しなければならないのです。
(長年続けていたアメリカ人が今では『大失敗した』と感じているやり方を、慣れない日本人が真似して成功することは決してない。必ず失敗する)




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2 コメント

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コロンバイン (来たよー)
2015-12-14 08:03:30
コロンバイン高校事件についてのNHKのアナザーストーリーズという番組がよかったです。
犯人はスクールカーストの最下層のひ弱でガリ勉タイプだった。人付き合いがうまくいかずいじめを受け、暴力も受けていた。
彼らは爆弾も用意していて500人を吹っ飛ばす計画だったが失敗した。
彼らは白い帽子の奴は立て、と言った。この高校ではスポーツができる優秀な生徒にだけ白い帽子をかぶることを許可していた。

銃が気軽に手に入るというのが問題というのは確かにそうですが、いじめとか、暴力の連鎖とか、に光を当てないと、この事件を理解できないのです。
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いじめとか暴力の連鎖 (宗純)
2015-12-18 16:30:46
来たよーさん、コメント有難うございます。

犯人を含めて15人が死亡したコロンバイン高校事件ですが、これは日本国内でも大騒ぎになるが、アメリカでは日常茶判事。
その後高校ではなくて、小学校での銃撃事件ではもっと多くが死んでいる。
『いじめとか、暴力の連鎖とか』ですが、無関係だとは言わないが、関係性は薄いですよ。
アメリカで度重なる銃撃事件ですが、これは延々と戦争を続けているアメリカの病巣を無視しては話が成り立ちません。
問題なのは無差別銃撃事件ではなくて、無差別に人を殺すアメリカ政府の戦争そのものなのです。
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