ほぼ黒ネコのキュウには、お気に入りの赤いネッカチを時々頭に巻いてあげている。が、異様な姿にウリが怒り出して、取っ組み合いのケンカになってしまう。困ったもんだ。仕方がないので、おもちゃ箱の中から金色のゴムをキュウの首につけてあげてみた。なにか物足りなさそうな顔で、ジーッと私をにらむ。洗濯ばさみが目に付き、それを金色のゴムに。「わ~、キュウちゃん、金メダルみたい~。似合ってるう~。かっこいい~」と馬鹿らしくも手をたたいて、おだててみた。キュウの目が満足気に私を見る。気に入ったらしく、ずーとぶらさげていた。キュウはへんなネコだとつくづく思う。
このところ急に寒くなってきてもうた。二匹のヤンキー娘のために、寝るときは私の布団の横に一畳用のホットカーペットとダウンコートを出してあげている。部屋の電気がついている間は、ホットカーペットの上にあるダウンにもぐって寝ている。が、電気を消すと同時に二匹は活動開始となる。暗闇の中で「ボリボリ、ガリガリ」とドライフードを食べ、二匹で部屋を何周か走り回る。毎度のことだが、真夜中の障害物リレーだ。しばらくすると、洋ネコのウリが先にビーズクッションの上で「ブヒブヒ」といびきをかきはじめる。ほぼ黒ネコのキュウは、私の布団の中で寝る。私の布団は電気シーツがあるからポカポカなのだ。キュウの寝相は凄まじい。脇腹を何度も蹴られる。目覚めるといつもキュウが真ん中で寝ていて、私は端に追いやられている。私の布団はキュウの寝床と化している。キュウの蹴り、ウリの「ブヒブヒ」いびき、とーちゃんの地鳴りのようないびき。静かに一人でぐっすり眠りたい・・・。
ヤンキー娘の一匹、キュウはネコと思えない時が多々ある。先日も、もう一匹のヤンキー娘のウリの首に赤いネッカチを結んでいたら、うらめしそうに眺めていた。「あんたも、赤いネッカチしたいのかい」と、キュウの首ではなく頭に巻いてあげた。普通、ネコはイヤがるはずなのに、どうも気に入ったようで、はずさなかった。「キュウ、こっち向いて」と言ってキュウの顔を見た瞬間に、とーちゃんと大爆笑してもうた。「赤いネッカチのヨーダみたいだぁ~」と笑いが止まらない。私たちが笑ったのがいけなかった。キュウは、結構お気に入りだったみたいなのに、みるみると不機嫌な顔になってしまった。それでも、キュウはネッカチをはずそうとせず、「なによ」という顔で家の中を歩き回る。これ以上、笑ったらキュウのプライドが傷つく。笑いをこらえる方が、かなりつらい。かくして、この妙ちくりんなキュウの赤いネッカチは時々巻いてあげている。