おくうと読みます。屋根の上にとまったカラスのことのようだ。奉行だった父が斬殺され幼い弟を育て上げ、気が付けば婚期を逸していた姉の揺枝(ゆえ)。ふとしたきっかけで知り合った顔に傷があり藩のならず者と云われている与四郎との初恋を清冽に描いている表題作ほか全五編の時代小説集。乙川優三郎の描く女性は繊細で芯が強い。