山本周五郎の郷里、甲州の雄大な自然を舞台にした怪奇幻想の大ロマンだと思う。突拍子も無いストーリーに驚かされるが、末尾で主人公半之助が花世と共に法王山を眺めながら、これからの500年、1000年後にも誰かがここに来て同じようにあの山を眺めるだろうかと語り合うシーンが本書の全てだろう。山本周五郎の想いが伝わってくる一冊だ。