広島市内の小さなギャラリーで開催中のグループ写真展を見に行った。出展しているのは、同じ隊員としても活動中のプロ写真家さんが主催する教室のアマ受講生10人。その一人がたまたま隊員の知り合いだったこともあり、広島での仕事の翌日に訪れた。
四季の棚田、北欧の街角、女性たちが輝く瞬間―。撮る技術はそれぞれバラバラだが、共通するのは対象に対する深い興味。どんどん好きになること。勉強はそれからだ。
知り合いの受講生の作品は、高齢者施設で暮らす認知症の父親にレンズを向けたものだった。
職員に入れ歯をはめてもらうため大口を開けるお父さん。静かにじっとレンズを見つめるお父さん。説明文によると、父親はモーレツな仕事人間だったという。
なぜ、被写体を父にしたのか。推し量るすべもないが、どの写真からも撮り手の深い愛情と、心の揺れが伝わってくるようだった。その昔、隊員が写真に興味を抱くきっかけをくれた作家・椎名誠さんも「写真の原点は家族の記念写真」と言ってたな。
「店番」をしていた男性受講生の一人は、末期がんである自身の日々を写している。「写真を撮ることを知って、新しい楽しみができた」。抗がん剤治療を続けながら、これからも撮り続けるという。その生き方自体、「作品」なのかもしれない。
ギャラリーがあった町は、隊員が以前暮らしていた町の隣町。町を離れて6、7年の間に、ギャラリーが入るビルを含めて新しい建物や店がけっこうできていて驚いた。ふらふらと歩き回り、何度か訪れたことのある老舗のホルモン天ぷら屋も確認! ノスタルジックな気分に浸った後、あわてて今日の任務地、尾道へ向かった。