福富ストラット

「記者ときどき農夫」。広島の山里で子ども向け体験農園づくりにいそしむ、アラフォー新聞記者のブログ。

写真の力

2019-10-16 23:36:24 | 日記
 広島市内の小さなギャラリーで開催中のグループ写真展を見に行った。出展しているのは、同じ隊員としても活動中のプロ写真家さんが主催する教室のアマ受講生10人。その一人がたまたま隊員の知り合いだったこともあり、広島での仕事の翌日に訪れた。
 四季の棚田、北欧の街角、女性たちが輝く瞬間―。撮る技術はそれぞれバラバラだが、共通するのは対象に対する深い興味。どんどん好きになること。勉強はそれからだ。
 知り合いの受講生の作品は、高齢者施設で暮らす認知症の父親にレンズを向けたものだった。
職員に入れ歯をはめてもらうため大口を開けるお父さん。静かにじっとレンズを見つめるお父さん。説明文によると、父親はモーレツな仕事人間だったという。
なぜ、被写体を父にしたのか。推し量るすべもないが、どの写真からも撮り手の深い愛情と、心の揺れが伝わってくるようだった。その昔、隊員が写真に興味を抱くきっかけをくれた作家・椎名誠さんも「写真の原点は家族の記念写真」と言ってたな。
 「店番」をしていた男性受講生の一人は、末期がんである自身の日々を写している。「写真を撮ることを知って、新しい楽しみができた」。抗がん剤治療を続けながら、これからも撮り続けるという。その生き方自体、「作品」なのかもしれない。
 ギャラリーがあった町は、隊員が以前暮らしていた町の隣町。町を離れて6、7年の間に、ギャラリーが入るビルを含めて新しい建物や店がけっこうできていて驚いた。ふらふらと歩き回り、何度か訪れたことのある老舗のホルモン天ぷら屋も確認! ノスタルジックな気分に浸った後、あわてて今日の任務地、尾道へ向かった。

初めての道具にコーフン

2019-10-13 22:19:29 | 日記
 台風の吹き返しの風が残る午後。近くの神社の小さな秋祭りを抜けだし、あすのイベントの準備のため会場へ向かう。長らく使っていない焼き芋機とピザ窯に、「お試し」で火入れをするのだ。
まずは、別の神社から運び出した廃材を適当な長さにカットする。よし! ん? でも、どうやって?
 「あ、これ使こーて、やっといて」。一緒に準備してくれる地元の役員さんが、丸型の電動ノコギリを指さしてさらりと言う。うーん、使ったことないけど…。
でも、さっき役員さんがやってたのを見たら、そんな難しい仕組みでもないようだ。「はーい」。あっさり引き受け、電ノコを抱えてピザ窯のそばの廃材の山へ。要は、けがをしなけりゃいい。見よう見まねでやってみる。
 「スパンッ」とは切れてくれない。当たり前だ。切るときの廃材の置き方、力の入れ方、刃を入れる場所、角度をちょっとずつ変えながら試していると、徐々にコツが分かってくる(つもりになっているだけ)。道具が使えるとなんだかとても楽しくて、ひとり悦に入る。
 山里暮らし2カ月。しばしば、使ったことのない道具を扱う機会を得た。インパクト、草刈り機、チェーンソー、ユンボ、電ノコ…。「はじめてのお使い」ならぬ「はじめての道具使い」。どれも、持ち主さんはちらっと口で説明してくれるが、あとは「じゃ、やっといて」が基本だ。「え!? これ、俺が使っていいんですか。壊すよ」と内心いつもビビる。
「使うてみんにゃ、分からんじゃろ」とあっさり任せてくれる持ち主さんたち。ごもっともです。「臆病なぐらいが、ケガせんけえちょうどええんよね」
 隊員はどの道具も当然、使いこなせない。けど、「使えないことはない」ぐらいにはなった(つもりになっているだけ)。勘違いでも、自分の自由度が広がった気がしてコーフンする。次はどんな道具に手を出そうか。

秋祭り最盛期

2019-10-13 07:04:59 | 日記
 祭りの秋。酒どころ東広島市西条で、酒まつりが開幕した。台風の影響も大きくなかったようで、有名アーティストのステージなどが予定通り行われた。2日間で約20万人を集める巨大イベントの華やかな幕開けの一方、隊員が住む福富町のわが地区では、小さなお祭りの準備がひっそりと進んでいた。
 わが家のそばの小さな丘にある神社の秋祭り。丘の一部は、毛利家家臣の居城跡なのだという。数日前、家のそばに電柱並みの立派なのぼり旗が2本立った。
 強風で支柱がキーキーとしなる音を聞きながら眠った翌日。畑仕事中のお隣さんと話していると、あれ? 旗がなくなっていることに気付いた。「風で旗が破れちゃったみたいよ!」。お隣さんが張りのある声で言う。見れば地面に竹竿が2本、倒してある。救急車の到着を待つ負傷者2人のよう。
 祭り前日の土曜夜は、役員さんだけを集めて神事が行われるらしい。すっかり日の沈んだ午後7時。漏れ聞こえてきた厳かな太鼓の音につられ、薄汚れたフリースを着込んでふらふらと神社へ向かった。
 風はビュンビュンと吹き荒れている。素早く流れる雲の間から、満月が顔を覗かせて夜道を照らす。周りは田んぼと畑。こんもりとした林の中の参道が、黄色い電球の光に浮かび上がる。千と千尋か、もののけ姫か。トトロの森か。とにかく、神様か不思議な生き物か、いそうだな。
 神社への階段を登ると、きちっとした格好をした役員さんたちが正座し、宮司の下で静かに神事を進めていた。浮浪者みたいな格好の隊員。鳥居のそばから遠慮がちに神事をながめ、家路に就いた。
 祭り本番はきょう日曜日。神楽奉納や子どもみこしがあるそうだ。

田んぼ作戦お預け

2019-10-11 23:44:58 | 日記
 隊員が密かに企んでいる「隣の田んぼ借りてしまえ作戦」。思い立ったが吉日。さっそく根回ししたくなった。田んぼを世話しているグループの一人、近所の恰幅のいいご主人に「来年、あの田んぼで米作らせてくださいっ!」と持ちかけようと思ったのだ。ちょうどいい。今夜はご主人に誘われて入ったおっさんコーラスグループの練習日。そこで不意打ちだ!
 とはいうものの、野良仕事経験ゼロ。マッチョ大家さんの指導の下、基本的な野菜作りはのらりくらりと始めているが、いろいろ大がかりなことになりそうな米づくりは、「いろは」の「い」も知らない。「おまえ、田んぼなめてんのか」と恰幅良く怒られるかも…。
 ちょっとドキドキ。でも、田んぼ構想が芽生えるかもしれず、たいぶ心ワクワクしながらいつもより早めに練習場に駆けつけた。
「こんばんわぁ」。ん? いつも皆勤で、早々に会場に来ているご主人の姿がない。おかしい。すでに到着していたご主人の奥さんに聞くと、「隣町の稲刈りの手伝いに行ってて、今日は来れんよ」。
 肩すかし! クラスのマドンナに告白しようと思って意を決して登校したら、マドンナがおなか痛くて休んでたみたいな感じ! うーん、だいぶ違うな。。。
 ともあれ、練習は粛々と進む。台風接近に伴い、早めに終了。進展なしで家路に就いた。
田んぼオーナーであるマッチョ大家さんに先日、ちょろっと相談したときは、「『田んぼ使いたい』言えば大丈夫よ。まあ、わしゃ米はよう教えんけどね。がはは!」とおもしろがっていた。
田んぼ作戦の先行きは、まだまだ霧の中。


全滅の田んぼで

2019-10-10 22:41:50 | 日記
 わが家の畑(マッチョ大家さんの畑だが)の隣の田んぼは今、無残な状況となっている。稲穂がすべて倒れ、地面にぺったりとくっついてしまってちょうど1カ月ぐらいたつか。
 この田んぼを世話している恰幅のいいご近所さんによると、夏から秋にかけて繰り返し降った大雨の影響なのだという。確かに、初めの大雨時はごく一部が倒れているだけだったが、避難勧告が出るほどの雨が続くうち、いつの間にか見事に全部倒れてしまっていた。春から育ててきた稲が、最後の最後でこんな仕打ちに遭うなんて、自分ならペコンとへこみそうだ。
 「ノーサイに被害の調査に入ってもらうけえね」。9月下旬、田んぼを世話する一員の別のご近所さんが、いつも通りひょうひょうとした顔で言っていた。ノーサイ(農業共済)に現地調査してもらい、被害が認定されれば、共済金で補償してもらえるのだという。
 数日後、ノーサイの調査員らしき見慣れない男2人(ここでは隊員の方が「見慣れない男」だが!)が器具を抱え、稲ぺったりの田んぼに入っていそいそと何か調べていた。翌日、田んぼの脇に「12月中旬に損害評価を最終決定します」と書かれた立て札があった。
 いまだに稲ぺったり状態が続く田んぼを日々、痛々しい思いで見やる。そのうち隊員は、密かに企み始めた。
 ここ借りちゃう? ここで米作りたいな。
 計画中の「こども農園」の一環であるのに加え、そもそも隊員自身がアラフォー隊員となって「働き方と暮らし方の転換」を目指そうとした動機のひとつに、「原発事故や世界飢饉が起きてもうろたえんよう、家族が生き延びる食いもんぐらいは自分で作るぞ!」と逆ギレぎみの計画があった。家のすぐそばの田んぼなら、文句なし!
 実は、この田んぼはわがマッチョ大家さんの土地。大家さんの両親が亡くなり、田んぼを世話する人がいなくなったため。地域のグループに貸して米を作ってもらっているのだ。その地域グループも高齢化が進み、たくさんの田を請け負うのは大変らしい。これは狙い目。
 田んぼ、やらねばならんのです。