近畿大学工学部では、地域の人々を対象に学部の講義・研究内容を体験させる場として公開講座を開催されていて(年度を、上期と下期に分けて募集)、さまざまな分野の知識を、専任教員がわかりやすく講義していただいています。
今回、私が受講したのは後期の講座の一つ「音楽への情報ハイディング」(講師/情報学科 教授 荻原 昭夫)平成26年1月11日(土)10:00-12:00です。
事前に申込をしたら、大学当局から教室の場所などの案内状が届きました。今までこちらの大学で私が受けた講義教室は、いつもメディア館1階でしたが、今日はその奥の建物の2階になりました。こちらのキャンバスは、敷地が広いだけでなく建物も色々あります。
【案内地図】
【とうり橋を渡って】
【案内にしたがって教室へ】
この講義は、音楽に“新たな情報を隠す”ことを可能にする「情報ハイディング技術」について学ぶものです。「情報ハイディング技術」を応用することで、“音楽に様々な付加価値を与えること”や“他人に怪しまれることのない秘密通信を行うこと”ができるのですが、今回の講座においては、CDやダウンロードにより入手される音楽コンテンツを対象とした「電子透かし」と呼ばれる情報ハイディング技術を中心にしたお話しでした。
近畿大学工学部 情報学科教授 荻原 昭夫
~ 音楽への情報ハイディング~
○ デジタル時代に注目の技術「電子透かし」
お札に「透かし」があるように、音楽や映像にも気づかれないように別の情報を埋め込む「電子透かし」という技術がある。
ダウンロードした音楽の著作権の保護など、身近なところで活用される注目の技術
この技術には世界的な統一基準や規格がなく、各国が手探り状態で研究している。日本では最近、他の国に先駆けて、規格化しようという動きが起きている。
○ 音楽の中に情報を埋め込む情報ハイディング
デジタルコンテンツには、静止画、動画、音楽などの情報がある。
その情報の中に、普段は知覚されないように、こっそり別の情報を埋め込むのが情報ハイディング技術でる。
デジタルコンテンツの流通増加にともない、不正配信などによる著作権保護が課題となっている。「電子透かし」の技術を使えば、不正配信や不正流通を防ぐ事ができる。
音質に影響を与えないように、音楽コンテンツに著作権情報を「電子透かし」で埋め込る。
人の可聴域より外れた周波数領域に埋め込むと、圧縮ソフトで削られることがあるので、あえて可聴域に埋め込む必要がある。
小さい音で埋め込むことも可能だが、ユーザーの了解が得られないこともある。
そこで、埋め込みが雑音として知覚されても、違和感のない心地良い音にするような研究も行っている。
○ 電子透かしの技術で、監視カメラが証拠になる!
デジタル映像は裁判の時に証拠にならない可能性がある。それは、簡単にコンピュータで改ざんできるため、証拠性が低いからだが、監視カメラを撮影する際に、壊れやい「電子透かし」を埋め込めば、誰かが意図的に改ざんした場合、壊れた電子透かしから、すぐに改ざんを検出することが可能になる。
これは、音声だけでなく映像にも適用される。
○ より多くの情報を埋め込む技術
デジタル情報の大きさには、下記のような関係がある。
文字データ < 音楽データ < 画像データ < 映像データ
音楽コンテンツ自体の容量が小さいため、その中に埋め込める情報量も小さく、応用範囲が限定される。そこで、複数の電子透かしを多重に埋め込み、情報量を増やせば応用範囲が広がる。こうした音楽電子透かしの「多重化手法」を提案している。
今まで1つのサンプル群に1bitずつの情報を埋め込んでいたものを、更に3分割して1bitずつ埋め込む・・・これをできるところまで繰り返して細かく埋め込んでいく。このようにして、小さなデータに大きな情報を埋め込んでいくのが多重化手法である。
細かく分割するほどたくさんの情報を埋め込むことができるが、その一方で音質が落ちていったり、攻撃に弱くなってくる。
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