高校選手権決勝 滝川第二高校 ｖｓ 久御山高校

第８９回全国高校サッカー選手権大会　決勝 2010.01.10(Mon) 14:05KO 会場：国立霞ヶ丘競技場 観衆：３５，６８７人
久御山高校	3	0-2	5	滝川第二高校
		3-3
得点者 林　祥太 安川　集治 坂本　樹是	時間 ２４分 ４０分 ５４分 ５７分 ５９分 ８４分 ８６分 ９０＋５分			得点者 浜口　孝太 樋口　寛規 本城　信晴 浜口　孝太 樋口　寛規

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公式記録

昨年末に始まった高校選手権もこの日がもう決勝戦。
今大会の現地観戦は結局開幕戦と決勝のみとなってしまった。
決勝のカードは久御山と滝川第二。久御山は全くのノーマークで
開会式の整列で手をバタバタ振る妙なアピールと中京大中京の宮市のスピードに
ぶち抜かれている映像しか記憶になかったけどあれよあれよという間に
決勝まで辿り着いた。
滝川第二は初戦での大勝を見てこれは決勝まで行くかもと思ったらホントに
決勝までやってきた。話題校が早々に敗退するのでこれは行けるかもと
感じていたのでこれは予想通りか。

久御山はショートパスで繋ぐスタイルで報道によるとバルサに強い影響を
受けているらしい。滝川第二は１回戦をテレビで見たがダブルブルドーザーと
呼ばれる１１番浜口、１０番樋口の２トップの破壊力が売り物。
滝川第二も攻める時はパス交換で繋いでくるが、ボールキープの意識では
久御山のほうが強い。ただ久御山は少々判断スピードに難がある。
滝川第二は相手がミスするのを待ち受け逆襲する形なので久御山から見れば
『持たされている』とも言えるかも知れない展開。
久御山はドリブルの得意な坂本、攻守の基点となる足立が目立つ存在。

立ち上がりは久御山。４分、左サイドボールをキープすると
１１番安川を経由して中央にいる２３番林が左サイドへダイレクトで
はたく。これは少しボールが延びてしまったが１０番坂本が追いついて
フォローに上がってきた１４番足立に戻す。足立はフリーの体勢から
滝川第二ＤＦとＧＫの間を通すセンタリング。これにファーサイドで
２０番鍋野が飛び込むが惜しくも合わず。
しかし、このシーンは良い攻撃の形だった。

５分、久御山２２番山田の縦パスを受けた１１番安川がマークするＤＦを
背負いながらも反転しシュート！しかしこれはＧＫの正面。

１９分、滝川第二は左サイドで１３番白岩が１人抜いて仕掛ける。１０番樋口に
ボールを当ててリターンが返ると７番谷口がダイレクトでＰＡ内で張っていた１１番浜口へパス。
浜口は久御山・山田にブロックされてシュートを打てなかったが、谷口の浜口へのダイレクトパスは
非常に良かったと思う。これも個人的に気に入った攻撃の形だった。

２３分、滝川第二のスローインから複数のパス交換で
左サイドでキープすると、右へ大きくセンタリング。
これを９番本城が頭で折り返してゴール前の１１番浜口が
ＤＦを背負いながらもトラップから反転してシュート！！
これが決まって滝川第二が先制点を挙げる！！
浜口は今大会６ゴール目をゲット。

３１分、久御山は右サイドでボールをキープすると６番二上が安川にスルーパス。
安川には２人マークが着いたので左後方へフォローに寄っていた坂本へボールを戻す。
ここで坂本はドリブル出来るスペースがあると判断するやすかさずドリで仕掛け突破。
折り返しのクロスは滝二ＧＫ中尾にパンチで弾かれるがゴール前に詰めていた足立が
待ち構える形でヘッド！！しかし足立のヘディングに呼応するように滝二４番土師が
ヘッドでクリア！！何とか事なきを得る。

３９分、滝二の攻撃。ボランチから縦にボールを出して浜口が右にはたいて展開。
パスを受けて持ち込んだ滝二右ＳＢ１４番濱田が一瞬ドリブルのスピードを緩めて『タメ』を作り
顔をタッチライン方向に振り、蹴るインパクトではノールックで左斜め前方のＤＦライン裏
スペースへ見事なパス。
これを久御山・山田の背後から大外で回ってきた滝二９番本城が受けるとゴール前へ
突進。久御山ＣＢ１３番山本のスライディングが襲い掛かる一歩前で左に横パス。
これを中央で詰めた樋口が１トラップからゴール左隅に落ち着いて流し込み２点目をゲットした！！
樋口はこれで大会通算７点目。加藤（立正大淞南）に追いついた。
この得点は決めた樋口もさることながら、濱田のノールックパス、それに反応した本城の
お手本通りなＤＦ裏への走りこみを高く評価したいかなと。

しかしすぐさま４０分、久御山はバイタルエリア中央で坂本のこぼれ球を拾った足立が果敢に
ドリブル突破。マークに着いた土師が堪らず足立を手で引っ張ってＰＡ内で倒したかに見えたが
主審のホイッスルは無し。これはＰＫかと思ったのだが・・・。
だが、この試合の展開は本当にめまぐるしい。同じく４０分、競り合いから後方に来たボールを
土師がクリアしようとしたところを安川がカット。安川はそのままドリブル突進。折り返しのマイナス
クロスを坂本がダイレクトで足に合わせるがミートせず右へ流れる。
そのボールを諦めずに拾いにいった足立がＣＫを得る。
このＣＫは上がってきた山本が頭で合わせるがボールは左へ逸れる。
４２分、滝二はゴールキックをヘッドで繋いでクサビ役の浜口が素早く久御山ＤＦ裏へパス。
裏を抜けた樋口が左斜めから右足で流し込むがボールはポストを叩きゴールならず。
このまま前半は２－０滝二リードで折り返し。

前半の攻防を文章化すると、ここまでとんでもないほどのボリュームとなってしまったが
ＤＦの戻るスピードの差や簡単に裏を抜かれる弱点から２点ビハインドを許しているとはいえ
久御山も攻撃面に関しては観衆誰をも魅了するサッカーを披露して飽きさせない。

後半も前半同様見所満載の展開へ。
５２分滝二の左スローインを受けた白岩がドリブルでえぐりクロス。これは久御山ＤＦに弾かれ
ボールがこぼれるが、これを拾った樋口が右にはたく。ボールを受けた濱田が再び中へクロス。
これもゴール前の混戦で弾かれるがこぼれ球に反応した本城が左足で流し込み滝二が３点目！！

これで試合が決着ついたかと思ったが、この試合はここからさらに点の奪い合いとなる。
５６分、久御山が右から仕掛けるとショートパスとスイッチ、相手のブロックも壁パスとなりながら
前進する久御山。最後は右に張る２０番鍋野の競い合いのこぼれ球を坂本が拾い坂本が角度の無い位置
からシュート！！これは滝二ＧＫ中尾が弾くがボールは後逸。
これを２３番林がプッシュして久御山が１点を返した！

だが滝二もその３分後、相手ボールをカットすると１５番香川が素早く前線へフィード。
これに反応した浜口がまた裏へ抜け出すとＧＫの位置をよく見たループシュートで４点目！！
浜口自身は今大会通算７点目。浜口の通算得点も加藤、樋口に追いつくことに。

久御山のパスサッカーばかりが良いように評価されるが滝二もパスを繋ぐときはかなり良いリズムで
プレーしている。滝二は２トップの得点力、個人の強さばかりが語られ勝ちになるけど右ＳＢ濱田は
試合を通して常に少ないタッチで強く早いパスを指向し、スペースを狙うパス出しの判断とセンス、
テクニックが素晴らしい。本人もそれを意識して行っているのがよく分かる。

少し試合の流れから横道にそれる話になったので話を戻す。
その後も両者一進一退で持ち味を出しながらチャンスを作り出す。
６４分、久御山は２０番鍋野に代え１７番赤谷に交代。
赤谷投入後は足立を３トップの前線に上げ得点を奪いにいく姿勢を強めていく。
７７分久御山は林を下げ１６番沼田を投入。
滝二も同時間に１３番白岩から１６番恵に交代。
８１分、久御山は中央から滝二ＤＦのクリアし損ないから得たボールを沼田がスルーパス。
坂本がシュートするもＧＫがナイスブロック。
８２分、久御山のＣＫからの２次攻撃を防いだ滝二のカウンター。左サイドでボールを運んだ
１６番恵が右サイドでフリーになっている樋口へラストパス。しかし樋口のシュートは右に逸れてしまう。
８３分、久御山は坂本がクサビの位置で粘ってキープから反転して前を向き足立～安川とパスが
繋がり久御山はパスによる中央突破から１点を返し４－２。安川のトラップはハンドぽく見えたが
主審の笛は無し。少し試合を面白くする演出もあったのかも知れないが・・・。



さらにその２分後、久御山はグラウンド中央でボールをカットすると二上が坂本へスルーパス。
今度は確実にトラップした坂本が落ち着いて流し込み久御山が３点目をゲット！！！
２点目を奪われる前あたりから滝二はＤＦ陣のマークが乱れていたが、これは久御山の
勢いに圧されてのものもあったと思う。これで久御山がもう１点入れて同点とすればドラマが
待っていたかも知れないが、アディショナルタイム５分に滝二樋口が久御山のクリアミスを
カットするとＧＫも落ち着いて交わしてダメ押し５点目をゲット！！
樋口の大会８ゴール目、自身の大会得点王となるゴールにより試合は５－３で決着が着いた。




一言で言えば両者良い持ち味の出た爽やかさの残るゲームとなった。
それを印象付けたのが試合後のこの１枚。準優勝の久御山部員が滝川第二部員と
一緒になって優勝を祝ってあげている。
やはり同じ関西地域同士の決勝ということだからだろうか。
一昔前のような汗と涙と悲壮感（根性）に裏打ちされた感動とはまた違う
若者らしいＷＩＮＷＩＮな有終の美もまた良いのではないかと感じる光景だった。