将棋界で大変なことが起こりました。おかしいことには、おかしいと発言すべきというのが信条なので、いくつか思うことを。医大生・たきいです。
将棋竜王戦の挑戦者となった三浦弘行九段が、対局中の離席が多いとして「カンニング」を疑われ、出場停止処分となりました。三浦九段は「全くのぬれぎぬ」「疑念を持たれた状況では対局できない」と竜王戦に出場しないことを申し出たとのことです。
ここ数年で、コンピューター将棋ソフトの棋力はプロレベルまで跳ね上がりました。私が小学生くらいの頃はせいぜいアマ四段レベルと言われていたので驚きです。将棋ほどプロとアマの実力差のある競技は他にないとも言われていて、アマ四段はプロの尺度で表すと奨励会6級くらい。その尺度で四段にならなければプロとは認められません。プロ棋士とは、盤上で競い、己と闘う孤高な存在です。私は、そんなかっこよくもどこか人間的なプロ棋士の先生たちが大好きで、尊敬し、8歳の頃から常日頃将棋のことを考えて暮らしてきました。
その将棋界は、コンピュータ将棋ソフトの影響で、今、在り方が変わろうとしています。プロ棋士が対局中、ソフトでカンニングしているのではないか。性善説から性悪説へと、日本将棋連盟は主義を変えようとしているようです。
棋士の不正行為を防止するため、
1.対局中のスマートフォンなどの電子機器の使用禁止
2.対局場からの外出制限
という2つのルールを12月14日から施行することになりました。「疑われるくらいならきちんと調べて欲しい」という考えはよくわかりますが、外出禁止はいくらなんでもやり過ぎだと思いました。以前のテレビ番組の羽生善治特集で、対局中の晩御飯は気分転換を兼ねて外出してサンドウィッチを食べる姿が放映されていて、子供のころ、随分と憧れたものです。行き詰ったときには散歩でもするのがよいと、羽生さんから教わったようなものでしたから。
そして、先の三浦九段カンニング疑惑問題です。三浦先生の直筆サインも持っていますし、ご著書も何冊か持っています。ファンとして、三浦九段がカンニングしているとは到底思えません。電王戦で使うスーパーコンピューターなどならまだしも、そもそもスマホの将棋ソフトごときが三浦先生の一手を越えるはずがない。冤罪であるに違いありません。一番好きな振り飛車党の棋士たちをコテンパンにやっつけてしまうところなど、少し気に食わないところもありましたが(笑)、私は三浦先生のファンです。「疑念を持たれた状況では対局できない」というのもごもっともです。渡辺竜王とのタイトル戦も楽しみにしていただけに悔しいです。
12月14日から施行される新ルールに抵触したというのなら分かります。対局中離席して仮に外出していたのだとしても、「法の不遡及」の原則に反している(※)ではありませんか。日本将棋連盟の説明は到底納得できません。
※東大法学部の後輩から、「法の不遡及」に関してコメントをもらったので加筆しておきます。2016/10/13
「当該ルール施行前から『「助言等カンニング行為」を行ったら負け』という一般的ルールがあって、それを今回スマホについて個別に明文化したってだけだと思うんだよね。
この場合、もとの一般的ルールに基づいて処分を下すことが不遡及ルールに反しているとは思えない。」
現竜王のブログを読んで、悲しい気持ちになりました。
「大変な事態になってしまいましたが、引き続き将棋界へのご声援を宜しくお願いします。」(渡部明ブログ2016/10/12)
私はいつまでも、将棋と、将棋棋士とのことは一生涯好きでい続けると思いますが、日本将棋連盟の残念な決定に際し、正直「将棋界へのご声援」を続けられる自信がなくなってしまいました。魅力ある将棋界に戻ってきて欲しいです。日本将棋連盟には、納得のできる説明を求めます。
(この事件で頭にきていたら寝落ちしてしまって勉強できなかった人(笑))