リリー・フランキー演じる作家大島兼三郎は、おそらくノーベル賞作家大江健三郎がモデルになっている。長男の大江光は脳瘤(脳ヘルニア)のある障害者で、その実体験をもとに『静かな生活』などの小説を書いている。本作の兼三郎も妻の明子(木村多江)が認知症を発症自宅介護を選択するものの、責任を最期まで全うすることができなかったことを悔いていた。その贖罪からだろうか、息子慧(錦戸亮)家族とも疎遠になっている兼三郎 . . . 本文を読む
キリスト教文化とイスラム教文化が移民労働者を通じて融合するなんて夢物語を信じるほうがどうかしているのであって、ちょっと景気が悪くなると....まったく逆のベクトルが働いて社会の雰囲気は移民排斥へと一気に傾いていくのである。不正投票を行わなければにっちもさっちもいかなかったアメリカ民主党の腐敗ぶりを見ていればわかりそうなものだが、本作でおそらく経済制裁国イランから西側への亡命を企ているらしい長男は、 . . . 本文を読む
20世紀FOXをディズニーが買収したことから、本作から製作方針が大分変わったかのように思えるデッドプール・シリーズ。ライアン・レイノルズ扮するデップーが、カメラ目線で語りかける“第4の壁”演出は本作においても健在で、移籍ネタを中心にやりたい放題。最近はデップーの仮面を被っていない素の時も“おふざけ”が抜けないキャラを前面に押し出しているレイノルズ。ゆえにこの演出、観客の皆さんにとって . . . 本文を読む
アマプラ公開を機に2回目となる本作の視聴。映画冒頭シーンが、濵口竜介の『悪は存在しない』とまったく同じだったことに今回はじめて気がついたのです。『悪は存在しない』では、人知の及ばないこの世ならざる世界の象徴として、森の木々を下から見上げるシーンが冒頭延々と続いていたことを憶えているのですが、役所広司演じる🚻清掃員平山は、なぜ神社の境内にはえている木々の木漏れ日を写真に撮り続けていた . . . 本文を読む
韓国の名優イ・ソンギュが永眠した、48才だった。麻薬使用を疑われての自殺だったという。よく通る声が印象的なこの俳優さん、ホン・サンスやポン・ジュノ作品で見かけることが多かったように記憶している。『エクソシスト』を彷彿とさせる本スリラーでは“夢遊病”におかされた夫を演じていて、発作的に自殺未遂をおこすシーンなどもあるので、ソンギュの死をある意味予言していたのかもしれない1本なのだ。市川実日子似の可愛 . . . 本文を読む
ジョン・フォードにハワード・ホークス、そしてアルフレッド・ヒッチコック。フランスの映画批評誌カイエ・デュ・シネマによって再評価されることがなければ、彼らは永遠にB級映画監督のレッテルをはられたままだっただろう。いわゆる“作家主義”という基準を新たに設けて、映画における芸術と娯楽の壁をとっぱらったというべきか。この職人気質的な“作家主義”の基準を満たしてさえいれば、娯楽映画とはいえ芸術にもなりえるこ . . . 本文を読む
彼らが“普通じゃない”と言うまでは僕が異常とは気がつかなかったたしかに僕は彼らとの会話が苦手口に出す言葉が思ってることと違ってたりするからやっかいなのさ全体をとらえてから部分を見るのが彼らなら僕の目には部分がまず飛び込んでくる雨が降っていることを理解するまでにとっても時間がかかったりするだから僕は突然叫んだり、跳びはねる見たものが頭の中で楽しい記憶の出来事と結びくと跳びはねたくなるしそれが悲しい出 . . . 本文を読む
この映画には3人の監督がいる。原作者の重松清と脚本の荒井晴彦、そして、荒井の大ファンだという正?映画監督三島有紀子である。1996年に発表された原作小説を荒井が気に入り映画化の口約束をしていたもののお蔵入りになっていたシナリオが、今回三島の手によって映画化されたようだ。重松の原作(未読)は例によって壊れかけた家族の再生がテーマで、血の繋がっていない子供に父親としての接し方が分からない男田中信(浅野 . . . 本文を読む
韓国の国家公務員試験に何度も落ち続けているチャヨン31歳は、いまだ独身の一人暮らし。セフレから一方的に別れを告げられ、ショックで大切な受験もすっぽかしてしまう。教頭先生をしているおっかないオンマは社会的に自立できていないチャヨンに厳しくあたり、そんな母親の目を逃れて時折姉の様子を見に来る歳のはなれた妹は大のお姉ちゃんっ子だ。コンビニのビニール袋から落っこちたビール缶を拾ってくれたヒジョンの美しい肉 . . . 本文を読む
「システム・クラッシャー」とは、あまりに乱暴で行く先々で問題を起こし、施設を転々とする制御不能で攻撃的な子供のこと。(公式HPより)若きドイツ人女流監督が撮った本作は、2020年のベルリン銀熊賞をはじめ、世界の映画祭で喝采を浴びた映画だそうだ。映画を見ていてふと思ったことがある。この監督実は別のエンディングを考えていたのではないか、と直感したのである。しかしその終わらせ . . . 本文を読む
“クワイエット・プレイス・シリーズ”のスピンオフ作品。エミリー・ブランド演じるお母さんと子供たちが登場するシリーズ前日譚として紹介されている。最近は、アメリカ大統領選挙関係のYouTube動画ばかり見ていたせいか、どうも脳ミソがトランプ推しの人々に大分汚染されてしまった気がする。ニュートラルなポジションに一度頭を戻したいと思っているあなたに、是非お勧めの一本だ。音に反応するエイリアンが今回も人間を . . . 本文を読む
過去に踏み込み、歴史を終わらせる。のっけからインディ・ジョーンズの顔にずだ袋を被せ、出ますよ出ますよ、ほ~ら出た~とばかりに登場する、すっかり生成AIで若返ったハリソン・フォードのご尊顔。リアルタイムで彼の勇姿を劇場で見たことのあるオールド・ファンはどう思ったのだろう。「人工的でなんか気持ち悪い」と違和感を覚えるのか、それとも「思った以上に良くできている」と感心しきりだ . . . 本文を読む
わずか58分という上映時間ながら、『雨に唄えば』や『ワンハリ』、『ラ・ラ・ランド』に『インターステラー』へのオマージュ、『バタフライ・エフェクト』なんちゅうわりとコアなSFのポスターまで劇中拝める一風変わったアニメーションなのである。シスターフッドの破綻を描いた『雨に唄えば』以外は、本アニメにも唐突に挿入されている「あの時ああしていれば、そうなっていたかもしれない」アナダーワールド描写が共通項にな . . . 本文を読む
R.M.N.って“ルーマニア・ナショナリズム”の略かなんかと思っていたら、まったく違っておりました。人間の脳の断面を撮影する“M.R.I.”の事だったのです。主人公マティアスの父ちゃんが脳腫瘍におかされていて、そのM.R.I.写真をスマホで何度も見ていましたよね。あれです。要するにこの映画、ルーマニアトランシルバニア地方の小村にスリランカから招かれた移民労働者を、不治の病“脳腫瘍”に例えているので . . . 本文を読む
「恥ずべきことにこの数世紀の音楽作品の音程はすべて偽りであり、音楽もその調声もエコーも、その尽きせぬ魅力も、誤った音声に基づいている。大多数の者にとって純粋な音程は存在しないのである。」「ここで想い起こすべきことは、もっと幸福だった時代のこと。ピタゴラスの時代だ。我々の祖先は満足していた。純粋に調声された楽器が数種の音を奏でるだけで。何も疑うことなく、至福の和声は神の領分だと知っていた。」主人公の . . . 本文を読む