ネタばれせずにCINEるか

かなり悪いオヤジの超独断映画批評。ネタばれごめんの毒舌映画評論ですのでお取扱いにはご注意願います。

RUN/ラン

2022年11月15日 | ネタバレなし批評篇


本作が初主演作となるタレ目が可愛いキーラ・アレンちゃん。見た目健康優良児そのものの身体つきなのだが、嘔吐、湿疹、喘息に下半身不随の満身創痍、車椅子生活で学校にも通わせてもらえない高3女子クロエを熱演している。ちょいと過干渉気味の母親ダイアンから、接種している薬の変更を言い渡されるのだが.....

自分の子供をあれやこれやと束縛して子供の未来を潰してしまう親のことを“毒親”と呼ぶらしい。このレズビアン女優サラ・ポールソン演じるダイアンがまさにそれなのだが、自分の子供に本当の“毒”を飲ませていた母親がもしも存在していたら、という仮定に基づいて作られたスリラーなのである。

17歳になるまで「ちょっとへンだわ、うちの親」と気づかないにも程がある鈍感娘が、突如として母親のことを疑い出すのもヘンな話だが、人里離れた母子で暮らす普通の民家を修羅場として描いたチャガンティ監督の演出力はなかなかだ。大学に合格すれば日本と違ってアメリカの子供は当然親離れするわけで、独立心旺盛なちょうどその年ごろの女の子が主人公なのである。

留守中母親の過去(簡単に見つかりすぎやろ?)を暴いたクロエがダイアンと敵対した結果、担ぎ込まれた病院から脱走するシーンが本作のクライマックス。毒を食らって意識朦朧状態のクロエが、病院のエスカレーターにぶら下がっていた志望校でもあるワシントン大学の看板?を目にするのである。そこに書かれていた「無限の可能性」というキャッチに勇気をもらったクロエは....

ケリー・ライカートの映画に出てくるような女性ならばとっくの昔に諦めている人生を、このクロエはロッキー・バルボアのごとく?力づくで奪い返すのである。(どうせフィクションなんだから)車椅子からいきなり立ち上がるぐらいの飛躍はあってもよかったと思うのだが.....クールでスマートなフェミニストばかりのハリウッドにおいて、アメリカ人らしく泥臭いヒロインを久々に演じてみせてくれたキーラ・アレンちゃんにとりあえず拍手の一本なのだ。

RUN/ラン
監督 アニーシュ・チャガンティ(2020年)
オススメ度[]

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