ネタばれせずにCINEるか

かなり悪いオヤジの超独断映画批評。ネタばれごめんの毒舌映画評論ですのでお取扱いにはご注意願います。

バニー・レイクは行方不明

2022年11月15日 | なつかシネマ篇

公開当時ネタバレ戒厳令がひかれ、劇場への途中入場も制限されちょっとした話題になったサスペンス作品だ。しかし、この映画冷静になってよくよく考えてみると事件らしい事件が何も起きていないのである。何も起きていないのに犯人が逮捕されるという、行方不明の少女の行方以上に不条理な作品なのである。

オーストリア生まれのユダヤ人オットー・プレミンジャーは、俳優時代に同じユダヤ人監督ワイルダーが面白がってドイツ人将校役によく起用したという。この人出演俳優をどなりつけるパワハラ演出でも有名で、プレミンジャーの映画によく出ていたジーン・セバークなどが、憔悴しきって撮影所を後にした逸話も残っているくらいだ。

同じくプレミンジャー作品によく出演している本作の主演女優キャロル・リンレイの場合はどうだったのだろう。いかにも従順そうなアイドル顔のキャロル、日本でもファンが多かったとは聞いているが、ラストのブランコを揺らすシーンなどはもしかしたら「もっと大きな声で‼️」とプレミンジャーにどやされたながらの撮影だったのではないだろうか。

刑事役で出演していたベテラン中のベテラン俳優ローレンス・オリヴィエには、さしものプレミンジャーも大人しくしていたとは思われるが、現場はプレミンジャーの怒号で結構荒れに荒れていたのではないだろうか。ボーマン船長役で有名なキュア・デュリアも役柄同様キャロルのフォロー役にまわった(あくまでも想像だけどね)と思われるのである。

そんなデュリア演じるシスコン男スティーブンの目的は、昔のように妹アンと仲良く“バニー探し”ごつこで遊ぶこと。妹アンにしてもあそこで邸宅に戻ったということはスティーブンの意図に始めから気づいていたわけで、にもかかわらず、官僚的な幼稚園の対応にあれほど大騒ぎして、わざわざ警察沙汰にする理由などなかったはずなのだ。

プロットの大どんでんかえしにばかり注目していると、実の◯と(過激な)かくれんぼをしていただけの男についての真の罪状を見逃すことになる。せいぜい騒乱罪か偽証罪で、厳重注意を受けるか精神病院直行がいいところ。なにもお縄にかけて◯と引き離す理由などどこにも見当たらないのである。プレミンジャーの過激撮影の方をよほど問題にするべき1本なのだ。

バニー・レイクは行方不明
監督 オットー・プレミンジャー(1965年)
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