ネタばれせずにCINEるか

かなり悪いオヤジの超独断映画批評。ネタばれごめんの毒舌映画評論ですのでお取扱いにはご注意願います。

ビッグ・リボウスキ

2018年05月06日 | なつかシネマ篇


『ゼア・ウィルビー・ブラッド』(以下TWB)→『インヒアレント・ヴァイス』(以下IV)→本作の3本を時系列に見た方が、(タイトル以外ほとんど関連性のないチャンドラーの小説を追うよりも)より理解の深まる作品だ。

IVの約20年後のLAを舞台にしているが、流行りの音楽や髪形以外ほとんど何も変わっていないことにまずは驚かされる。金のことにしか興味のない支配層は相変わらず腐っているし、善良なパンピーは酒とドラッグとセックスに操られ知らず知らずのうちに戦争へと駆り出されていく…

狂言誘拐を使い込み隠しに利用しようとした事件に巻き込まれたニートおじさんデュード(ジェフ・ブリッジス)のドタバタ劇は、勘違いが勘違いを生むコーエン節がいつも以上に滑らかだが、観賞後“しこり”のような余韻を残すことも忘れてはいない。

ライン・オーバーした(クエート侵攻)とケチをつけてはぶちギレ、身代金(石油利権)を横取りしろと提案し、ユダヤ教徒の妻とは別れ(イスラエルとの仲違い)、一人コーヒーショップに居座り(イラク残留)、遺灰(砂漠の嵐作戦)をデュードにぶちまける相棒ウォード(ジョン・グッドマン)は、おそらく軍産複合体のメタファーだろう。

ブッシュパパ(本物)やサダム・フセインのそっくりさんまで登場させ反戦の色をつけた本作は、TWB主人公プレインビューのモデルにもなった石油王ドニヒー邸をロケ地に選んでいる。本作にナレーターとして登場するカウボーイハットのストレンジャー(サム・エリオット)こそそのドニヒー(の幽霊?)だったのか。

そんな狂暴を絵に描いたようなウォードを改心させ、強欲の塊だったはずのストレンジャーにもその行く末を心配させ、フェミニストの前衛画家モード(ジュリアン・ムーア)にまで子種をせがまれるデュードとは一体何物なのだろう?

そのデュードと非常に似通ったキャラIVの主人公ドクの目にはラスト悟りの光が差しこんでいたが、このデュードその髪形からして、劇中デュードとは別の変態男が身につけていたシャツに書かれていた“あの人“をモチーフにしているような気がするのだがどうだろう。

ビッグ・リボウスキ
監督 ジョエル&イーサン・コーエン(1998年)
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