国のプッシュ型支援にけちをつける朝日新聞
被災地に物資を緊急輸送して、カンフル剤の役目を果たす事であろうか?
被災地の問題は、供給能力の低下や情報の錯綜、当局者の疲労など多岐に渡る。
朝日新聞はミスマッチが起きると言うが、無駄となる点は承知で被災者救援を第一に考えた措置である。
その持つ意味は、徒労となる点を除いても価値は高い。
プッシュ型支援について
http://www.bousai.go.jp/jishin/kumamoto/kumamoto_shien.html
プッシュ型支援とは
発災当初は、被災地方自治体において正確な情報把握に時間を要すること、民間供給能力が低下すること等から、被災地方自治体のみでは、必要な物資量を迅速に調達することは困難と想定されます。
このため、国が被災府県からの具体的な要請を待たないで、避難所避難者への支援を中心に必要不可欠と見込まれる物資を調達し、被災地に物資を緊急輸送しており、これをプッシュ型支援と呼んでいます。
国のプッシュ型支援、被災直後は歓迎でも ミスマッチも
2018年7月12日05時01分
https://www.asahi.com/articles/ASL7C5357L7CPTIL027.html
西日本豪雨の被災地に向けた、政府の支援物資の輸送が本格化している。力を入れるのが、「プッシュ型支援」の手法だ。被災自治体からは素早い対応に歓迎の声が上がる一方、政府から送られた物資が使われない「ミスマッチ」も。2年前の熊本地震の教訓を踏まえ、支援のあり方が問われている。
列島各地の大雨被害の状況
安倍晋三首相は11日、岡山県の被災現場を視察。避難所となっている倉敷市立第二福田小の体育館では12台のクーラーが動いていた。自治体の要請を待たず国が送り先や物資を決めて送るプッシュ型支援で、前夜に設置された。首相は視察後、「一丸となってプッシュ型で生活に必要な物資の確保、生活再建に取り組んでいく」と話した。また政府は非常勤隊員の「即応予備自衛官」約300人の招集を決めた。被災者の生活支援にあたる。
政府がプッシュ型を採り入れるきっかけとなったのが、2011年の東日本大震災だ。当時、自治体の庁舎や職員の多くが被災。避難所で必要な物資や数量が把握できなかったり、被災者に物資が十分行き渡らなかったりした。こうした教訓から熊本地震で初めてプッシュ型を実施した。
今回、農林水産省は8日以降、倉敷市真備(まび)町にパン6千食、岡山県矢掛町に水や乾パン、ビスケットなど2千食、広島県にパン4万8千食、愛媛県にパックご飯などを送っている。経済産業省は、岡山、広島、愛媛の各県の避難所などにクーラー約280台を送った。
総務省は、災害対応の経験がある自治体の管理職を「災害マネジメント総括支援員」として登録する制度を今年度から始めており、今回初めて倉敷市など7市町に派遣した。簡易無線機なども計114台、6市町に貸し出した。
ただ、プッシュ型は被災直後の混乱期を乗り切るための措置。過剰に届いたりミスマッチが生じたりし、早い段階で被災地の求めに応じて物資を届ける「プル型支援」に切り替える必要がある。各省庁はすでに自治体のニーズの把握を始めており、プッシュ型は1週間程度で終える見込みだ。
大量の物資で保管スペースが埋まるケースも
11日昼、広島県呉市の海上自衛隊呉教育隊のグラウンドに、ヘリコプターが降り立った。自衛隊員が20台のスポットクーラーを降ろしてトラックに積み込み、市内の6カ所の避難所に向け出発した。呉市によると、10日に経済産業省から県を通じて「クーラーは必要ないか」と提案を受けたという。
呉市は連日、真夏日が続く。10人が避難する市立吉浦小学校の避難所には2台が到着。扇風機しかなかった避難者からは喜びの声が上がった。自宅1階に流木が刺さった坪根剛介さん(80)は「暑苦しくて寝苦しいけぇ、昨日から楽しみにしとった」と語った。
岡山県倉敷市真備町でも、国の支援でエアコンが次々に設置されている。11日までに5避難所で完了し、ほか4施設で設置が進む。市の防災担当者は「すごい勢いで進んだ。市単独では到底できない」。
一方、「ミスマッチ」も起きている。
約50人が避難する愛媛県大洲市の平公民館には10日、経産省から仮設トイレ3台とスポットクーラー5台が届けられた。公民館の加洲与理雄館長(69)は、クーラーは「助かる」と歓迎する一方で、「トイレは要望していないんだが……」と首をかしげる。
断水しているが、水をくんで流せば公民館のトイレは使用できる状態。仮設トイレを使えば、屎尿(しにょう)のくみ取りやトイレットペーパーの補充をどうするのか決めなければならない。仮設トイレに「使用禁止」の貼り紙をし、使わずに置いたままだ。加洲さんは「管理方法が決まらないとどうしていいか分からず、困る」と話す。
被災地には政府の物資と並行し、企業や個人などの支援物資も届く。混乱の中、対応に苦慮するところも出ている。
倉敷市は10日、そうした物資の受け入れ休止を発表。大量の物資で保管スペースが埋まり、仕分けと避難所への配送も滞ってしまったためだ。市の担当者は「分量も種類も把握し切れていないのが現状」。個人からは「古着や秋冬物が多かった。仕分けが大変で、かえって混乱する」と戸惑いを隠さない。
2年前の熊本地震の時も、全国の企業や個人から大量の物資が送られた。
熊本市が今年まとめた震災記録誌によると、地震後すぐに「国や全国から送られる支援物資と避難所のニーズとの間に乖離(かいり)が出始め」たという。さらにスペース不足や、次々と送られてくる物資を夜通しで荷下ろしする現場職員の疲弊などを理由に数日後、全国からの支援物資の受け入れ中止を決めた。
この時に届いた毛布約4万枚はいま、市内の体育館のフロアに積み上げて保管されているが、活用される予定はない。
山崎栄一・関西大教授(災害法制)の話
プッシュ型支援は、被災者がほしいものを把握する前に送るので、被災者のニーズと一致しないミスマッチが起きることもある。避難所や自主避難の人に届かないことも考えられる。一人一人の被災者に届くまで面倒をみないと、中途半端な押しつけになる。災害発生当初は食料や水など最低限の物資を届けられるので有効だが、時間がたつと被災者のニーズは変わる。どこで何が求められ、物資がどこまで届いているのか、国には常に全体を俯瞰(ふかん)的に把握しておく責任がある。
天野和彦・福島大特任教授(被災者支援)の話
災害直後は、何が足りていて、何が足りないのか自治体もわからず、自治体からの情報に頼る国もわからない。初動が遅れている状況で、まずは物資を送るプッシュ型支援は重要だ。
一方、東日本大震災で見られたような、被災地のニーズを聞いてから物資を送る「プル型支援」は物資が無駄にならないが、ニーズを把握するまでに時間がかかる。被災地の状況がわからない初期はプッシュ型で、実態が明らかになったらプル型に切り替える二段構えの支援が必要だ。