【海外事件簿】イタリア女子大生殺人 美人ルームメイトの犯行に欧米が騒然
21歳の英国人女子大生が半裸のまま、血の海と化した自宅で死んでいた。性的暴力を受け、刃物でのどをかっ切られていた。舞台はイタリアの古都・ペルージャ。後に3人の被疑者が逮捕される。コートジボワール人(20)とイタリア人(24)の男性、そして、英国人女性のルームメートだった米国人女性(21)=いずれも年齢は発生時。殺害当時、被疑者らは大麻を吸引しており、検察は動機を「乱交ゲームに加わるのを拒んだため」とする。
発生から2年近くがたつが真相は今も、薮の中だ。ドラッグ、セックス、殺人、そしてうら若き女性…。ハリウッド映画を地でゆくようなミステリアスな事件は欧米主要メディアの取材合戦に加え、格好のネタに食らいつくゴシップ紙記者や言いたい放題のブロガーを巻き込み、狂想曲が続いている。
事件はすでに裁判が始まっている。法廷で見せる清楚(せいそ)ないでたちとまだあどけなさが残る「天使のような容貌(ようぼう)」。外見からは、とてもドラッグやセックス、殺人という言葉は思い浮かばない。事件は、米国シアトルから留学してきたルームメートの名をとり「アマンダ・ノックス事件」、または語呂あわせで「Foxy(セクシーな) Knoxy」とも呼ばれている。
裁判は数百人規模の各国記者が追いかけている。世界中に、ノックス被告の無実を信じる支持者がいる。彼らは検察官を「無能」と非難し、検察が集めた証拠能力を厳しく問い、イタリアの司法当局に圧力をかける。米国では人権派弁護士が裁判をペルージャから移動させるべきだと説き、シアトルではノックス被告の裁判費用捻出(ねんしゆつ)のため、支援団体がディナーパーティーを開いているほどだ。
発生は2年前にさかのぼる。2007年の夏、ロンドン郊外に住む大学生、メレディス・ケルヒャーさんが、イタリアの歴史や文化を学ぼうと交換留学でペルージャにやってきた。綺麗(きれい)で思いやりにあふれる才女。両親の愛情を受けて育った地元の名門私立学校出の“お嬢さん”は多くの友人に恵まれた。
留学生活は、同時期に来たノックス被告とともに始まった。共同で部屋を借り、ケルヒャーさんは周囲に「ルームメートとの生活も順調」とも打ち明けていた。
11月、幸多き人生は暗転した。警察官が、自宅近くの庭で拾われた携帯電話を届けようとケルヒャーさんの部屋を訪れたとき、変わり果てた無残な姿を発見したのだ。司法解剖の結果、鋭利な刃物で頸動脈が切られ、性的暴力も受けていたことがわかった。
部屋にはカギが掛けられていたが、窓が壊れていた。現場近くには薬物取引で悪名高い駐車場があり、地元警察は当初、ヘロイン中毒者がケルヒャーさんを襲い、窓から逃げていったとふんだ。
しかし、4日後、地元警察はノックス被告と、イタリア人の交際相手で医者の息子、ラファエル・ソレシト被告の2人を逮捕する。
現場に動かぬ証拠があった。検察側はノックス被告の血痕がバスルームにあったことや、ケルヒャーさんの下着の一部に、ソレシト被告のDNAが残されていたと指摘。さらに、ノックス被告とケルヒャーさんのDNAがついたナイフがソレシト被告の自宅から発見されたとし、検察側は「刺したのはノックス被告」とも主張した。
2人は事件当時、大麻を吸っていたことは認めた。しかし、犯行は否認。供述内容はその都度、変わった。現場の状況から2人以外の被疑者がいることはわかっており、ノックス被告が名指しで「殺人者」とした供述により、一時、無実の男性が拘束されてしまった。
ノックス被告は「供述を警察に強要された」と訴え、弁護側は大麻吸引で「当時のことは記憶がぼやけている」という弁護方針を立てた。
逮捕されたコートジボワール人はノックス被告の顔見知りだった。現場に血痕の付いた指紋が残されたことが決定打となり、第一審では、懲役30年の有罪判決を受けた。コートジボワール人は「2人にはめられた」と反論し、すぐに控訴した。
報道合戦で、ノックス被告のプライベートは洗いざらいにされた。友人らにより、自由奔放な恋愛経験やドラッグの吸引疑惑も明らかになった。高額な弁護費用を捻出するためにむしろ、家族が率先して子供の頃からの写真を公開。支持者は増えたが、ノックス被告への誹(ひ)謗(ぼう)中傷もさらに広がった。
非難の矛先は、立件したペルージャの検察官にも向けられている。「公平な捜査が行われていない」としてその資質が問われ、米国のノックス支援団体とイタリア検察との対立も生み出している。
外部での喧噪をよそに、今年6月、ノックス被告は法廷に立った。流暢(りゆうちよう)なイタリア語で犯行当日の自らの行動を答え、検察側が仕立てた犯行の筋道を否定。「メレディスは親友だった。彼女の身に降りかかったことに動揺している」と証言した。
9月中旬に行われた公判では、検察側が証拠として提出したナイフは、ケルヒャーさんの傷口と合わず、凶器ではない可能性も審議された。現場に残されていたソレシト被告のものとされる血の付いた足紋もサイズが合わないことが判明し、審議は今後、迷走しそうな気配だ。(佐々木正明)
Source来源:http://sankei.jp.msn.com/world/europe/091003/erp0910030701007-n1.htm, http://sankei.jp.msn.com/world/europe/091003/erp0910030701007-n2.htm, http://sankei.jp.msn.com/world/europe/091003/erp0910030701007-n3.htm,。
ほか:http://sankei.jp.msn.com/recommend/12095/rcm12095-t.htm
写真のsource:http://sankei.jp.msn.com/photos/world/europe/091003/erp0910030701007-p9.htm,http://sankei.jp.msn.com/photos/world/europe/091003/erp0910030701007-p6.htmp6.htm、http://sankei.jp.msn.com/photos/world/europe/091003/erp0910030701007-p10.htm。