意思による楽観のための読書日記

坂の上の坂 藤原和博 ****

サラリーマン人生を否定して、新しい価値観を見出したというお話である。藤原和博の講演を聞いた人は直ぐに理解できるが、聞いたことのない人はピンと来ないかもしれない。明治維新で上り坂の道を見いだした日本人は、常に国家は成長するものだという価値観を国民に植えつけた。それが違うかもしれないと筆者が気がついたのは、1998年以降であり、今でも気がついていない人は多い。もう激しい成長はしない成熟社会になった今、どのような価値観をもって人生を考えるべきなのかという書である。

気づきはたくさんある。社会にでて、自分で選んできた、と思っていた人生は実は世の中で敷かれたレールを走ってきたのだと気がつくのは30を過ぎてから、しかしそれでも遅くはないと。「早く、きちんと、良い子にしなさい」この誰でもが親から言われてきたことに従うと、いいサラリーマンにはなれるかもしれないが、低成長時代、成熟社会では幸せになれないかもしれないよというアドバイスが満載である。

会社にいながらもちょっと道を踏み外すことは可能だというのが筆者の主張。個人が身につけることができる資格を取得して、個人の都合と会社の論理を交渉ごとのテーブルに載せてみたらどうかと提案している。年俸制やフェロー制度と出世のトレードオフである。アメリカ人やフランス人に自分の今までのキャリアを説明するときに、会社での肩書きは意味が無い。何ができる人間なのかをアピールできるのかがポイントであるという。

会社以外でのコミュニティでの活動は何があるのか、PTA、町内会、管理組合、地域ボランティア、震災復興支援、などなんでもいいから、会社以外での自分の存在をアピールできるのか。

そしてパートナー、つまり奥さんと二人で定年後を生きていけるのかを再確認しなさいという。

55歳でこのことに気がつけば手遅れではない、しかし60歳以降で気がつく場合には手遅れであるケースが多いのではないか。会社以外での自分の価値をパートナーと共有できるのか、家族が認めてくれるのか、これが重要である。さあて、どうだろうか。



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