意思による楽観のための読書日記

ニューヨーク地下共和国(上) 梁石日 ****

アメリカでの9.11テロを物語の中心に据え、黒人差別、企業における不正経理と株価操作、9.11の情報を事前に知りながらの株式会社による不正な利益、米国戦士の戦争後のトラウマやアブグレイブ刑務所でのリンチ、9.11以降のアラブ人へのいわれなき疑惑と差別などを取り上げた壮大な物語である。

アメリカでの黒人差別の現場から物語は始まる。NYの黒人街でドラッグ販売に手を染めて、組織に追われることなってしまうネイサン、ジョージ、サムの兄弟、そしてエンロン、ワールドコム事件とおぼしきヒクソン社やインターオーバーシーズ社の事件の調査をすることを会社に命じられるドイツ人証券会社社員でNYに単身赴任しているカウフマン、カウフマンの従兄で建築家のゼム、黒人写真家のジャック、ロシア人で元ソ連の蔵相だったウラジミール、その妻ソーニャなどが登場する。

カウフマンはヒクソン社の経営者が不正に個人的利益を上げているのではないかと調査をしている。SECなどに調査結果を告げても証拠不十分であると相手にされない。スザンナという女性がカウフマンにもっと調査を進めて内部告発すべきと言うが、スザンナは不審な事故死を遂げる。こうした中で9.11のテロ事件が起きる。ナイサンとサムはマフィアから逃れてアフガンへの兵役を志願、ネイサンは戦死してしまう。アメリカをあげてのアフガン攻撃が起こる中、カウフマンの告発は握りつぶされる。9.11の直前に世界中の企業からテロで株価が下がるとみられる企業の株への空売り「プットオプション」が通常では考えられないくらいの量でている事実を突き止める。国やSECはこれを黙認しているというのかと、カウフマンは正義感から憤りを覚える。しかしその告発は最後まで取り上げられず、結局会社の本社から派遣された殺し屋に殺されてしまう。

ゼムは怒りに燃えるが、個人ができることは限界がある。アフガン問題がアメリカ国内で批判されても、愛国者法を成立させるフォスター政権はこうした反対勢力を国家権力で押しつぶそうとする。それでもゼムはデモや芝居を通してアメリカの行為は殺人であり侵略であることを市民に訴えようとする。

戦争から帰ってきたジョージは人が変わったようになり、アメリカという国への復讐に魂を燃やしている。ジャックは心配になるがジョージを説得できない。ここまでが上巻。
ニューヨーク地下共和国(上)
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