意思による楽観のための読書日記

経済危機「100年に一度」の大嘘 波頭 亮 ****

「強欲」がある限りバブルは形成され、バブルはいつかは破裂する、これを何度も繰り返しているのが資本主義、と主張するのが米国で投資銀行「ロバーツ・ミタニLLC」を経営する神谷(みたに)さんです。(「強欲資本主義の自爆」)100年に一度と最初に表現したのはグリーンスパン元FRB議長ですが、神谷さんによれば「自分の失政を見えにくくするレトリック」、今の危機はクリントン政権時代の金融自由化とアメリカ企業の短期利益志向が産んだ80年前(1929年大恐慌)の亡霊だとのこと。米国発の経済危機だと多寡をくくっていたら、アメリカ経済頼みで脆弱だった日本経済が世界で一番の経済危機を迎えているというのが現状です。

一部の経営者達が自らの強欲を満たすために仕掛けた仕組みが、バブルを繰り返すたびに大がかりになってきて、今は世界経済を巻き込むスケールになってきているだけ、と分析するのは、楽天証券経済研究所の山崎元さん。バブル進行のパターンを次の7つの段階に分類します。(経済危機「100年に一度」の大嘘)
1. 新しい金融技術/規制緩和 → 2. 商機の発生/拡大 → 3. リスクテイク姿勢の前傾化 → 4. 維持できない資産価格高騰 → 5. 資産価格下落の小さな契機 → 6. 流動性の枯渇と信用収縮 → 7. 金融緩和による資産価格回復

1987年のブラックマンデーはポートフォリオ・インシュランスのプログラム売りが連続的に発動され株が下げ止まらなくなりました。1980年代の日本の不動産バブルは特定金銭信託とファンドトラストという仕組みが金融技術として登場したことがきっかけでした。今回の引き金は1995年のグラス・スティーガル法の形骸化を背景に、サブプライムローンの証券化がきっかけとなりましたが、いずれも強欲な人たちが「うまく1年稼げば自分は逃げ切れる」という姿勢で限られた信用枠を如何に広げるか、そして自分はババを引かないようにする行動の連鎖でおきたこととしています。100年に一度どころかブラックマンデー以降でさえ日本のバブル、LTCMショック、アメリカネット株バブル、日本のREITバブルなど何度もおきていて、今回のバブルの証券化は巧みだったために世界を巻き込んでいる、というのが山崎さんによる解説です。さらに強欲資本主義は年収300万未満という非正社員階級と年収1億円を超える株式階級を中産階級の上下に作り出してしまったと指摘、従来の中産階級である年収300万―1500万円程度の給料階級と1500万―1億円程度の経営者、弁護士、医者などの特殊技能者によるボーナス階級と合計4つの年収階級を形成してしまったと解説しています。(経済危機「100年に一度」の大嘘より)
4つの階級とは、年収、職業とを一つの目安にして日本人を無理矢理4分類してみようというもの。

株式階級 1億円以上 株式公開・値上がりなどが収入源。投資家、創業者など
ボーナス階級 1500万-1億円 余人を持って代え難いポジションやスキルを持つ。医者、弁護士、経営者など
給料階級 300万-1500万円 雇用が安定しているサラリーマンなど
非正社員階級 300万円未満 雇用自体が不安定で取り替え可能の労働力

アメリカのようなこうした格差の大きい階級社会は幸せな社会なのでしょうか。この本では今起こっていること、これから起ころうとしていることを10人のそれぞれ異なる視点から分析、徹底的に洗ってみようというもの。おもしろいムック本。
経済危機「100年に一度」の大嘘 CONUNDRUM 2009 Summer (講談社BIZ)


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