意思による楽観のための読書日記

同和と暴力団 一ノ宮美成 ***

暴力団の代表格、山口組が日本最大の指定暴力団になりえたのは、主として同和対策事業として15兆円がつぎ込まれたことと深く関係しているという。1969年に施行された同和対策事業特別措置法は2002年3月末までの33年間継続、その資金は地区に暮らし「民」と差別されてきた人たちの生活と雇用改善に寄与した。その予算を配布する際に窓口になったのが社会党系の解放同盟と共産党系の全解連。そして施策は助成金や生活の補助金支給から雇用紹介、施設建設など多岐にわたったが、それぞれに配布の窓口組織が組成され、その中に暴力団関係者の息がかかったメンバーが入り込んでいたというのである。もちろん、=暴力団ではないし、解放同盟のすべての活動が暴力団の窓口になっていたわけではない。しかし、例えば解放同盟が設立した建設協会は同和対策事業特別措置法の事業費の受け皿となり、その組織員には少なからぬ数の現役暴力団構成員がいたという。

同和問題は根が深く、特に関西や九州では今でも根強い差別感覚が残っている。しかし同和対策事業特別措置法が施行された1960年台に比べれば、地区住民の経済的状況は大幅に改善され、雇用促進も進められた結果、同和対策事業特別措置法は有効に成果を出せた。逆に、それらの優遇策は一般市民から見れば逆差別とも見えるほどの優遇であり、様々な議論の結果法律は打ち切られたという。現在は大阪市長となっている橋下徹、出身者であることは知られている。橋下徹市長は数多くの改革を進めたとされているが、今でも地区への優遇策を継続させている。さらに、大阪の同和事業ではある意味で有名人だった旧飛鳥会を取り仕切り大阪の同和事業の顔役だった故小西邦彦を褒め上げるなど、今でも暴力団の資金源となっている同和事業に目をつぶっているというのである。

民主党政権で復興担当大臣に就任した途端、宮城県知事に暴言を吐き退任を余儀なくされた松本龍元衆議院議員は、福岡県の解放同盟のリーダーである。祖父の松本治一郎は設立の立役者であり、同和問題解決に貢献してきたと言われている。松本龍元議員の祖父治一郎はその地位を利用して現在の福岡空港の土地買収に先立って近隣土地を買いあさり、その土地から得られる土地使用料は今でも松本龍元議員の主要な収入源となっているという。福岡で松本龍元議員は「貴族」と言われている。

「と銀行」で書かれていた山口組の資金源としての解放同盟飛鳥支部長小西邦彦と旧三和銀行の関係は本書にも暴かれている。同和問題は山口組の貯金箱だったというのである。そしてこの同和問題で成り上がったのが許永中、そして食肉の帝王と言われた浅田満であったという。さらに高島屋が30年にわたって8億円もの「手数料」を暴力団組長に払い続けていたと。

京都、大阪、博多と昔から地区が多いと言われてきた地区には、このような裏の金の流れがあったというドキュメンタリーである。強烈なドキュメンタリーでありすべて実名入り、筆者は本名なのだろうか、心配になる一方で、ここまで激しいとここに書かれていることは本当なのだろうかと疑う気持ちも出てくる。多分、多くの関連書物が出ていると思うので、しばらくはこの辺りを読み歩いてみようと思う。


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